名古屋大学 高等教育研究センター

第114回招聘セミナー フランスの大学における成人向け継続教育の
現状と課題
ジャン・マリー・フィロック 氏 (Dr. Jean-Marie Filloque) フランス 西ブルターニュ大学副学長 2013年4月23日(火)16:00〜18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

本講演の目的は、フランスの高等教育と継続教育の制度の概略を紹介すること、ヨーロッパ諸国における「大学生涯学習」(University Lifelong Learning)の概念をめぐる定義と議論がいかなるものであるかについて検討することである。

フランスでは、高等教育に関する法律(1984年法および2007年法)により、一般学生向けの初期教育と並んで成人向けの継続教育が、大学の基本的使命の一つに位置づけられてきた。現在、新たな高等教育法の制定に向けて、国会で法案審議が進められているが、そこではこれに代えて「生涯教育」が掲げられている。つまり、初期教育・継続教育という対象者別に教育を区別するのではなく、人生の長い期間にわたり学生の学びを支援する教育のあり方を追求する意図が込められているとみることができる。

継続教育に関しては、法律により、企業は従業員に支払う給与総額の1.6%を従業員の教育訓練に充当することが規定されている。この資金は企業が従業員の職務能力向上のための教育訓練経費に充当するだけでなく、一部は従業員が自身の教育訓練計画に基づいて有給休暇を取得し教育活動を行うことが権利として保障されている。大学は、企業および従業員のニーズに適合する教育訓練を提供することにより、資金を得ている。一般学生から授業料を徴収できないために、成人向け継続教育は大学にとっては重要な資金源になっている。ただし、大学以外にも教育訓練機関は多いため、大学はそれらとの間で競争せざるを得ない。つまり、「市場」の論理に従って教育内容を魅力あるものに改善することが求められている。

多くの成人学生を吸収するために、大学は多様な努力を行っているが、その一つとして「従前学習認定」(Recognition of Prior Learning)の制度がある。これは3年以上の社会経験のある社会人に対して、職業経験・社会経験を通じて獲得した能力を評価し、それが所定の基準に達していると判断される場合には、学位取得に必要な単位の一部または全部を免除するという制度である。つまり、大学での在籍・修学をしなくても、書類審査・面接のみで学位を取得することもできる。

継続教育が求められる社会的背景として、かつてのような長期雇用が困難になり、職業生活全期間を通じて多様な雇用形態での就業を余儀なくされている現実がある。失業と就職を繰り返すケースもあり得る。就職と大学復学を繰り返す事態も予想される。この事態への対応手段として継続教育が重視されるようになっている。

そのため、単なる継続教育ではなく、初期教育と連結した教育を生涯にわたり保障する生涯学習の創造が求められている。その創造を通じて、「生涯にわたり教育を保障する大学」へと大学自身が変わることが必然的に求められている。

■ 開催案内

第114回招聘セミナー

講演題目
フランスの大学における成人向け継続教育の現状と課題
講演者
ジャン・マリー・フィロック 氏 (Dr. Jean-Marie Filloque)
(フランス 西ブルターニュ大学副学長)
日時
2013年4月23日(火)16:00〜18:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

講演概要

フランスでは、成人向け継続教育が研究・初期教育とともに大学の基本的使命とされている。知識社会といわれる状況の中で、生涯にわたる学習の組織化が政策的に重視され、各大学とも地域の成人向けに継続教育を実施している。このような動きは、フランス国内にとどまらず、EU諸国間にも共通するものである。

しかし、政策的に重視されているにもかかわらず、実際には必ずしも活発に展開されているとは言いがたい。それが何故なのか、これまでの大学における継続教育の位置づけ・取組を振り返りつつ、今後の課題について考える。

※このセミナーは英語で行います。日本語通訳はありません。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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