第123回招聘セミナー
教育改善に資する
国際的な学習成果アセスメントに向けて
-TUNING-AHELOを中心に-
深堀 聡子 氏
国立教育政策研究所・高等教育研究部・総括研究官
2014年4月24日(木)16:00~18:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール
講演要旨
OECDによるAHELO(高等教育における学習成果調査)とは、大学教育の成果を世界共通のテストで測定することを目指す国際事業であり、2012年までに実施されたのは、その実施可能性(フィージビリティ)を検証するための調査研究である。国際コンソーシアムによって作成された3種類(一般的技能、経済学、工学)のテスト問題と背景情報調査が、17か国248大学で試行された。その結果、OECDはAHELOが実施可能と結論付け、本調査への移行を呼びかけている。本セミナーでは、この取組から何を学び、どのような課題が残されているか整理したうえで、大学の教育改善に資する国際的な学習成果アセスメントの在り方について議論を深めた。
AHELOフィージビリティ・スタディは、そのプロセスに参加したこと自体に重要な意義があった。日本が参加した工学分野では、学生に習得を期待する中核的な知識・技能・態度(コンピテンス枠組)をTUNINGの方法を用いて定義したが、その議論に参画することで日本にとっても整合性の高い枠組となるよう調整することができた。また、テスト問題・採点ルーブリックを作成する作業では抽象的なコンピテンス枠組を達成可能で測定可能な学習成果に具体化するプロセスを、採点作業では期待する学習成果の観点や水準について共通理解を構築するプロセスを経験することができた。国際的な学習成果アセスメントは、コンピテンス枠組や学習成果に係る共通理解を醸成していくうえで、極めて有効なアプローチといえる。したがって、こうしたプロセスをより多くの大学教員が経験できるようにするとともに、テスト問題の公開性を確保し、教育改善に資する教育情報をフィードバックする仕組みを確立することが、残された課題といえよう。
こうした課題意識から、国立教育政策研究所では豪州やカナダの研究機関と共同で、工学分野における「テスト問題バンク」の構築に着手した。大学教員による会員制サイトで、会員が共通のコンピテンス枠組に基づいてテスト問題を作成して共有し、利用したテスト問題については解答の採点結果を事務局に返却するものである。事務局は、各学生グループについて、国内的・国際的にベンチマークしたコンピテンス・プロフィール、および学生や大学の背景情報とテスト得点の関係に係る情報をフィードバックすることを目指す。
ディスカッションでは、こうしたテスト問題バンクの有効性、実用性、持続可能性を検討し、単純なランキングに陥らないためのフィードバックの在り方や他の専門分野への応用可能性等について議論を深めた。
開催案内
第123回招聘セミナー
- 講演題目
- 教育改善に資する国際的な学習成果アセスメントに向けて
-TUNING-AHELOを中心に- - 講演者
- 深堀 聡子 氏
- (国立教育政策研究所・高等教育研究部・総括研究官)
- 日時
- 2014年4月24日(木)16:00~18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール
講演概要
OECDによるAHELO(高等教育における学習成果調査)とは、大学教育の成果を世界共通のテストで測定することを目指す国際事業であり、2012年までに実施されたのは、その実施可能性(フィージビリティ)を検証するための調査研究である。日本が参加した工学分野では、Tuningの方法を用いてコンピテンス枠組を開発し、工学専門家の参画のもとにテスト問題の開発・実施・採点を行った。その経験から何を学び、今後どのような取組が求められるのかについて報告し、教育改善に資する国際的な学習成果アセスメントの在り方について議論する機会としたい。
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5696
- ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。