名古屋大学 高等教育研究センター

第116回招聘セミナー 専門学校生の職業世界への
接近・参入過程の検討
植上 一希 氏 福岡大学人文学部・准教授 2013年6月19日(水)16:00〜18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館3F306演習室

■ 講演要旨

日本において、青年の職業的社会化研究に多くの残された課題があると考えている。その主たる原因は、青年の職業的社会化への視角がいわゆる「標準的キャリア形成」に回収されてきたことにあるだろう。とくに、中等後教育・高等教育段階における職業的社会化への焦点の当てられ方は、「就労」や「就活」に限定されがちである。しかし、専門学校生への聞き取り調査等から見えてくるのは、「標準的キャリア形成」に限定されることのない職業的社会化の多様性であり、そして職業的社会化の多様な側面である。したがって、本報告では、専門学校生の職業世界への接近・参入過程の検討を行うことで、従来明らかにされてこなかった、専門学校生の職業的社会化の実態と、そこから提起しうる職業的社会化に関する論点を示すことを目的とした。

報告では、まず、専門学校生の職業世界への接近過程において、彼らが多様な契機にふれて、多様な成長を遂げていることを見た。また職業世界への参入過程においては、定位が困難であること、職業世界の側の条件が重要になることを確認したうえで、しかし、専門学校での学びや経験が、こうした参入過程に伴う多様な困難への対峙を支える要素になっていることも明らかにした。

こうした作業をふまえて、本報告が注目したのが、これらの接近・参入過程のなかで青年たちが社会や自己に関する認識を培っているという点である。彼らは職業を媒介として、社会認識・自己認識の形成を行い、それらと職業世界の実践の往還を繰り返しながら、彼らは次第に社会へと定位していく。こうした職業的社会化の可能性に着目し、かつ現在の社会化の議論やトランジションの議論の問題性をふまえるならば、職業を通した社会化という観点から職業世界への接近・参入過程を検討する重要性は提起しえよう。とくに、中等後教育や高等教育における教育的条件はこうした観点からなされる必要があり、その際重視されるべきは、接近・参入の対象となる職業世界や社会現実と自分自身との関係性をその変化も含めて、主体がリアルに認識できたり、意味づけすることができたりする契機を、いかに主体に沿った形で保障することができるか、という点となるだろう。このような観点から、専門学校研究のみならず、大学研究やより広い枠での青年期教育研究がなされるべきという方向性を最後に提示した。

■ 開催案内

第116回招聘セミナー

講演題目
専門学校生の職業世界への接近・参入過程の検討
講演者
植上 一希 氏
(福岡大学人文学部・准教授)
日時
2013年6月19日(水)16:00〜18:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館3F306演習室

講演概要

1975年度の制度化以降、主に新規高卒者の進学先(中等後教育機関)として専門学校は発展してきた。今では、新規高卒者の約17%が専門学校に進学し、主に2〜3年の修業期間を経て職業世界へと参入している(学生数は約58万人)。本報告では、今まであまりスポットが当てられてこなかった、専門学校生の学びについて、とくに彼らの職業世界への接近・参入過程に着目する視点から、その実態と意義・課題を論じたい。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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