第59回客員教授セミナー Internationalisation of Higher Education in Japan and the UK-similarities and contrasts トリシア・カヴァデール・ジョーンズ 氏 英国ポーツマス大学 言語・地域文化学部 主任講師 2012年2月9日(木)14:00〜16:00 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール
講演要旨
イギリスの大学でも、さまざまな国からやってきた留学生が文化適応に苦労する事例は少なくありません。学習習慣や人間関係のあり方について、彼らは母国と留学先の文化ギャップに戸惑うようです。たとえば東アジア出身の留学生なら、授業中は教員の説明をもっぱら正確にノートに書き留めることが習慣化していることが多いです。この場合、授業中に教員に質問するのを自発的に遠慮する可能性が高いかもしれません。彼らはむやみに発言することによって授業を妨害してはいけないと考えるからです。
こうした文化的な要因は他にもいろいろあります。たとえば、母国が個人主義的な志向の強い社会か、あるいは集団主義を重んじる社会か。男性的な志向の強い社会か、あるいは女性的な志向の強い社会か。文字文化を重んじる社会か、あるいは口頭での議論を重んじる社会かなど。留学生の文化適応をスムーズにするために、こうした文化的差異や適応方法について紹介するオリエンテーションを実施したり、受け入れ国の地域文化に触れる機会を提供するなどの工夫が受け入れ大学に求められます。
留学生向けのオリエンテーションプログラムに関する日英中の大学調査(2010年)によると、留学生アドバイザーと接する機会、生活情報や交流プログラムの提供、学習相談の機会などにおいて、日本の大学は英中に比べて留学生から高い評価を得ていることがわかりました。そして、イギリスの大学では情報をオンラインで入手する方式が一般的なのに対して、日本の大学では重要な情報はできるだけ紙媒体で配布する習慣がより強いという点です。このことは技術の問題というよりも、文化や価値の違いなのかもしれません。
留学生の受け入れを成功させるためには、まず受け入れ大学側は留学生がどのような文化背景のもとで育ってきたのかに関心をもつ必要があります。そして、受け入れ大学の教職員自身がもつ文化的バイアスを自覚し、それを留学生に押し付けるのではなく、互いの多様性を尊重する姿勢が求められます。
受け入れる留学生を増やすことは、大学の国際化の第一歩にすぎません。第二段階としては、カリキュラムの内容にも留学生の経験を反映させたり、国際的な問題を扱うことが必要になるでしょう。いわば「カリキュラムの国際化」が求められます。そして、第三段階として目指すべきは、「教職員の国際化」です。これはどこの国の大学でも困難が伴う課題ですが、教員集団の文化的多様性は大学の組織文化にも大きな変化をもたらす可能性をもっています。
開催案内
第59回客員教授セミナー
- 講演題目
- Internationalisation of Higher Education in Japan and the UK-similarities and contrasts
- 大学国際化の日英比較−類似点と差異
- 講演者
- トリシア・カヴァデール・ジョーンズ 氏
- (英国ポーツマス大学 言語・地域文化学部 主任講師)
- 日時
- 2012年2月9日(木)14:00〜16:00
- 場所
- 東山キャンパス 文系総合館総合館7Fオープンホール
講演概要
このセミナーでは英国と日本で学ぶ外国人留学生の類似点と差異を紹介します。日英両国における外国人留学生が、受け入れ国への社会文化や教育文化にどのように適応しているかに注目します。調査の結果から、留学生支援において日英の大学は類似点が多いと同時に、日本の大学の方がインターネットよりも対面型の支援をより重視する傾向があることがわかりました。
- 本セミナーは英語で行います(日本語による補足説明あり)
- お問合せ先
- 近田 政博
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5692
- ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。