┃基調講演
10:10 〜11:00 
1F・ホール
学生の主体的学びをどう促すか
 講演者 
川島 啓二
(国立教育政策研究所総括研究官)
 略 歴 

国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官。 専門は高等教育論・教育行政学。 1954年生まれ、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学。
芦屋大学助教授、国立教育研究所教育経営研究部高等教育研究室長を経て現職。
日本高等教育開発協会会長、初年次教育学会理事。大学教育学会常任理事。
著書に『大学における「学びの転換」と言語・思考・表現』(共著、東北大学出版会、2009年)、『新時代を切り拓く大学評価-日本とイギリス-』(共著、東信堂、2005年)など。

 概 要 
昨年8月28日に出された中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」においては、「主体的な学修を促す学士課程教育への質的転換」の必要性が言及された。特に「主体的な学び」の「始点」としての「学修時間」が取り上げられ、日本の学生の学修時間の少なさがクローズアップされている。  
ただ、大学教育の目的が、学生の主体性や様々な能力の育成にあると位置づけられてきたのは、今回の「質的転換答申」が初めてではない。例えば、1998年の「21世紀の大学像と今後の改革方策について」においては、「課題探求能力」即ち「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」が謳われたし、2005年の「我が国の高等教育の将来像」においては、 「21世紀型市民」すなわち「専攻分野についての専門性を有するだけではなく、幅広い教養を身に付け、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材」の育成が謳われた。さらに、2008年の『学士課程教育の構築に向けて』においては、「学士課程共通の「学習成果」に関する参考指針」としての「学士力」が、①知識・理解、②汎用的技能、③態度・志向性、④統合的な学習経験と創造的思考力の4領域に整理・提示されたことは記憶に新しい。  
それらを受けて、今次の「質的転換答申」では、平成20年12月の「学士課程答申」などにおいて詳細に示されている学士課程教育の質的転換のための方策を、「各大学が大学支援組織や文部科学省、地域社会、企業等と連携しながら、改革サイクルの中で、着実に実行するための具体的な手立てを明確にしたものである」と述べ、具体的な実践的導入を促しており、様々なレベルでの改革と質的転換の「実行」が、各大学に「待ったなし」で求められていると言って良い。今後はその実行の効果についても、検証と評価が求められることになるのだろう。  
主体的な学びを促すために、答申の軸となる考え方は、まず「成熟社会において学生に求められる能力をどのようなプログラムで育成するか=学位授与の方針に従ったプログラム全体の中で個々の授業科目は能力育成のどの部分を担うかを担当教員が認識し、他の授業科目と連携し関連し合いながら組織的に教育を展開することが重要である」とされている。つまり、「はじめに個々の授業科目があるのではなく、まず学位授与の方針の下に学生の能力を育成するプログラムがあり、それぞれの授業科目がそれを支えるという構造にならなければ、個々の教員が授業の改善を図っても、学生全体が明確な目標の下で学修時間をかけて主体的に学ぶことは望めないのである」とされるのである。ここで、学生「全体」の主体的な学びが語られているように、学士課程教育の構造的な問題として、「主体的な学び」が焦点化されていることに留意する必要があろう。
もちろん、学士課程教育のプログラムといった基幹的構造だけではなく、学生の主体的学びのためには、様々な工夫と努力が必要であるし、また、そのような実践的取り組みも積み重ねられてきた。それでは、「主体的に学ぶ」学習行動とはどのようなものなのか、授業ベースで整理してみると、①丁寧なケアによって、何とか勉強する、②指示されたことはこなす(それ以上はやらない)、③授業の予習・復習だけは指示されなくてもする、④予習・復習以上の学習にも取り組む、⑤(授業に触発されて)授業以外の学びの機会に参加する、⑥(授業とは関係なく)自分の進路・将来・関心に即した学びの機会に参加する といったシーンが考えられ、それぞれのシーンに対する具体的な方策としては、①学習支援、初年次教育、ピア・サポート、②シラバス、予習・復習の指示、アドバイジング、③予習・復習を前提とした授業、成績評価、GPA、学生参加型授業、④授業での問題提起、(浮きこぼれ対策型)ピア・サポート、⑤触発する授業、体験学習、サービスラーニング、産学連携教育、⑥多様な学習機会の提供(留学、ボランティア、資格講座)といった実践の形態が試みられていると(大まかに)整理されよう。  
つまり、学士課程教育を貫くマクロなコンゼプトとその構造といった問題と、リアルなシーンを支える方法的な工夫やティップスの組み合わせといった、いささかお決まりの構図に行き着いてしまうのだが、その構図に大学教職員がそれこそ「主体的に」関わっていく、そのことこそが問われているのかもしれない。
┃オーラルセッション
11:10 〜 12:30 
❶大学職員の学びと実践
2F・A会場
 座 長 
加藤 史征
(名古屋大学総務課)
 概 要 
大学は一つの学び舎である。この学び舎において、育成しようとする学生像を実現化していくためには、大学で働く職員自身がその将来像を体現していることが近道になるだろう。学生の本分は学びにある。であるならば、大学職員も同時に、学ぼうとする大学職員であることを求められるのではないか。
では、大学職員の学びとは何か。大学職員の業務の高度化・複雑化と重要性の高まりは、すでに様々な場面で論じられている。これらに対応するため、人材開発に関するプログラムが大学内外で数多く展開されているが、大学職員はそこで何を学び、成果をどのように活かしているのだろうか。
報告者の3名は、これまでに様々な形で学び、またこれから学ぼうとしている大学職員である。学びに至る動機、学ぶ中での葛藤、学びの先にある成長など、それぞれ事例とともにお話しいただき、学びを職場での実践にどうつなげていくのか、フロアとも意見交換を行いたい。
報告1
変わる学びの形  ─個人における意味と組織における意味を考える─
中元 崇(京都大学総務部付)
本報告は、座長からの問いかけを受け止め、既存の研究(大学職員論等)との関係を整理するとともに、本セッションの他の報告者の話題とつなげていくことを目的としている。
まず、大学の置かれた状況を1980年代以前と1990年代以後に大きく分け、その前後で「大学と大学職員の状況、そして『大学職員の学び(職能開発)の形』がどのように変化してきたのか」に触れる。次に、大学職員の学びのあり方(方法、涵養する能力の種別・水準、提供者など)を整理する。
最後に、学びに対して「個人が期待すること・個人が果たす役割」と「組織が期待すること・組織が果たす役割」を提示する。この二つの内容・相互関係については概要的な説明にとどめ、具体の事例における解釈は、満田報告・檜森報告で展開する。
報告2
学問のムスメ  ─共に学び続ける大学職員を目指して─
満田 清恵(愛知教育大学教育創造開発機構運営課)
近年、様々な職業・職種を対象に「社会人大学院」における学びが展開されてきており、大学職員も例外ではなくなってきている。しかし、実際に自分の周りを見渡したとき、まだまだその数は多いとはいえない。そうした中で、大学院で学ぶことは個人にとってどのような意味を持つのであろうか。
本報告は、報告者自身のキャリアを一つの例に、個人がどのような葛藤を経て大学院への進学を希望し、そこでの学びに何を期待しているのかといった学びを求める背景について私見を述べるものである。そのうえで、フロアとの意見交換により、大学職員が学ぶことの意義を一部でも明らかにしたいと考えている。
報告3
職員の成長が大学の成長へ  ─実践からみる職員の学びの必要性─
檜森 茂樹(名城大学総務部)
言うまでもなく、大学を取り巻く環境はより一層厳しいものになっている。この競争市場の中で、各大学は維持・発展のため、戦略を打ち出し、その戦略実現に向け、教職員は自らの役割を認識し、日々の業務を推進している。この背景を踏まえ、教員の役割を教育・研究とするならば、職員の役割・使命は何か。この職員の力こそが、大学の競争優位性の一つとなり、職員の成長が大学の成長につながると考えている。
本報告では、自身の『学びと実践での成果』を共有するとともに、あらためて抽象論ではない、当事者からの大学職員の使命・役割を考え、その中で職員の学びとは何か、参加者の皆さんと共に考える『価値ある機会』としたい。
❷融合的・総合的な理系教養教育の可能性
2F・B会場
 座 長 
安田 淳一郎
(岐阜大学教養教育推進センター)
 概 要 
