第62回招聘セミナー ヨーロッパ高等教育の変革 FD(ASD)による教育から学習への転換サポート ブリギッテ・ベーレント 氏 元ベルリン自由大学・教授 2007年 3月22日(木)10時〜12時 名古屋大学文系総合館7階 オープンホール
講演要旨
大学教授法の「教授から学習への移行」は、生涯学習社会・知識社会に向けて教授・ 学習文化を変革することを意味し、21世紀高等教育像の重要な指導理念の一つであ る。この移行とは、知識を伝授する教員に軸足を置いた伝統的な教授法ではなく、学 習する学生に軸足を置いた新たな教授法への移行であり、転換である。
そのルーツは、1960年代末の学生運動に遡る。当時、伝統的な講義法の教育効果に対 して学生から強い不満が表明され、学校教育や成人教育の分野で開発されていた学習 者中心型の教育方法が注目された。この観点から新たな大学教授法を構築し教員に普 及させ、大学教員・教員団体の教育資質を向上させることは、欧州では狭義のアカデ ミックスタッフ・ディベロップメント(以下、ASDと略。日本のFDに相当)と呼ばれて いる。ドイツでは、高等教育大綱法(1976年)で不断の学習改革(Studienreform)が 大学の使命の一つと位置づけられ、ASDには学習改革の意味が含まれている。ASDを担 う機関としてセンター等が、欧米各国で設置され、センター間のネットワーク化と国 際的な協働が進められてきた。
新たな教授法が国際的な協働によって普及してきたことから、国際レベル(ユネスコ 「高等教育宣言」1998年)をはじめ、ヨーロッパ地域(欧州大学学長会議「欧州協議 事項」1997年)やドイツ国内(州文化大臣常設会議と大学学長会議1993年、大学教授 法研究協会1992年)で、21世紀高等教育像におけるASDの重要性が確認された。そこで は、変革のために必要な教員のコーチ的資質を養成するASDプログラムや、教育能力を 評価する人事政策の必要性が勧告されている。
一つの高等教育圏をめざすEU諸国では近年、質保証のための構造改革が強調され、学 習改革が軽視される傾向があった。この傾向への学生側の激しい抗議によって、質保 証のプロセスと内部の改革(教授・学習・研究能力の開発と推進)との融合が重視され るようになった。2006年に、ASDは大学での組織開発及び質保証全般の手段と認められ ている(ドイツ大学学長会議と学術審議会の協議事項)。新たな教授法への移行を成 功させるASDプログラムは、(1)所属機関メンバーのニーズや、(2)ワークショップ形式を 重視し、(3)参加者の実践経験で開始し、各自のニーズに応じる解決策を見いだすこと をめざす等の特徴があるという。
ドイツでは、再統一後の現在、ASDブームといえる状況が三大州を中心に認められる。 この状況に、「ドイツ大学教授法研究協会(AHD)」がASDの中央職能機関として発展 してきたことの影響力は少なくない。AHD は、現在ASD専門家対象の研修を開催し、 ASDプログラムの質保証のために、プログラムを認定し、ASD研究プログラムのモジ ュールと修了証明書のガイドラインを定めている。(文責:津田純子)
開催案内
第62回招聘セミナー
ヨーロッパ高等教育の変革--FD(ASD)による教育から学習への転換サポート
ブリギッテ・ベーレント氏
(元ベルリン自由大学・教授)
日時:2007年 3月22日 (木) 10時〜12時
場所:名古屋大学文系総合館7階 オープンホール
講演概要
ヨーロッパの高等教育変革のテーマは、国際的に採択された21世紀高等教育像と欧州高等教育圏構想(ボローニャ・プロセス)のもとで、特に教育課程の構造と、生涯学習という文脈における教育・学習文化に焦点化している。「教育から学習への転換」は変革の重要なキーワードの一つであり、これをサポートするFD事業が既に30年以上前から国を超えてネットワーク化されてきた。この動向や実情について、その渦中で、ベルリン自由大学を拠点にドイツ内ばかりでなく、ドイツ代表、時にはヨーロッパ代表として国際的に重要な役割を果たした講演者が、明らかにする。
言語:英語(通訳はありません)
お問い合わせ: 夏目 <seminar@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)
※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までにseminar@cshe.nagoya-u.ac.jp宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。)セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。