第35回客員教授セミナー
アメリカの研究大学における
教養教育のカリキュラム開発
吉田 文 氏
独立行政法人メディア教育開発センター
2007年 2月7日(水)午後4時〜6時
名古屋大学東山キャンパス 文系総合館3階 311号室
講演要旨
1. college, university, and general education
アメリカの教養教育は、古典的なカレッジから大学へと発展していくなかで、学士課程を構成する一要素としてのgeneral educationとして存続している。西欧の大学と比 較すれば、専門教育化が遅かったために、また、高校との接続のギャップが解消されなかったために、大学においてgeneral educationを残したという点で、アメリカはユニークな存在である。しかし、general educationは、大学において安定的な存在ではなく、1つには、過度な専門主義が意識されたとき、それへ対抗して、もう1つには、戦争などの社会不安が生じたとき、国民統合の役割を期待されて、何度かの復興運動のなかで注目を浴びてきたという経緯をもつ。改革にあたっては、断片化するカリキュラムにいかに一貫性を持たせるか、まとまりをもったコアを築くがが、常なる課題 であった。研究志向の強い研究大学では、こうした傾向は強く現れる。
1990年代からの改革の新たな特徴は、カリキュラムの編成方法に加えて、カリキュラムの成果を問うようになったことである。学生の多様化や知識の細分化は特定の知識内容にもとづくカリキュラム編成の有効性を希薄にし、また、社会からは大学のアカウンタビリティが問われるようになったことが背景にある。そのカリキュラムの成果は、学生の学習の成功の度合いでもって評価される。知識習得型の講義に対し、学生に各種の体験をさせ、それでもってアカデミック・スキルや学習方法を習得させるプログラムの有効性が認められるようになっている。それは、大学生活に適応させるための初年次教育から、教員や大学院生の研究プロジェクトに参加させるプログラムまでさまざまあり、それにともない、学生の到達度を評価するための方法も模索されている。
3. 日本の教養教育
日本においては、大綱化以降、教養教育はきわめて多様化しており、初年次教育や文章表現などが教養教育において実施されるようになったことに特色がある。また、機関として全学的な教養教育のカリキュラムを編成しても、それは専門学部の要請の範 囲で利用される傾向が強く、そのことが教養教育の一層の多様化を招いている。しかし、他方で、教養教育を中心に学士課程教育を再構成しようとする声もあるが、その針路は定まっていない。アメリカの模索から、何らかのヒントを得ることはできない だろうか。
開催案内
第35回客員教授セミナー
アメリカの研究大学における教養教育のカリキュラム開発
吉田 文 氏
(独立行政法人メディア教育開発センター)
日時:2007年 2月7日 (水) 午後4時〜6時
場所:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館3階 会議室 311号室
講演概要
アメリカの学士課程カリキュラムは、教養(一般)教育、専攻、自由選択を構成要素とする。そのうち教養教育は、学士課程の教育理念を代表するとされながらも、実際にはもっとも問題を抱える部分といわれ、繰り返し改革が行われてきた。
第1に、近年の改革の焦点の全体的な傾向を概観し、第2に、とくに研究大学における特徴について、いくつかの事例を具体的に検討し、第3に、日本の大学にとってのインプリケーションを考察する。
言語:日本語
お問い合わせ: 夏目 <natsume@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)
※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までにseminar@cshe.nagoya-u.ac.jp宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。)セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。