予測困難な時代における我が国の苦境を受けて、中教審答申等において教養教育の重要性が強調されてきている。皮相もしくは偏狭な知識を学生に教えるだけの教養授業からの転換が求められているのである。現代の教養教育に求められていることの例としては、専門外の知識や考え方を専門分野に融合させる態度の涵養や、問題解決力など総合的に物事を考えられるスキルの養成が挙げられる。
本セッションでは、各大学各分野における理系教養教育の事例報告に基づいて、教育目標の立て方や教育方法など授業の工夫を共有することを目的とする。さらに、各事例の共通項を見出して、融合的・総合的な理系教養教育の在り方について考えるための糸口を探る。理系教養教育の対象には多様な専門分野の学生も含まれるため、多様な専門分野の教員方からもご意見を頂きたい。
報告1
理系のための教養教育?
高橋 真聡(愛知教育大学理科教育講座)
教養教育改革の背景には、近年の情報氾濫や多様な価値観などに対する高度な判断力の養成があるのだろう。便利すぎる生活は“自然”を遠ざけてしまい、人類の立ち位置が不透明になっている感もある。このような社会や生活の変化に伴い大学教育も進化すべきだが、時代の変化に取り残されてきた感がある。愛知教育大学では、平成24年度秋以降「新教養科目」を開設し、今の時代に求められている基礎的能力獲得のための教育強化を目指す。その柱には「市民」「多文化」「科学」「ものづくり」の4つのリテラシーがあるが、このうち特に「科学リテラシー」が目指す教養教育について紹介する。
報告2
獣医学教育や共通教育を事例とした教養教育の在り方に関する考察
福士 秀人(岐阜大学応用生物科学部、教養教育推進センター長)
総合的な知識と見方・考え方の育成が大学教育においてなすべき教育であると考えている。事例として獣医学教育および共通教育を紹介したい。獣医師は「動物のお医者さん」とみられがちだが、実際には環境保全、安全・安心な食の確保、感染症対策、伴侶動物医療、さらに生命科学の一分野としての役割も担っている。ともすれば専門的な知識偏重教育になりがちな獣医学教育において、私の授業では、専門にとどまらない知識の立体化や多面的な見方の育成を目指している。一方では、全学共通教育を担当し、多様な背景をもった学生たちに授業を行っている。これらの事例を紹介し、専門性に埋没しない、総合的な教養教育について意見交換をしたい。
報告3
3・11を経ての教養教育
黒田 光太郎(名城大学大学院大学・学校づくり研究科)
2011年3月11日の東日本大震災、福島原発震災を経験して、日本および日本人のあり方、見方を大きく変えないと、もうやっていけない状況にわれわれは直面しています。しかし、これからのエネルギー政策をどうするのかに関してもまだ方針が定まっていないのが現状です。一方ドイツでは、3・11を受けて、政府は脱原発への政策を短時間で決定しています。この違いは、国民の原子力に関するリテラシーの状況に大きく依存しているのではないでしょうか。初等、中等教育における原子力教育を大きく見直さなければならないとともに、大学においては教養教育の中で原子力に関してのELSI(倫理的、法的、社会的影響)をすべての学生が学んでいくことが求められています。
❸協同学習の場としての大学図書館
中央図書館 2F・ラーニングコモンズ
 座 長 
岡部 幸祐
(名古屋大学附属図書館情報サービス課)
 概 要 
長い間、多くの大学生にとって大学図書館は書庫にすぎなかった。ようやく近年になってラーニングコモンズ等が整備されるに伴い、大学図書館は学習空間としての可能性を飛躍的に高めつつある。このことは大学図書館が「本を借りる」「読む」という個人完結型の学習空間から、「仲間と一緒に調べる」「思案をめぐらす」「相談する」「協同作業を行う」という総合的な知的生産活動の拠点へと変貌しつつあることを意味している。
学習の質を高めるためには、施設面の拡充だけでは不十分である。図書館が積極的に学生の学習意欲を喚起し、持続的に学習支援を行うソフト面の創意工夫も同時に必要となる。このセッションでは、図書館が学生を知的探検へと誘うための知恵について考えたい。名古屋学院大学と静岡大学の事例を通して、大学生が図書館の活動に参加することによって、彼ら自身が何を学んだのか、同時に図書館がどのように活性化したのかという観点から議論を深めたい。
報告1
読書ブログ『栞輪』でつなぐ学びの空間 :学生サポーターとともに3年
中田 晴美(名古屋学院大学学術情報センター )
2007年、名古屋キャンパス開設と同時にラーニングコモンズを設置した。当初は入館者増に満足していたが、開設から3年経ち、学生視点の運営が必要なことに気づく。偶然、「本について話し合える場ってないよね。」と、学生に声をかけられ、それがきっかけで学生サポーターによる読書会が始まり、企画展示、イベント企画へと展開、さらにその活動を広く伝えるための読書ブログ『栞輪』を開設。この3年間の学生サポーターの活動を報告し、主体的な学びを支援する図書館で学生サポーターがどのような役割を果たせるのかを、参加者の方と一緒に考えたい。
報告2
静岡大学附属図書館における学生協働の取組み
次良丸 章(静岡大学附属図書館図書館情報課)
本報告では静岡大学附属図書館で取り組んでいる学生協働の試みを報告する。学生ボランティアによる新入生向け図書館ツアー、大学イベントでのワークショップ開催、大学院生による半年にわたる図書館カフェの運営、図書館ギャラリー企画展での学習成果発表、学生の視点を活かした電子リソース活用キャンペーンなどである。当館はLearning Parkのコンセプトを掲げ、人が出会い、集い、学ぶ空間としての図書館をめざしているが、学生たちとの様々な活動を通じて見えてきた、アクティブな学びの場としての図書館の可能性を考えたい。
┃オーラルセッション
14:00 〜15:20 
❹教務の実践的知識の共有
2F・A会場
 座 長 
上西 浩司
(奈良教育大学入試課)
 概 要 
大学職員の業務の高度化、専門性の向上は大学教育改革のための重要な要件である。このため、大学内外のさまざまなレベルで大学職員の能力開発に関する議論、実践、研究が活発化している。しかし、教務系職員の業務に必要な体系的な知識を見据えた上での具体的実際的な展開は、いまだ進んでいないのではないだろうか。
本セッションは、報告者が実践的な見地から独自の経験に基づいて教務に関する取組を語ることにより、会場の参加者が報告者の経験を共有し、教務の実践的知識を深めることをねらいとした。教務に関する体系的な知識の深化に寄与できればという願いからである。また、教務の実践的知識の体系化を目的とした、教務に関与する教職員による研究や実践、それらの蓄積及びネットワーク構築並びに次世代の育成等を支援するための「大学教務実践学会」(仮称)の設立についての企図の場ともしたい。
報告1
教務事項の業務ノウハウ共有と継承のニーズ-中小規模大学の実務担当の立場から-
辰巳 早苗(大阪樟蔭女子大学修学支援課)
基本的なルールに則った教務事務の運営ノウハウは比較的継承しやすいが、イレギュラーな事態が起こった際にどう対応するかは、教務事務の裁量性の高さから、それぞれの担当者に委ねられる場合が多い。各担当者は齟齬がなく妥当性のある対応を、根拠とともに検討することになるが、頻繁に発生する訳ではないことから、適切な対応を選択するためのノウハウを維持・継承していくことは、そうたやすいことではない。
そこで、本セッションでは、中小規模大学における実務担当の立場から具体的な事例を挙げ、教務事務の業務ノウハウの共有・継承をどう行っていくか、現状と問題点を確認し、今後の課題を検討していきたい。
報告2
教員免許事務における体系的知識の獲得と実践的知識への活用
小野 勝士(龍谷大学文学部教務課)
教員免許事務の特徴は、教務事務の中で最も法令に関する知識を必要とする教務事務であるということである。にもかかわらず、関係法令に関する公的な概説書がないのが現状である。そこで、複雑化する教員免許法及び同法施行規則に対応するため、教職課程を有する私立の大学・短期大学で組織されている全国教職課程研究連絡協議会の専門委員会である教員免許事務検討委員会において、概説書「教職課程担当者の手引き」の作成を行っている。
本セッションでは、法令解釈編等4冊の執筆に携わった経験をもとに、体系的知識の実務場面での活用に関する取組事例を紹介し、セッションにおけるフロアとの意見交換を行いたい。
報告3
教務系職員の職能開発促進のための新たな提案 -『大学の教務Q&A』発刊の反響から-
村瀬 隆彦(佐賀大学学務部)
名古屋SD研究会は、大学における教務系職員のSDに資する書物として、平成24年3月に『大学の教務Q&A』を玉川大学出版部から発刊した。その反響は、当初の予想をはるかに上回るものであった。好評価のもの、批判的なもの、その他種々の意見や批評をいただき、総じて大学職員のニーズに応え、時宜に適ったものであったと考えられる。このことからは、SDそのものに対する関心の高さやSD教材への大学関係者の期待の大きさを窺い知ることができる。では、次の段階ではどのようなことを行うべきだろうか。
本セッションでは、『大学の教務Q&A』作成の経験から見えてきた教務系職員の職能開発促進に関する展開について報告したい。
❺大学経営と評価
2F・B会場
 座 長 
室 敬之
(星城大学事務局長)
 概 要 
