第59回招聘セミナー 日米のTA制度の現状と課題 北野 秋男 氏 日本大学文理学部教授 2006年 11月21日(火)午後4時〜午後6時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館5階 会議室509
講演要旨
本報告は、アメリカのTA制度を概観しながら、とりわけ日米のTA研修・養成のあり方、日本のTA制度の課題、ならびにTA制度が大学院教育に与える影響について考察する。今、日本の大学に問われていることは、アメリカの制度の模倣ではなく、それぞれの大学における独自の取り組みと制度化である。
アメリカのTA制度の最大の特色は、TAが単独で授業を行うという貴重な教育経験の機会を得られるだけでなく、その訓練・養成プログラムが整備されている点にある。現在、TAに対する訓練・養成プログラムは、?全学的に実施される場合、?学科単位で実施される場合、?学部(大学院研究科)が実施する場合、?コース担当者が個別に実施する場合、?教育学部が実施する場合に区分できる。たとえば、オハイオ州立大学の場合には、「ファカルティとTA開発室」(Office of Faculty and TA Development)が、毎年、秋学期の開始前に新任のファカルティとTAの養成訓練を行う集中的なオリエンテーションを実施している。ヴァンダービルト大学の「教授センター」(Center for Teaching)は、全学のTA養成プログラムの責任を持ち、各学部が選抜した全てのTAに対する養成教育を運営している。
今日、アメリカでは大学院生だけでなく大学教員を対象にした訓練プログラムも存在する。こうしたプログラムは、1980年代後半にアメリカでTAの訓練・養成プログラムが本格化に制度化された後、1990年代になってTAを将来の大学教員の準備とみなすプログラムを組織的取り組みとして推進したものである。たとえば、シラキュース大学の場合には、1991年にピュー・チャリタブル・トラスト等からの支援を受けて設立された「将来の教授支援プログラム」(Future Professoriate Program=FPP)、および1997年にアメリカ大学協会と大学院協議会の支援を受け、他大学とも連携して始動した「将来の大学教員準備プログラム」(Preparing Future Faculty=PFF)が存在し、大学院生が大学教員になるための訓練が行われている。
実は、日本でも将来の大学教員を準備するプログラムの開発に取り組む先駆的な大学が登場した。たとえば、名古屋大学高等教育研究センターでは、教員および将来大学教職員をめざす大学院生の授業づくりをサポートする試みを行っており、その成果が期待される。
開催案内
第59回招聘セミナー
日米のTA制度の現状と課題
北野 秋男 氏
(日本大学文理学部教授)
日時:2006年 11月21日 (火) 午後4時〜午後6時
場所:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館5階 会議室509
講演概要
日本のティーチング・アシスタント(TA)制度は、アメリカのそれをモデルとしながら文部(科学)省主導による大学・大学院における制度改革、ないしは教育方法の改革といった文脈から提起されたものである。本報告は、日米のTA制度における研修・養成、業務内容、給与・待遇などの差異に注目しながら、TA制度から見た日本の学部・大学院教育のあり方の可能性と限界を検討するものである。今、日本の大学に問われていることは、アメリカの制度の模倣ではなく、それぞれの大学における独自の取り組みと制度化であろう。
言語:日本語
お問い合わせ: 夏目 <natsume@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)
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