名古屋大学 高等教育研究センター

第126回招聘セミナー 社会人院生の学びをいかに支援するか 姉崎 洋一 氏 北海道大学大学院教育学研究院特任教授・名誉教授 2014年7月31日(木)16:00~18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

「後期近代」あるいは、「グローバル時代」といわれる社会的変動期にあって、従来型の社会システムや慣行は、その有用性を問われている。人々は、この社会を生き抜いていく上で、より高次な学びを求め、それは、社会人大学院生の拡大にも及んできている。しかし、そのニーズに十分な大学院教育が提供されているとはいえない。本セミナーでは、その問題性と課題を、調査を踏まえつつ明らかにし、社会人院生への学びの支援のあり方について議論を深めた。

まず、現代社会における「知」のあり方の変容から、社会人院生が拡大してきた背景を整理した。「知」の再生産の場の変遷、純粋「知」と生活「知」の乖離、「知」のモード論から分かるように、現代社会においては実践的で応用可能かつ課題解決志向の「知」に対するニーズが高まっている。このような「知」の変容は、社会人院生の増加の要因であるとともに、既存の大学院での学問的な「知」の捉え直しを迫る契機にもなっている。

「知」の変容と社会人院生の増加は、大学院での学習支援に対しても変化を求める。欧米諸国における社会人院生の学習支援をみると、省察的学習、状況的学習、正統的周辺参加論など近年の成人学習論の知見にもとづく実践が大学院教育に影響を与えている。特に、教員、看護師、医師などの対人援助専門職の育成において、成人継続教育実践の知見が組み込まれている。欧米諸国の実践は、日本における社会人院生に対する処遇、カリキュラム構成、学習支援方法の革新の必要性を示唆している。

それでは、日本における社会人院生の学びの実態はいかなるものか。社会人院生の大学院教育への期待と大学院教育実態とのズレに関する先行研究並びにアンケートの調査結果から、社会人院生への学習支援のあり方における問題を整理した。一つは、社会人院生のニーズに対応していない点である。社会人院生は、大学院教育に対して実際的知見の深化と研究にもとづく視野の拡大という二つの期待を持っている。しかし、大学院教育は社会人院生の視野を拡げる場としての機能を果たしている一方で、実際的知見を深化させる場として必ずしも機能していない。また、カリキュラムと研究指導が研究型の一般院生を想定したものとなっており、社会人院生のニーズに対応していない。もう一つは、修了後のキャリア支援が十分に考えられていない点である。大学院修了後に、知見を職場や社会に対して還元するルートが制度的に整えられていない。

以上の問題性と課題を明らかにしたうえで、社会人院生の学びの支援のあり方について意見交換を行った。ディスカッションでは、社会人院生の特徴を一義的に定式化することの難しさ、反省的実践家の育成に向けた学びの支援のあり方、これまでの大学院教育の問題点、教員と社会人院生の大学教員教育に対する認識のズレなどについて議論を深めた。さらに、大学院教育の今後のあり方や課題と関連して、社会人院生の学びの支援方策に関して議論を深めることができた。

■ 開催案内

第126回招聘セミナー

講演題目
社会人院生の学びをいかに支援するか
講演者
姉崎 洋一 氏
(北海道大学大学院教育学研究院特任教授・名誉教授)
日時
2014年7月31日(木) 16:00~18:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

講演概要

「後期近代」あるいは、「グローバル時代」といわれる社会的変動期にあって、従来型の社会システムや慣行は、その有用性を問われています。人々は、この社会を生き抜いていく上で、より高次な学びを求め、それは、社会人大学院生の拡大にも及んできています。しかし、そのニーズに十分な大学院教育が提供されているとはいえません。セミナーでは、その問題性と課題を、調査を踏まえつつ話題提供したいと考えています。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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