すべての日本の大学は、7年以内のサイクルで認証評価を受けることが義務づけられている。しかし、大学教育の質に対する課題はいまなお山積しており、認証評価の仕組みが十分に効果をあげているとは言いがたい。そこで文部科学省では各大学に一層の情報開示を求めるために、平成26年度から「大学ポートレート」(仮称)の運用を開始し、これを国内大学の共通データベースとして活用する方針を示している。つまり、経営上の透明性を高めつつ、同時に教育の質を担保するという難題が各大学にいっそう問われている。このセッションでは、短期大学経営、大学事務システム、大学基準協会による適格認定制度に焦点を当て、日本の大学が抱える経営と評価の問題について議論したい。
報告1
地域専門職戦略に向かう短期大学経営
花原 大輔(名城大学大学院大学・学校づくり研究科修士課程)
学士課程の前期課程として位置付けられた短期大学制度が「四大中心主義」の制度構造の中で安住できた時代は終わった。学校基本調査によると、そのことを裏付けるものとして、短期大学の学校数は1996年の598校をピークにそれ以降は減少を続け、2012年現在では372校にまで減少した。学生数からみると、約33万人の激減である。
本発表では、こうした動向にも触れながら、短期大学のアイデンティティを確立し、地域のなかで持続的に発展していく戦略経営の観点から、「地域専門職人材の育成と質保証」をコアにした短期大学づくりに着目し、モデルとなる事例を見つけ、それが短期大学経営の普遍的なモデルとなりうるかを考察したい。
報告2
新しい大学事務システムKUALIがもたらす未来
角谷 充彦(名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士前期課程)
現在、日本の多くの大学では事務効率化を目指し事務システムのIT化を進めています。このIT化のため大学は多大な支出を余儀なくされています。近年アメリカではこの傾向に歯止めをかけるべく大学事務システムにて使用するソフトウェアの無償化が進んでいます。無償のソフトウェアはKUALIと呼ばれ、現在全米約80校にてKUALIの導入稼動が始まり大きな費用対効果をあげています。このKUALIのご紹介とともに年一度行われる大学職員約1,000名が集うKUALIカンファレンス参加報告を行います。そしてKUALIが大学にもたらす未来について考えたいと思います。
報告3
戦後日本における大学の適格判定制度―大学基準協会と他機関の関係を中心に―
藤原 将人(学校法人立命館総務部)
本報告では、日本の大学にふさわしい大学評価の展開を検討するために、戦後日本における大学の適格判定制度(アクレディテーション)形成の背景を、その推進主体となった大学基準協会と関係機関との関係や、それらの議論状況に注目して分析する。そして、当時の大学関係者や政府を含む関係機関に、どのような影響があったかを考察し、第三者組織による大学評価の位置づけや効用、課題を明らかにすることを試みる。
とくに、大学基準協会および関係機関資料の分析を通じて、大学基準協会やその適格判定制度が創設時においてどのように受けとめられていたかを明確にし、第三者組織による大学評価を有効に機能させる具体的条件を考察する。
❻教養・基礎教育の設計
2F・C会場
 座 長 
栗原 裕
(愛知大学経済学部)
 概 要 
高等教育の大衆化に伴い、大学における教養教育や基礎教育のあり方が問われている。高等学校での履修内容を必ずしも十分に理解していない大学新入生に対して、大学での学習に不可欠な基礎知識をどのように理解させればよいだろうか。また、グローバル社会あるいは高度知識社会における「 良き市民」となるために必要な教養とはどのようなものだろうか。それはどのようにすれば身につけることができるだろうか。このセッションでは、高大接続の観点から、および学士課程教育の質保証という観点から、教養教育や基礎教育が抱える課題について活発な議論を行いたい。
報告1
大学カリキュラム体系化の現状と課題―日本語リテラシー教育を事例として―
伊藤 奈賀子(鹿児島大学教育センター)
大学教育に期待されるものが多様化する中、授業科目の新設によってそれに応えようとする動きがある。例えば日本語リテラシーが重要であるという観点から日本語リテラシー教育を実践する大学は増えているが、その多くは「日本語リテラシー」を冠した新規科目の設置として行われている。
しかし、特定科目によって能力を育成しようとするこの方法は、カリキュラムの体系化に対する重要性が叫ばれる昨今の趨勢と相容れない。また、多くの実践が初年次教育として大学での学びを円滑にすることのみに焦点が当てられていることも問題である。
本報告では、体系的なカリキュラムの構築について、日本語リテラシー教育を事例としながら検証を試みたい。
報告2
LMSとタブレットPCを組み合わせた教養系科目の教授法の開発
内田 啓太郎(関西学院大学高等教育推進センター)
池田 瑞穂(関西学院大学共通教育センター)
谷村 要(大手前大学メディア・芸術学部)
関西学院大学にて開講している教養系科目(スタディスキル科目および情報科学科目)では、現状としてLMS(Learning Management System)が十分に活用されている。発表者のグループは現在LMSとiPadを組み合わせた新しい教授法を開発している。今回の発表を、授業中のグループワークにおいてiPadを活用した実践報告と位置づけ、あわせてiPadとLMSの連携も含めた具体的な教授法について発表したい。
報告3
クリティカルシンキングをどのように測定するか―標準テストの分類に基づく検討―
久保田 祐歌(愛知教育大学教育創造開発機構大学教育研究センター)
汎用的技能としてのクリティカルシンキング(批判的思考)は、学士課程教育の学習成果の一つであり、育成と共に評価方法が重要な課題となっている。海外ではその測定方法として、授業の内容や文脈を離れて汎用的技能を測定する各種標準テストが高等教育の質保証という観点から実施されている。近年、国内大学においても汎用的技能に関する教育目標の設定や外部標準テストの開発に伴い、思考力を測定する標準テストが導入される例が見られる。本発表では、大学生のクリティカルシンキングを測定する国内外の標準テストの分類・検討に基づき、身につけるべきクリティカルシンキングの定義及びこれを測定する上での課題を提示する。
┃オーラルセッション
15:30 〜16:50 
❼課題解決型学習の可能性
2F・A会場
 座 長 
大津 史子
(名城大学薬学部)
 概 要 
課題の解決を目指して学習するという形態の授業が大学において増加している。課題に取り組ませることで、学習の動機づけを高め、知識の統合を図り、問題解決などのさまざまな能力を涵養することが期待できる。本セッションでは、課題解決型学習を通して学生に質の高い学習をどのように与えることができるのかについて議論することを目的とする。課題解決型学習とはどのようなものか、すぐれた課題解決型学習はどのような方法や学習環境で達成することができるのか、大学はどのように支援することができるのかなどについて議論し、課題解決型学習の可能性と課題を検討する。
報告1
三重大学における新しいPBL教育空間に関する研究
○加藤 彰一○毛利 志保
(三重大学大学院工学研究科)
○長澤 多代
(三重大学大学附属図書館)
主体的な学びの実践として、問題発見解決型学習(PBL: Problem Based Learning)を導入した、三重大学工学部建築学科に関連した取組について発表する。対象授業は、学部1年前期共通科目「『4つの力』スタートアップセミナー」(担当:長澤)、学部1年後期「建築計画Ⅰ」と学部3年後期「建築経営工学Ⅱ」(担当:加藤)である。発表では、グループワークの比較分析を中心に、新しく建設され本年度から利用が開始された、PBL演習室の利用状況分析から、その計画の特徴を論じ、同演習室下階のラーニングコモンズの計画概要や利用状況について報告する。また、米国教育心理学者DavidKolbが提唱する経験学習理論に基づく、学生の学習スタイル分析についても考察を行う。
報告2
地域企業との協働プロジェクトを通した総合的学士力養成プログラムの試み
○山口 満○村松 東見目 喜重○今井 正文○三好 哲也
(豊橋創造大学経営学部)
平成20年の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」を踏まえて、専門的な知識教育だけでなくコミュニケーション力や態度・志向性の養成を含めた総合的な教育の実現のための様々な取り組みが報告されている。豊橋創造大学経営学部では、就業力や社会人基礎力養成を踏まえた総合的学士力育成を目標に掲げて、地域企業との協働プロジェクトを中心とした教育プログラムを展開している。本報告では、地域企業とのプロジェクト活動に関する実践報告とその教育プログラムの運営を通した教育目標の共有化活動について報告する。企業との協働活動で企業の求める能力や資質と大学教育の目標について考察する。
報告3
政策学部におけるPBL教育の実践報告
川北 泰伸(同志社大学政策学部)
