名古屋大学 高等教育研究センター

第64回客員教授セミナー わが国の専門職養成をめぐる動向と課題 橋本 鉱市 氏 東京大学大学院教育学研究科・教授 2013年1月8日(火)16:30〜18:30 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

専門職の定義は様々であるが、高等教育レベルにおける養成プログラムの特性に着目するなら、市場に対するプログラムの閉鎖性とその期間の長さという2つの軸によって専門職化の度合いを測ることが可能である。昨今ではどの専門(職)教育も養成プログラムが長期化し、また閉鎖化・非弾力化・計画化が目指されてきており、専門職化の成熟度合いを高めつつある。ただし、いずれの専門(職)教育においても、専門的市場のニーズを過不足なく充足させる量(数)の計画的な供給と、専門的業務を遂行するための教育プログラムの質の維持・保証という問題は大きな課題となっている。また現代の専門職養成は、?高等教育(大学などへの入学選抜→専門準備教育→専門教育→実習→卒業試験)→?資格試験(国家試験などによる評価・選抜・認定)→?現場での採用・研修・より高次の資格取得・生涯学習、などといった一連のプロセスが想定・設定されている。そして上記の専門職の量と質は、この3つの段階ごとに様々な方策・方略によるコントロールが可能である。ここで重要となるのは、それに関与するアクターとその戦略・ロジックである。専門職養成に関わるアクターとしては、大別して?国家(政府)セクター、?高等教育セクター、?市場セクターという3者が想定できるが(アクター群の政治権力的な体制=「レジーム」)、近年では国家・政府といったアクターだけではなく、他の様々なアクターがこの養成レジームに関与・介入の度合いを強めてきている。特に外国籍の専門的人材の流入という課題は、従来的な一国的なレジームに国外からの圧力というファクターを含み込まざるを得なくなってきている。

以上のように、近年の専門職養成の動向を俯瞰すると、養成プログラムの「長期化」、カリキュラムの専門的市場との「レリバンス化・標準化」、専門職の量や質に関わる「計画化・管理化」、国内外における「流動化」といった方向性が確認できるが、その背景には専門職市場におけるコンピテンシーについて、その質を保証する養成プログラムを求める現場や顧客からの要求・要請の高まりがあり、またそうしたニーズの的確な把握とそれに従った計画的な供給の必要性などが高まってきていること、またこれと並行してこれまでの福祉国家体制が緩んで市場主義的でグローバルな志向が高まった結果、レジーム内外の様々なアクターが多様な意図と恣意を持ち込み、その複層性が増してきていることなどが指摘できよう。

■ 開催案内

第64回客員教授セミナー

講演題目
わが国の専門職養成をめぐる動向と課題
講演者
橋本 鉱市 氏
(東京大学大学院教育学研究科・教授)
日時
2013年1月8日(火)16:30〜18:30
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

講演概要

現在、わが国の専門職養成は大きな転換期にある。2003年度から新設された「専門職大学院」はそれを象徴しているが、従来の学士課程の専門(職)教育においても改革・改編が進められている。本発表ではそうした動向に触れつつ、わが国の専門職全体を視野に入れた上で、高等教育機関における養成プロセス、量と質のコントロール、政策領域の生成と変容、アクターの布置構造などを整理し、今後の展望と課題について考察してみたい。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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