第38回客員教授セミナー アメリカの大学のTA制度と訓練・養成制度の現状と課題 吉良 直 氏 日本教育大学院大学 9月18日(火) 午後3時〜5時 名古屋大学 文系総合館 7階オープンホール
講演要旨
アメリカの大学では、学部教育において大学院生による教育助手(teaching assistant, 「TA」と省略)が重要な役割を果たしている。日本のTAと比べ高度な業務を任され、高額な手当を受給し、訓練・養成制度も一定程度確立されている。TAの養成を将来の大学教員準備と位置づける先駆的な動きもある一方で、各大学の裁量に任されていて課題も山積しているTA制度と訓練・養成制度の現状と課題について、大学院教育改革の視点から事例を通して報告した。
本発表の目的は、主として博士号授与・研究大学におけるTAに対する訓練・養成制度の現状と課題を解明することである。この主題について発表する前提として、TA制度が発展した背景と経緯、そして現在のTA制度の運用実態についてまず概観した。その後、本発表の主題であるTA用の訓練・養成制度に関しては、第一段階のプログラムと第二段階のプログラムに分けて発表した。
第一段階のプログラムは、新任TA用訓練・養成プログラムのことで、全学的にサービスを提供する「教授開発センター」によるものと、TAを直接選考、任用、監督する学部や研究科によるものに大別される。全学的に提供されるサービスは、主として学期初めのオリエンテーション、学期中に実施されるセミナー、実践を改善するための個別指導、そしてハンドブックの作成・配布などによる情報提供である。学問分野ごとに提供されるプログラムは、学期初めに全学的なプログラムの前後または代わりに実施されるオリエンテーション、学期中に開講される学問分野ごとの教授法の科目などに加えて、TAが配属される科目を担当する教授が行うものがある。
第二段階の訓練・養成制度となるのは、「将来の大学教員準備プログラム」(Preparing Future Faculty, 以下「PFF」と省略)である。1990年代初頭から普及し注目されてきたもので、上記のTA用訓練・養成プログラムがTA業務を円滑に遂行するための第一段階の養成プログラムであるのに対して、PFFは第二段階の養成制度として位置づけられる。PFFは、将来大学教授職に就くことをめざす主として博士課程に在籍する大学院生に、教育、研究、サービスからなる大学教授の役割と責任を認識させ、教授職への準備を支援するものでありかなりの成果をあげてきた。
上記のアメリカのTA用訓練・養成制度について実践例を基に概観した後、日本への示唆を述べた。日本の大学におけるTAは依然として有効に活用されていない場合が多いが、その背景として根本的な構造的な問題があることなどを指摘した。
開催案内
第38回客員教授セミナー
アメリカの大学のTA制度と訓練・養成制度の現状と課題
吉良 直 氏(日本教育大学院大学)
日時: 9月18日(火) 午後3時〜5時
場所: 名古屋大学 文系総合館7階オープンホール
講演概要
米国の大学では、学部教育において大学院生による教育助手(TA)が重要な役割を 果たしています。日本のTAと比べ高度な業務を任されていて、高額な給与が支給さ れ、訓練・養成制度も一定程度確立されています。TAの養成を将来の大学教員準備 と位置づける動きもありますが、各大学の裁量に任されていて課題も山積しているT A制度と訓練・養成制度の現状と課題について、大学院教育改革の視点から事例を通 してお話し致します。
お問い合わせ: 夏目 <natsume@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)
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