2011年と2012年に同志社大学政策学部では滋賀県長浜市と共同研究を行い、長浜市が発展するための政策提案を行ってきた。連携の内容は、長浜市職員を学部へ派遣してもらい、学部生と一緒に政策立案を行った。また指導教官からは学生への指導に加え、職員に対しても実務を念頭においた政策形成の指導を行った。そして成果発表の場として、市長や市の幹部に対して政策提案を行い、フィードバックを得た。本報告では、大学側の事務局として関わった実践報告を行う。特に利益の異なる大学と行政が連携するに当たり配慮が必要だった内容や打合せの過程を中心に報告したい。
❽学生・学習支援の現在
2F・B会場
 座 長 
池田 輝政
(名城大学人間学部)
 概 要 
大学進学率が5割を超え、学生の学力や勉学目的の多様化が進む中で、大学教育は従来以上に困難な状況を迎えている。この状況下でも、学生が主体的に学ぶ姿勢を獲得し、一定の学習成果をあげるようにすることは、大学に課せられた責務である。それを実現するためには、個々の教員や職員が日々の授業・職務の中で、試行錯誤を繰り返しつつ、地道に働きかけを行うことが必要になろう。本セッションでは、各大学において、教員および職員の立場で学生の学修支援に取り組んでいる方から、取り組みの内容を報告していただく。それに基づいて、各大学で学生の主体的学びを実現するために何が必要なのか、日々の実践をどのような方向で発展・深化させるべきか等について参加者とともに検討する。
報告1
短期間でゼロから学生参画型FDを展開するコツ
橋本 勝(富山大学大学教育支援センター )
2001年に岡山大学を基点に本格展開が始まった学生参画型FDは、近年、木野茂氏などを中心とした「学生FDサミット」の開催等で弾みがつき、今や50大学以上に広がる一大ムーブメントとなっている。展開内容は大学により多様であるが、「学びの主権者」たる学生が各自の学びではなく学生集団全体の学びに目を向け、教職員と一緒に主体的学びの実現を目指すこの活動は、教職員だけでアリバイ的に進めるFDよりははるかに好ましい。
本報告は、岡山大学を10年間リードした報告者が、そのような素地が全くなかった北陸で、1年半でそれを軌道に乗せたコツを披露することによって、この活動に関心を持ちながら第一歩を踏み出せない大学にヒントを提供することを目的とするものである。
報告2
履修相談制度とその情報の使い方
増田 淳矢(中京大学経済学部)
中京大学経済学部では学期の始めに学生に対して履修相談を行っている。履修相談では学期の始めにそれまでの勉学の進捗状況や希望進路等を踏まえ、履修科目や進路等の相談を行っている。対象にしている学生は春学期では1~3年の全ての学生と4年生の成績不良者、秋学期では成績不良者は強制参加でそれ以外の学生は任意である。本報告では、この履修相談制度の制度設計および実施における問題点について概説を行う。その後に、履修相談やその他成績情報を利用して授業等に活用する方法について報告を行う。
報告3
カカ・ワリあう、学生相互の支援・協働活動―学生交流センターの活動を通じて―
東 誠(南山大学学生課)
高等教育機関の学修支援の現場において、ピア・サポートが大きな意味を成すことに、もはや異論が挟み込まれる余地はないであろう。学年・学科を越えた学生相互のカカ・ワリ(関わり)を通じて、様々な「学び」に対する学生自身の主体的な関与が、真に求められている。
本報告は、2009年度から2011年度まで文部科学省の「大学教育・学生支援推進事業」(学生支援推進プログラム)として採択されたプログラムを経て、現在も南山大学の学修支援の主要な活動拠点となっている学生交流センターの取組を紹介する。そして、学生交流センターにおける活動を通じて、教職員も含めた学生相互の支援・協働活動の今後の方向性について考察を試みるものである。
❾日本の大学における IR の実践とノウハウ
2F・C会場
 座 長 
藤井 都百
(名古屋大学評価企画室)
 概 要 
大学の諸活動を分析する組織としてインスティテューショナル・リサーチ(IR)に注目が集まり、海外の先進的な取組が紹介される段階を経て、日本でも各大学の事例を報告できる段階に入ったと考えられる。学生の学習時間、大学生活の満足度、教育情報の公表など、ここ数年のキーワードからは、大学が自組織の状況をよりいっそう客観的に把握せざるをえない状況にあることが分かり、IR に寄せられる期待も高まっている。
今回は、教育改善・学生支援のIR、および、評価対応のIR の実践事例の報告を通じて、日本におけるIR のはたらきと大学の諸活動改善に果たす役割について議論し、今後のIRのありかたについて検討したい。
報告1
公開データを使用した自大学の現状把握の事例
藤井 都百(名古屋大学評価企画室)
IRの活動の一つに、自大学の現状を客観的に把握できるようなデータを付した資料を作成することがある。他大学との比較を通じて自大学の位置付けを知るデータを求められることは多いが、他大学のデータの入手はしばしば制限を受ける。本発表では、公開されているデータのみを用いた分析である、論文数と被引用数の比較、科学研究費補助金獲得状況の把握の事例を紹介し、公開データで分析を行なう際の困難と解決およびその限界について整理する。
報告2
評価マインドとIR人材の育成に向けて~大学評価コンソーシアムの取組から~
浅野 茂(神戸大学企画評価室)
日本の大学においては、自己点検・評価の義務化、法人評価及び認証評価の一巡などにより、評価文化が徐々に定着しつつある。しかし、評価プロセスにおいて把握、または評価結果を通じて認識する様々な問題点が、必ずしも改善には結びつかない状況が生じている。これは、組織内に改善志向型の「評価マインド」が定着していないこと、さらにはその役割を担える人材が不足していることに加え、改善を促進する制度構築が不十分であるからである。これらの現状を打開すべく、大学評価コンソーシアムにおいては、「評価を評価で終わらせない」、「元気の出る評価」をスローガンに、国公私立大学の評価担当(経験)者を対象に「大学評価担当者集会」を開催し、人材育成や課題共有とその解決策の検討を行っている。本報告では、その成果と今後の方向性等を参加者と共有したい。
報告3
京都光華女子大学におけるEM・IRの取り組み実践報告
阿部 一晴(京都光華女子大学 EM・IR部(情報教育センター))
本学では平成18年度より、学生の入学前から卒業後までを対象に一貫して教育と学生支援を組織的・体系的に展開し、満足度の高い教育サービスを実現する総合学生支援策「エンロールメント・マネジメント(EM)」に取り組んでいる。平成20年度から4カ年この取組が学生支援GPの選定を受け、全学的に更に発展、充実させることが出来た。これまでの活動を通じ、様々なデータの精緻な分析とエビデンスに基づく組織的なEMの実現の必要性を強く感じ、GP期間終了となった本年度から、教職一体でこの課題に取り組む責任部署として、学長直轄の「EM・IR部」を立ち上げた。本発表では、EM・IR部を中心とした本学の取組について報告する。
┃ミニワークショップ
12:30 〜14:00 
1F・会議室
物理現象と概念を結ぶ-
講義実験という挑戦(2)
 企   画  
物理学講義実験研究会
 概 要 
大学の教養の物理学講義において、物理的概念や物理法則を学生に理解させるためには演示実験や、簡便な実験を学生に体験させる方法が効果的である。しかし、大学の授業レベルに合った実験はそれほど多くない。授業の課題との関係が明確で、かつ印象に残る実験が必要である。また、授業への効果的な導入方法や、その実験結果を元に学生に仮設を立てさせ、それを立証させる工夫も重要である。昨年に引き続き、招待した方々に実験を授業に生かす工夫を、実演を含めて紹介していただき、教育効果を上げる方法を議論する機会としたい。
 講演と実演 
司会:古澤 彰浩(名古屋大学教養教育院)
三浦 裕一(名古屋大学大学院理学研究科)
「単振り子と剛体振り子の関係を理解させる実験など」
牧原 義一(三重大学教育学部)
「パソコン計測を利用した講義実験」
岡島 茂樹(中部大学工学部)
「2次元振動モードパターン(クラドニ図形)観測器製作」
原科 浩(大同大学教養部)
「どうやって学生に実験を見せるのか~Webカメラ活用の試み」
中村 光廣・林 煕崇(名古屋大学大学院理学研究科)
「机上で行うコンパクトな光速測定実験など」
┃ポスターセッション
12:30 〜18:30 
1F・ロビー
アカデミックライティング
科目の実践と意義に関する考察
林 雅代
(南山大学人文学部心理人間学科)
中野 清金田 裕子
(南山大学人文学部心理人間学科)
 概 要 
本発表では、発表者らが携わった、アカデミックライティングを学ぶ科目「心理人間学基礎演習Ⅱ」(南山大学心理人間学科初年次必修科目<以下「基礎演習II」>)の実践過程を検討し、その意義と今後の課題について考察を行う。2005年に開講された基礎演習IIの授業デザインは、学生の授業アンケートと担当教員(発表者ら)の振り返りをもとに改変されてきた。その過程を検討し、論理的な文章作成スキルの養成と学生の創造的な探究活動の両立の可能性、グループワークによる学生の学び合いの意義、教員の役割の重要性について考察する。さらに、専門領域の異なる教員が協働でアカデミックライティング科目を考案・実践することの意義を考察する。

