名古屋大学 高等教育研究センター

第104回招聘セミナー 立命館大学で教学改革に挑む −FDの次のステップ− 沖 裕貴 氏 立命館大学教育開発推進機構・教授/機構長補佐 2011年12月2日(金)16:00〜18:00 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

日本のFDの定義は、「教員の教授内容・方法の改善への取組」と規定された大学設置基準の大綱化(1991)以来大きく変化してきた。2008年の設置基準の改正に引き続く中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(以下、学士課程答申)では、単なる研修会の開催・実施から大きく踏み出し、FDの実質化とも言える「日常的な教育改善活動」や自らの教育活動を省察できる「教員団の職能開発」の必要性に言及した。さらにそこには3つのポリシー(DP: Diploma Policy、CP: Curriculum Policy、AP: Admission Policy)の策定・公開と、DPの達成のための日常的、組織的な活動およびその効果検証こそがFDの本質だとする論調も浮かび上がっている。

本講演では、これらのFDの新しい含意への対応として、立命館大学で取り組んでいる教学改革を紹介するとともに、FDの次のステップとして大学経営や教学改革、授業改善、学生支援に対する「学生参画」を取り上げる。

本学の教学改革は、学士課程答申を遡ること1年半、2007年に制定された本学のFDの定義に基づいて実施されている。本学のFDとは「?<What for>建学の精神と教学理念,学部・研究科の教育の目標の実現するための、?<What>すべての日常的な教育改善活動で、?<Who>教員が職員と共同し、学生の参画を得て実施し、?<How>PDCAサイクルで検証するもの」と定義されている。??および?は学士課程答申に見られる「DPの達成のための日常的、組織的な活動とその効果検証」に符合し、?はFDの新たな展開を示唆する「学生参画」を意味する。これらを実現する具体的な活動は、DP・CP・APの一貫性構築の取組や「学びの実態調査」の開発・実施・分析、教育改革総合指標(TERI)の取組に見られるほか、組織の成熟度評価の試行や「教員団の職能開発」に対応する実践的FDプログラムの開発・実施など多岐にわたる。さらに学生自治会(全学協議会、五者懇談会等)や学生FDスタッフとの連携・協力、授業や学生生活を支援するピア・サポーター制度などを包含した「学生参画」による教学改革も、本学では1960年代より伝統として引き継がれ、発展している。

欧州高等教育質保証協会(ENQA)の「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン」には大学のガバナンスに対するステークホルダーとしての学生の関与がうたわれ、アメリカでは学生が教員の授業をコンサルティングするSCOT (Student Consultation on Teaching)の取組が報告されている。本学のFDの定義がFDの実質化に寄与するのみならず、FDの次のステップを示唆するものであるならば大変嬉しく思う。

■ 開催案内

第104回招聘セミナー

講演題目
立命館大学で教学改革に挑む
−FDの次のステップ−
講演者
沖 裕貴 氏
(立命館大学教育開発推進機構・教授/機構長補佐)
日時
2011年12月2日(金)16:00〜18:00
場所
東山キャンパス 文系総合館総合館7Fオープンホール

講演概要

立命館大学で取り組んでいる教学改革を、マクロ・ミドルレベルの「各学部・学科のDPの達成のための活動」からミドルレベルの「日常的な教育改善活動」、さらにはミクロレベルの「教員団の職能開発」に分けて紹介するとともに、FDの次のステップとして、大学経営や教学改革、授業改善、学生支援に対する学生自身の参画の可能性について、立命館大や他大学の事例をもとに検討したい。

お問合せ先
東 望歩
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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