第76回招聘セミナー フランス高等教育におけるボローニャ・プロセスの展開 教育の質保証を中心に マリー・フランソワーズ・ファブ・ボネ 氏 / 田川 千尋 氏 パリ大学ナンテール校 教授 / パリ大学ナンテール校・京都大学 大学院生 2009年2月9日(月) 16時00分〜18時00分 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール
講演要旨
ヨーロッパでは、2010年における欧州高等教育圏(EHEA)の構築をめざして各国で作業が進められている。1998年にフランスのソルボンヌ大学で行われた4カ国教育大臣の合意から始まったこの構想は、翌年ボローニャ大学での宣言を経て、多くのヨーロッパ諸国を巻き込んで展開されている。EUでは、各国間の教員と学生の移動を促進するプログラムが、すでに1987年に開始された。今日では、プログラムの種類も増え、初等中等教育、職業教育、生涯教育等幅広い領域に拡大しており、研究面での交流も促進されている。EU加盟国だけでなく、ヨーロッパ全域に拡大しており、現在の参加国は46カ国にのぼる。
各国間での学生や研究者の交流を促進するために、国により多様であった学位制度を、学士(3年)・修士(2年)・博士(3年)に統一すべく調整が図られている。また、その前提として共通の単位制度ECTSも創設された。
一方、各国の高等教育の質保証も課題になっている。これは各国の学位を相互に承認すること、そのために水準を均等に保つことが、学生の交流促進に不可欠だからである。EUレベルではヨーロッパ高等教育質保証機構(ENQUA)が設置されているし、各国も自国の高等教育の質保証を行う体制・組織を設置している。
ボローニャ・プロセスへの対応は各国の判断に委ねられており、施策の実施状況は国によって多少の違いがみられる。フランスのような中央集権的な国と、ドイツのように地方分権的な国の間でも差異がみられる。
フランス国内では、学位制度の改革、大学評価制度の改革が進められている。2002年に法令が制定され、従来の多様な学位制度から統一の学位制度への移行が図られた。学位制度の移行を受け入れるかどうかは各大学の裁量とされている。しかし、実際には政府が各大学の運営に関して交わす「4年契約」(教育・研究活動、学位授与、予算等を規定)を通じて、各大学に移行を迫っている。教育の質についても、1990年代初めから、学生による授業評価等の動きが始まっていたが、2000年代に入り全国的に大学評価活動が活発化している。2007年には、従来の評価機関を再編した新体制も整備され、教育の質向上に向けた動きを加速している。
開催案内
第76回招聘セミナー
- 講演題目
- フランス高等教育におけるボローニャ・プロセスの展開
- ―教育の質保証を中心に―
- 講演者
- マリー・フランソワーズ・ファブ・ボネ 氏 (パリ大学ナンテール校 教授)
- 田川 千尋 氏 (パリ大学ナンテール校・京都大学 大学院生)
- 日時
- 2009年2月9日(月) 16時00分〜18時00分
- 場所
- 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール
講演概要
現在、ヨーロッパでは、ボローニャ・プロセスと呼ばれる高等教育改革が進行している。これは、2010年までにヨーロッパ高等教育圏を構築をめざすものである。卒業生の流動性と職業能力を高めること、ヨーロッパの高等教育の競争力を高めることを目的に、各国の高等教育制度を大枠で共通化が進められている。
この動きに対応して、フランス国内では、学位制度の改革、大学教育の質保証のための大学評価制度の改革が行われている。本講演では、これらの改革の概要と問題点について明らかにする。
なお、筆者は、ヨーロッパ各国のカリキュラムの構造や履修単位等を調整するチューニング・プロジェクトの委員を務めている。
- どなたでも参加できます。
- 講演に先立って、田川氏による、フランスの高等教育制度に関する簡単な説明があります。
- 通訳付き。
- お問合せ先
- 夏目 達也
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5696
- ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。