「教養科目」に対する
新しいアプローチ
~社会連携型PBLによる同志社大学
『プロジェクト科目』について~
平田 有喜宏
(同志社大学教務部教務課
(兼 PBL推進支援センター事務局))
 概 要 
同志社大学では2006年度より教養教育改革の一環として『プロジェクト科目』を設置しています。本科目は「PBL(Project-Based Learning)」を基調として実施され、位置付けは「全学共通教養教育科目」のキャリア形成支援科目群として年間20科目程度を開講しています。特徴としては、社会全般から「テーマや講師を公募」し、各クラスは「少人数」で構成され、学期ごとに「授業運営に係る必要経費」を予算計上しています。これまで2006年度現代GP「公募制のプロジェクト科目による地域活性化」、2009年度教育GP「プロジェクト・リテラシーと新しい教養教育」と2度にわたるGP採択の中心となった本科目についてご紹介いたします

初年次導入教育が後年次の
学修に与える効果
稲垣 太一
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 博士前期課程)
 概 要 
現在日本の大学で、「初年次教育」と称する取り組みが多くの大学で行われるようになっている。とりわけ、高校までの学習から大学での学修への転換・大学教育への適応を促すための支援の重要さに関する認識は、大学関係者の間で共有されるようになっている。しかし、これらの教育・支援を受けた学生が2年次以降に学修様式をどのように変化させているかは、まだ十分に明らかにされていない。本発表では、以下の点を明らかにする。
①初年次教育を受けた学生、とくに積極的に受講した学生が、2年次以降に、学修様式をどのように変化しているのか、②学習様式の変容には、どのような内容・方法の授業が効果的なのか。

