第110回招聘セミナー 「フランスの大学改革と執行部のリーダーシップ」 アラン・クーロン(Alain Coulon) 前・フランス高等教育・研究省副局長 2012年9月11日(火)16:00〜18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7F オープンホール
講演要旨
本講演では、フランス政府が進めている大学教育改革の概要とその若干の特徴について検討した。 2007年に「大学の自由と責任法」(2007年8月10日付け法律、以下、新大学法と略)が制定された。これは、大学の管理・運営に関する各大学の権限の強化・拡大を目指すものである。とくに、学長を中心とする執行部の権限拡大と、それによる機関決定を迅速に行えるような管理・運営方式の実現を企図している。従来認められなかった学長の再任を認め、実質的に長期在任に道を可能にした。全学審議・決定機関である管理評議会と学長の関係緊密化を実現したうえ、同評議会の権限強化を規定した。具体的には、?委員総数を大幅に減少(従来の30〜60名から20〜30名)、?職員・学生代表の委員数を削減、?管理評議会単独での学長選出(従来は他の評議会と合議)、?学部新設、学内財政配分の権限をもつ。
大学は高等教育・研究省との間で中期計画を結ぶ。大学は諸事業について計画を提出し、国は審査を行ったうえで実行を支援すべく5年一括の予算を大学に提供する。教職員の勤務時間の変更、各種手当ての配分、大学の施設の所有権獲得等の権限を大学に付与した。
これらの権限拡大を受け、各大学では教育改革が進められている。とくに、留年・中退率の高さが顕著であった学士課程での学生の学習支援を強化する。?進学する大学・専攻の選定の際の情報提供や相談の強化、?学業困難な学生に対する上級生による学習相談の充実、?就職支援に向けてインターンシップや各種情報提供の充実、等である。
各大学・執行部の権限を強化する一方で、活動の透明性と説明責任の強化も重視されている。その一環として、外部専門機関による会計監査や内部監査の強化、大学の諸活動に関する情報の公開(たとえば、学生の課程修了率等の情報)等である。
同時に、大きな権限を新たに付与された大学執行部が、その職務権限を有効に行使できるように、高等教育・研究省は彼らに対する研修機会の提供を行っており、そのための研修機関(高等国民教育研修学院ESEN)も設置されている。さらに、大学執行部との定期的な会合を行っている。
このように大学改革が急速に進んでいるが、課題は少なくない。たとえば、大学の管理・運営をより高度化・専門化させることである。大学は伝統的に、自己管理(autogestion)と自主性(bénévolat)を運営原理としており、両者間の矛盾をどう調整するかという課題に直面している。
開催案内
第110回招聘セミナー
- 講演題目
- フランスの大学改革と執行部のリーダーシップ
- 講演者
- アラン・クーロン(Alain Coulon)
- (前・フランス高等教育・研究省副局長)
- 日時
- 2012年9月11日(火)16:00〜18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7F オープンホール
講演概要
「欧州高等教育圏」の構築をめざす作業がEUと各国レベルで進められている。フランスでは、高等教育および研究活動でのすぐれた成果により同国の国際競争力を確保すべく、近年、大学改革が矢継ぎ早に実施されてきた。
講師はこの6月まで、サルコジ政権の高等教育・研究省副局長として、この動きを促進してきた。その立場から、同政権が進めてきた改革の概要を紹介するとともに、今後の政策展開、大学と行政機関との関係のあり方、そこにおける大学執行部の役割等について検討する。
- 本講演会はフランス語で行ないます。(通訳付)
- お問合せ先
- 夏目 達也
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5696
- ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。