第66回客員教授セミナー
大学教育における学習評価の構図
−パフォーマンス評価を中心に−
松下 佳代 氏
京都大学・高等教育研究開発推進センター・教授
2013年7月29日(月)16:00〜18:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール
講演要旨
近年、大学教育では、〈教員が何を教えたか〉から〈学生が何を学んだのか〉へ、関心の焦点がシフトしており、そのシフトは、学習成果の評価において多様なアプローチを生み出している。現在、大学教育で行われている学習評価は、〈学習成果を、学生の学習についての自己報告によって間接的に評価するのか、それとも、学生の知識や能力の表出によって直接的に評価するのか〉、〈心理測定学的パラダイムに立つのか、それとも、オルターナティヴ・アセスメントのパラダイムに立つのか〉という2つの軸によって、4つのタイプに分けることができる。本セミナーでは、特にパフォーマンス評価を取り上げて、現在の学習評価の動向と課題を浮き彫りにすることを試みた。
パフォーマンス評価とは、学習者の実演や作品(=パフォーマンス)を通じて学習を直接に評価する方法のことであり、ふつう、能力(コンピテンス)を可視化するためにパフォーマンス課題を用い、そのパフォーマンスを解釈し評価するためにルーブリックを用いる。
現在、大学教育において取り組まれているパフォーマンス評価には、2つのパラダイムを反映して2つの方向性がみられる。一つは、パフォーマンス評価型の標準テストであり、もう一つは、標準化によらないパフォーマンス評価である。前者の例としては、OECD-AHELOの汎用的技能の評価で採用されたCLA(Collegiate Learning Assessment)などがあり、後者の例としては、アルバーノ・カレッジの実践やAAC&U(アメリカ大学・カレッジ協会)のVALUEプロジェクトなどを上げることができる。私自身は、現在、後者の立場から、新潟大学歯学部をはじめいくつかのフィールドにおいて、レポート評価やPBL(Problem-Based Learning)などの領域で、パフォーマンス課題やルーブリックの共同開発を行っている。
これらの研究から明らかになったのは、学習評価はデザイン次第で、〈学習の評価〉にとどまらず〈学習としての評価〉にもなりうるということである。〈学習としての評価〉とは、学生自身が評価主体となるとともに、学習経験としての豊かさを備えた評価方法のことである。パフォーマンス評価においては、評価負担の大きさ(実行可能性の低さ)が常に問題となるが、評価を通じて、学生の学びや成長を教員が実感できれば、評価負担の問題が軽減されるばかりでなく、評価はさらなる教育改善への原動力にもなる。このように、評価の開発は、大学・部局の教育や学習全体の改善・向上に大きく関わっているといえる。
開催案内
第66回客員教授セミナー
- 講演題目
- 大学教育における学習評価の構図−パフォーマンス評価を中心に−
- 講演者
- 松下 佳代 氏
- (京都大学・高等教育研究開発推進センター・教授)
- 日時
- 2013年7月29日(月)16:00〜18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール
講演概要
現在行われている学習評価は、<直接評価か、間接評価か>、<心理測定学的パラダイムによるのか、オルターナティヴ・アセスメントのパラダイムによるのか>という 2つの軸によって、4つのタイプに分けることができる。本セミナーでは、パフォーマンス評価(学習者の実演や作品を通じて学習を直接に評価する方法)を中心に、評価タイプ間の補完や対立などの関係を描き出すことで、現在の学習評価の動向と課題を浮き彫りにする。
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5696
- ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。