教室の外で哲学をまなぶ
―哲学カフェという手法について―
三浦 隆宏
(椙山女学園大学人間関係学部)
久保田 祐歌
(愛知教育大学教育創造開発機構
 大学教育研究センター)
 概 要 
「哲学」系の科目が少なくない大学から姿を消しつつあるいま、教室の外で哲学をまなぼうとする新たな実践が広がりつつある。たとえば私たちは、名古屋哲学教育研究会の企画として2012年度に2回、名古屋大学内のカフェで教養教育としての哲学を問う哲学カフェを共同で開催したほか、発表者の一人は、勤務先の学生ラウンジで受講者らとともに哲学カフェの授業を行ってきた。
本発表では主に今年度の活動を紹介しながら、(1)哲学カフェの国内での展開状況、(2)哲学カフェを実施する上での指針・進行の方法、(3)哲学教育の一環としての哲学カフェの意義について報告を行う。

主体的な学びを育む学生FD活動
満田 清恵
(愛知教育大学教育創造開発機構運営課)
 概 要 
近年、教員組織における教育改善活動であるFDに、学生を参画させる大学が増えている。教育の受容者である学生の意見を反映させることで、より実践的で効果あるFDにすることが、活動の意義の1つとして挙げられる。では、FDに参画する学生そのものにはどのような成長があるのだろうか。
本報告では、本学の「学生教職員参加型FD組織あいこね」の事例をもとに、学生FD活動に参加している学生の学びに変化があったのか、またそれを支援する職員の役割とはどのようなものか、現状における課題と効果を報告する。

ラーニング・コモンズにおける
学習環境デザイン
-グループ学習エリアの
 利用実態から考える-
岡部 幸祐堀 友美安福 奈美鈴木 美奈子
(名古屋大学附属図書館情報サービス課)
 概 要 
名古屋大学中央図書館ラーニング・コモンズも4年目を迎え、会話しながら勉強ができる空間として学生の間に浸透してきた。グループラーニングエリアを中心に連日賑わいを見せているが、「グループで一緒に学習」している集団と「グループ学習」を行っている集団、授業との関連の有無、使用ツールの差異など、利用の実態は多様である。
本発表では、このエリアにおける利用者の観察・インタビュー調査の結果を検証し、その利用形態、目的および方法を明らかにすることで、主体的な学び合いを促進するために必要な学習環境をデザインする端緒としたい。

臨床判断能力向上のための共育
プログラム
-気づきを与える指導薬剤師の
養成を目指して-
長谷川 洋一
(名城大学薬学部薬学教育開発センター
 実務実習部門)
大津 史子
(名城大学薬学部医薬情報学研究室)
黒野 俊介
伊東 亜紀雄
(名城大学薬学部薬学教育開発センター
 実務実習部門)
後藤 伸之
(名城大学薬学部医薬情報学研究室)
永松 正
(名城大学薬学部臨床疾患制御学
 研究室)
早川 伸樹
(名城大学薬学部臨床薬物治療学Ⅰ)
脇田 康志
(名城大学薬学部臨床薬物治療学Ⅱ)
半谷 眞七子
(名城大学薬学部病院薬学研究室)
藤崎 和彦
(岐阜大学医学教育開発研究センター)
野田 雄二
(愛知県薬剤師会理事)
今髙 多佳子
(愛知県病院薬剤師会薬学生病院実習検討委員)
灘井 雅行

(名城大学薬学部薬剤学研究室)
小嶋 仲夫
(名城大学薬学部衛生学研究室)
 概 要 
チーム医療に貢献できる薬剤師の養成を目指し、平成23年度文部科学省「専門的看護師・薬剤師等医療人材養成事業」(3カ年)として「臨床判断能力向上のための共育プログラム-気づきを与える指導薬剤師の養成を目指して-」(以下、共育プログラム)が採択された。この共育プログラムは、薬学部学生と薬剤師が共に育つ「共育」の実現を図ることを目標にしており、本学6年制学部教育で行っている適正な薬物療法実施のための臨床判断能力育成カリキュラムを薬剤師向けに提供し、薬剤師としての臨床判断能力と実務実習における指導者としてのコーチング能力の向上を目指すものである。発表ではプログラムの詳細および実施状況について報告する。

東海がんプロの取り組み
・・・組織横断的がん診療を担う
専門医療人の養成・・・
立松 三千子金田 典雄
(名城大学大学院薬学研究科)
 概 要 
がん医療のプロフェッショナルや研究者の人材育成を目的として、平成24年度から文科省事業「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」が始まった。全国で15の取り組みが行われており、そのうち東海地区では名古屋大学、浜松医科大学、岐阜大学、名城大学、名古屋市立大学、愛知医科大学、藤田保健衛生大学の7大学が共同で「東海がんプロ」として取り組んでいる。がん医療のプロフェッショナルや研究者を目指す医師、看護師、薬剤師などの教育を目的として、各大学のそれぞれの特色を生かしたコースが設けられている。今回、その概要について紹介する。

国境を越えた法制度の移植計画を
立案し、実施を統括できる能力を
もったリーダーの育成
松浦 好治
(名古屋大学法学研究科)
 概 要 
名古屋大学大学院法学研究科リーディング大学院は、日本人学生と留学生によ る比較法・比較政治の共同研究を通してアジアを強く意識した国際的な人材ネッ トワークを育てることを目的としている。  
その中で、日本の独自性を理解した上で、アジア諸国に対して社会運営の基礎 となる法制度を構想・設計し、その国の文化に配慮しながら法制度を移植する事 業に従事する国際チームを組織・統括できるリーダーを養成する。

実践的リスク予防学の
修得バイオ技術者育成
和田 俊夫
(中部大学応用生物学部食品栄養科学科)
 概 要 
事業の目的は、建学の精神「不言実行、あてになる人間」を信条として、民間企業等と連携しながら、企業において問題発生を事前に防止すること、あるいは軽減させることを目指した「予防;事前防止(Prevention)の観点から、21世紀型バイオ系企業にとっての「リスク管理とリスク低減」を総合的にかつ実践的に修得した、実践的バイオ技術者の育成・教育を行うものです。
この実践的バイオ技術者は、遺伝子等のバイオと化学の両分野に精通しており、企業現場等において、即戦力として大きく期待されています。

食の安全・食育にかかわる
教育のための大学連携
フードコンソーシアム
森山 龍一
(中部大学応用生物学部食品栄養科学科)
 概 要 
中部大学と名古屋大学が共同申請し、採択されたプロジェクトです。
本プロジェクトは、我が国における食に関する教育の改善を図るために、学部教育・大学院教育のための新たなカリキュラムを構築して、その内容を国内外に提示するとともに、当該カリキュラムに必要となる教材を整備することにより、我が国における「食」の教育に新しい概念を提示するものです。また、地域の自治体、教育機関、企業、他大学等と協力しながら「食」や「食の安全」の概念などを向上させるとともに、市民の「食」に関するさまざまな意識についても飛躍的な向上を図ることも目的の一つとしています。

『持続学のすすめ』による
実践型人材の育成
上野 薫
(中部大学応用生物学部環境生物科学科)
伊藤 守弘
(中部大学生命健康科学部生命医科学科)
 概 要 
中部大学は7学部29学科を擁する文理融合型の総合大学です。さまざまな課題に直面している現代社会を支える「地球規模で考え、足元から行動する『あてになる人間』」を育成するため、文系・理系の学生が融合した幅広い学びを実現します。そこで本学では新たに、地球規模で考える「持続学の基礎教育」と足元から行動する「持続学の実践教育」を新設し、教員においても文系・理系の壁を超えた指導体制と評価体制を整備しています。

中国の大学の学生支援における
学生の主体性育成への注目
呉 嬌(ゴ キョウ)
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 博士後期課程)
 概 要 
学生の主体性を育成することは、大学生の学習成果の向上を促すだけではなく、社会人として、人生におけるさまざまな問題でも主体的に解決して働き続ける人材の育成につながる。そのため、近年の中国の大学教育研究では、大学生の主体性を育成する必要性がしばしば指摘されている。本発表は、中国の大学教育研究における学生の主体性育成に関する論説と学生支援の政策調整を考察しながら、大学の学生支援において学生の主体性育成のアプローチと課題を明らかにすることを目的とする。

中国の大学における留学生受入れ
部門の役割変化に関する研究
姜 雅琪(ショウガキ)
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 博士前期課程)
 概 要 
2010年7月、中国政府は「中国留学計画」を正式に発表し、2020年までに外国人留学生をのべ50万受け入れ、アジア最大の留学生受入れ国とするという発展計画を発表した。
これを機に、中国の大学は留学生受入れ部門の発展に力を入れ始め、国際学院の拡大、国際交流処の事業合弁など留学生受入れ部門の役割が変化しつつある。しかし、中国の大学における留学生受入れ部門の役割がどのように変化しているかという点に関する研究はまだ少ない。本研究は、中国の大学における留学生受入れ部門の役割の変遷を明らかにしたい。その上で、日中比較を通じて、中国の留学生受入れ部門に存在している問題について解決案を提示したいと考えている。

愛知県立大学のグローバル
人材育成推進事業
堀 一郎
(愛知県立大学外国語学部)
木下 圭一郎
(愛知県立大学学務課長)
川島 香織
(愛知県立大学外国語学部係長)
松崎 久美
(愛知県立大学学務部学務課)
 概 要 
愛知県立大学は、文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」に採択され、外国語学部が中心となり「学士課程における発展的留学制度を通したグローバル・キャリア育成プロジェクト」がスタートします。本構想では、外国語学部学生の60%以上が単位修得を伴う海外留学を経験するという目標を設定した上で、留学前→留学中→留学後のプロセスを、グローバル人材を育てる一貫した発展的教育過程としてとらえ、各段階で必要な能力を育てる体系的なプログラムを実施します。
このポスター発表において、本プログラムの概要を紹介するとともに、今必要とされているグローバル人材の育成と取組について考えます。

大学国際化に対応するアカデミック
キャリア形成支援の取組
東 望歩
(名古屋大学高等教育研究センター)
岩城 奈巳
(名古屋大学留学生センター)
安井 永子
(名古屋大学文学研究科)
中井 俊樹
(名古屋大学高等教育研究センター)
 概 要 
2011年9月から2012年2月にかけて実施したPFF研修「英語で教える」について、実践報告とその意義についての検討を行う。本研修では、日本文学・日本語学・日本文化学を専攻する大学院生・ポストドクターを対象とした研修を設計、「授業設計・教授法」「英語・異文化コミュニケーション」に関するレクチャーの受講、レクチャー内容に基づいて自らの専門分野に関する講義を設計し、作成したプレゼンテーションと資料について実践的指導を受ける「スピーチとライティング」、研修成果としての公開セミナー「GSI Seminar for International Students」開講の三段階に分けて実施した。研修内容について紹介するとともに、研修参加者に対するインタビューおよびアンケート、公開セミナー受講者によるアンケートを通して本研修の意義と今後の課題について検討する。

グリーン自然科学国際教育研究
プログラムの取組
藤縄 祐
(名古屋大学グリーン自然科学国際教育研究
 プログラム)
 概 要 
グリーン自然科学分野における本学の実績に立脚し、分子科学研究所、基礎生物学研究所、理化学研究所、産業技術総合研究所、豊田中央研究所、豊田理化学研究所という我が国を代表する産官学の研究所と連携しながら、「全体を見渡す科学力と社会性」、「基礎研究から応用成果を引き出す展開力」、「地球規模で活動する国際性」を涵養し、この分野の次世代を担う「シーズを産業に育てる企業研究者」、「新発想を学術領域に育てるアカデミア研究者」、「国際社会で活躍する環境科学コーディネーター・メンター」を育成している。当日は、具体的な取組みを紹介する。

大学教員の職能開発において
『誰が』『誰を』『どのように』
推進するか
-大学教員のキャリア・ステージの
 視点から-
岡田 準郎
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 大学院研究生)
 概 要 
大学教員を対象とした職能開発は、各大学によって様々な形式で取り組まれている。 それに対応して、職能開発の議論は、大学間、全学、学部・学科、個別というような『推進主体』の視点から議論されている。しかし、多様なキャリアを経て就いた大学教員のキャリア・ステージの視点から、大学教員の職能開発は議論されてきたのであろうか。
本報告では、大学教員のキャリア・ステージの視点から、『誰が』『誰を』『どのように』推進してくべきかを提示したい。

大学職員研修の展開期における
体制・内容に関する基礎的研究
坪井 啓太
(名古屋経済大学キャリアセンター)
伊藤 博美
(名古屋経済大学人間生活科学部教育保育学科)
 概 要 
21世紀に入る前後から、大学職員の能力形成・向上が注目され、学内外での研修の機会も増え、大学アドミニストレーターなどプロフェッショナルの養成を目的とした研修も行われている。例えば早稲田や立命館など、充実した各大学の研修制度の事例も複数紹介されている。また、大学職員を対象とした国大協や私大連盟等、各種団体の研修事業の動向については、佐野(2007)が明らかにしている。
そこで本発表では、佐野の継続的研究として、2012年12月までの大学職員の研修に関する報告や研究(例えば寺尾・檜森(2011))を対象とし、背景や経緯も視野に入れながら、研修体制や研修内容の変化を観点として分析した結果を報告する。

私立大学事務局長の職務及び役割
原 裕美
(学校法人名城大学経営本部渉外部)
 概 要 
近年、大学職員論や理事長・学長のリーダーシップについては多くの研究がされている。しかし、事務組織のトップである事務局長に着目した研究は少ない。本研究では、事務局長には「補佐役」の役割が重要であるとの仮説を立てた。私立大学事務局長の職務と役割を明らかにするため、ミンツバーグ(1993)のマネジャー10の役割を当てはめ、調査を行った結果を報告する。
事務組織のリーダーとはいかなるやりがいと大変さを抱えているのか。 インタビュー調査の結果を取り纏め報告する。

大学職員の教育支援者としての
役割に関する研究
竹中 喜一
(関西大学教育開発支援センター)
 概 要 
大学の教育目的を達成するために必要な職員は「教育支援者」と呼ばれている。従来、職員の教育的役割については経営的役割ほど注目されず、「教育支援者」の職能開発についても十分な検討がなされていなかった。
しかし、職員が教育の質的向上に直接関与する必要性は高まっている。そこで本発表では「教育支援者」である職員の役割や職能開発の現状及び課題を明らかにし、教育の質的向上に資する「教育支援モデル」を提示することを目的とする。「教育支援モデル」提示に至るまでに調査を行った事例も併せて報告する。

映画を教材とした授業モデルの構築
-「ジェネリックスキル」の
 育成を目的として-
田中 秀佳
(名古屋大学大学院教育発電科学研究科
 博士後期課程)
寺田 佳孝
(愛知教育大学)
小林 忠資
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 博士後期課程)
中井 俊樹
(名古屋大学高等教育研究センター)
 概 要 
ユニバーサル段階にあるわが国の高等教育において、授業の質をいかに向上するかが問われている。
学生の意欲を喚起し、学習者のニーズに対応した授業が求められる一方、学習者に対しても「ジェネリックスキルの獲得」などが求められている。この状況に対応した授業方法が求められる中で、「映画」を用いた授業実践が注目されている。「教材としての映画」については、これまでアメリカを中心に諸外国で研究が蓄積されつつある。本発表では、先行研究において分析されている「教材としての映画」の事例、その意義と効果について整理し、実際の授業において映画を用いる上で必要なパースペクティブを得ることを目的とする。

アクティブラーニングに向けた
授業開発の検討
-授業教材としての映画の可能性-
寺田 佳孝
(愛知教育大学)
小林 忠資田中 秀佳
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科
 博士後期課程)
中井 俊樹
(名古屋大学高等教育研究センター)
 概 要 
本発表では、アクティブラーニングのための教材としての「映画」の利用手法を検討する。具体的には、授業目標を学習者がいかに主体的に、かつ効果的に獲得できるかという点に着目して、教材としての使用場面、発問・発話の方法などの提示手法、ディスカッションやレポートなどの作業課題の方法などを、先行研究に基づき検討する。また、この「授業教材としての映画」の検討のために、今年度より立ち上げた「教育学における映画を教材とした授業開発研究会」について、その活動内容を紹介するとともに、報告者らが実際に行なっている映画を用いた授業実践についても触れたい。

教育デザイン研究室の取り組みと
ICT教材の活用状況について
竹生 久美子吉田 雅彦
(日本福祉大学教育デザイン研究室)
佐藤 慎一
(日本福祉大学国際福祉開発学部)
 概 要 
日本福祉大学教育デザイン研究室では、魅力的で効果の高い教育の実現を目指し、オンデマンド教材の開発・提供、情報通信技術(ICT)の教育活用を推進している。具体的には、オンライン教育用の完結型オンデマンド教材の制作に加えて、ゼミ発表やイベント等の撮影と教材化、アニメーション教材の制作、各種媒体の教材のデジタル化等、対面授業で活用できる教材の開発支援を行っている。また、ソーシャルメディアや学習支援システムを活用した授業支援にも取り組んでいる。本発表では、これら教育デザイン研究室での取り組みを紹介するとともに、本学におけるICT活用の状況について報告する。

物理学講義における系統的
演示実験のための教材開発と
導入方法
三浦 裕一
(名古屋大学大学院理学研究科)
安田 淳一郎
(岐阜大学教養教育推進センター)
中村 泰之
(名古屋大学大学院情報科学研究科)
小西 哲郎
(名古屋大学大学院理学研究科)
千代 勝実
(山形大学基盤教育院)
古澤 彰浩
(名古屋大学教養教育院)
齋藤 芳子
(名古屋大学高等教育研究センター)
 概 要 
非物理系初年次を対象にした物理の講義において、演示実験のための教材の開発と授業への導入方法、及び教育効果の評価方法の開発を、科研費基盤(C)の助成を受け、大学と学部を横断した有志で進めている。 学生が物理法則を発見的に理解できるよう、授業中に段階的に実験を進めながら推論を進める方法を開発している。また、直観的に理解させるため、なるべく電子的なセンサーを使用せず、学生自身の肉眼で観察できる実験を工夫している。 今回は、「作用-反作用の法則」、「実体振り子を用いた慣性モーメントの理解」をテーマに、開発した教材と、その効果的な導入方法を報告する。

批判的思考に基づく自発性を
大学教育で育成するための課題
山本 晃輔
(奈良教育大学 学校教育講座)
鍋田 智広
(北陸先端科学技術大学院大学 
 大学院教育イニシアティブセンター)
 概 要 
社会における問題解決は問題を自ら定式化し、一意に決まらない答えを見つけ出す、複雑かつ能動的なプロセスである。それゆえ与えられた問題に受動的に取り組むことに慣れた大学生にとって、自発性の獲得は社会人として適応するための大きな壁となっている。こうした問題への対処として、近年多くの大学で、教育心理学的観点から、批判的思考と呼ばれる、自己省察的な自発性の基盤となる思考形式の育成が試みられている。ここでは、発表者の批判的思考に関する研究成果の概要を紹介し、目に見えない思考形式を対象とした教育実践の難しさ、および思考を教育する上での指針について議論・検討する。

教員養成系学部・大学のリベラル・
アーツ教育の研究枠組み
-学際学部の視点から-
内山 弘美
(非常勤講師)
 概 要 
報告者は、教員養成系学部の新課程への改組と近年の揺り戻し、および大綱化以降の教養教育・学際学部の動向を研究してきた。この視点に基づき、教員養成系教員養成系学部・大学のリベラル・アーツ教育の研究枠組みについて報告する

教員養成課程における「いじめ対策」
に関する授業開発(中規模クラス編)
川村 遼増本 直弘平野 能子戸崎 紗絵
(静岡大学大学院生)
藤井 基貴
(静岡大学教育学部)
 概 要 
昨今の日本の学校では、「いじめ」対策が大きな課題となっている。一方で、大学における教員養成課程において「いじめ」対策に関する授業は十分に開講されていないという実情がある。本発表では、いじめに関する最新の研究成果をもとにして、教育学部学生に向けた新しい形の授業の開発の成果と課題を報告する。具体的には、スタンフォード大学デボノ博士の提案した「六色の帽子」による教育方法を応用し、受講者がさまざまな観点および立場から、「いじめ」への対策を提起、検討する授業をデザインおよび実施し、授業の具体的手順、特色、受講者からのフィードバックについて紹介および分析する。

教員養成課程における「いじめ理解」
に関する授業開発(大規模クラス編)
深澤 吉紀嶋田 龍彦三田 千智鈴木 貴大
(静岡大学大学院生)
藤井 基貴
(静岡大学教育学部)
 概 要 
発表内容の概要:近年、学校におけるいじめの深刻化が問題となっている。中央教育審議会においても教員養成課程において、どのような教育プログラムの導入および開発が必要なのかについて検討がはじまっている。実際に教職課程のシラバス分析から、教職を履修する学生たちがいじめについて必ず学習する機会が保証されているわけではないことが明らかとなった。加えて、いじめについての基本的な知識を習得する大学の授業実践例も少なく、伝えるべき事柄も明確ではないという現状が見えてきた。本研究では近年の教育学者および心理学者による最新の研究成果および知見をもとにして、100人規模のクラスにおける授業の開発と実践を行なった。その結果を報告する。

現任者研修を意識した
「教職実践演習」の開発(その2)
―保育者の資質向上のための
 共同学習の意義―
青山 佳代森山 雅子
(愛知江南短期大学)
 概 要 
教職実践演習は、現在、4年制大学よりも先行して短期大学において実施されている教職課程における必修科目である。愛知江南短期大学では、(1)具体的な実践の論理的背景・多角的視点の理解、(2)コミュニケーション・スキル、および(3)プレゼンテーション・スキルの向上を目的とした「教育実践演習」の方法を開発した。これまでの2か年の授業実践のなかで、共同学習を通じて、大学での学びを統合し自分の能力や保育実践を省察することを目指した。本発表では、共同学習を通して、どのように保育者としての資質が向上していくのかを考察する。

実践事例を通して主体的に
学び考える保育士・
幼稚園教諭養成
新川 朋子
(四日市大学)
 概 要 
中央教育審議会第82回総会 新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)の中で、「4.求められる学士課程教育の質的転換」において「ディスカッションやディベートといった双方向の授業による主体的な学修を促す学士課程教育の質的転換が必要である」と指摘された。主体的に学び、考え続ける力を持った保育士、幼稚園教諭を養成するため、保育所における保護者支援を学ぶ際、実践事例を提示して共通理解を深めた。その後、実践事例についてディスカッションして学び合った。

教員養成系大学における
ジェネリック・スキル教育の課題
―教員アンケート・ヒアリング
調査結果をもとに―
久保田 祐歌
(愛知教育大学教育創造開発機構
 大学教育研究センター)
 概 要 
愛知教育大学教育創造開発機構においては、平成23年度より文科省特別経費によるプロジェクト「教員養成系大学の特徴を活かしたリベラル・アーツ型教育の展開」を推進している。「リベラル・アーツ型教育」の構築を目指す本取り組みは、学生のジェネリック・スキル(汎用的技能)の涵養を一つの柱としている。今年度は、平成25年度からの新教養教育カリキュラムの実施に向けて、ジェネリック・スキル教育に関する教員アンケート及びヒアリング調査を実施した。本報告ではこれらの調査結果に基づき、(1)教育目標としてのジェネリック・スキル、(2)ジェネリック・スキルの教育方法、(3)今後解消すべき課題について報告する。

主 催: 大学教育改革フォーラムin東海2013実行委員会、名古屋大学高等教育研究センター(FD・SD教育改善支援拠点)
事務局: 名古屋大学高等教育研究センター
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