第77回客員教授セミナー 大学のガバナンスと教育改革 吉武 博通 氏 筑波大学大学院ビジネス科学研究科・教授 2015年11月19日(木)16:00~18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第77回客員教授セミナー
- 講演題目
- 大学のガバナンスと教育改革
- 講演者
- 吉武 博通 氏
- (筑波大学大学院ビジネス科学研究科・教授)
- 日時
- 2015年11月19日(木)16:00~18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
大学においてガバナンスの確立が求められる背景を概観した上で、ここでいう「ガバナンス」が何を意味するのかを企業統治との比較などを通して考察する。また、大学が教育改革を進める上で組織上如何なる問題があるかについて、大学の組織特性を踏まえて整理した上で、教育改革が実効性を高めるためのガバナンスの在り方について、マネジメントやリーダーシップとの関係も明らかにしつつ検討する。
講演要旨
グローバル化への対応、イノベーションの創出、地方創生など大学への期待が高まる一方で、大学は社会の変化に遅れており、改革を加速する必要があるとの厳しい見方も根強い。そのことがガバナンス改革を促し、教授会の役割の明確化などを中心とする2015年4月施行の学校教育法等の改正につながる。特に強調されるのは学長のリーダーシップである。
「ガバナンス」という用語が中央教育審議会答申などに正式に登場するのはごく最近のことであるが、「大学の制度、組織が時代おくれであることが最も深刻な問題」(永井道雄『大学の可能性』中央公論社,1969)との認識は今に始まったものではない。さらに遡る1963年1月の中央教育審議会『大学教育の改善について(答申)』において「学長は、大学の管理運営の総括的な責任者である。したがって、大学全体の管理運営に関しては、責任をもって処理すべきものである。」との指摘もなされている。
永井(1969)は大学紛争の時代に書かれたものであり、大学を取り巻く環境はその時々で異なるが、管理運営の在り方が半世紀にわたり問われ続けてきたことは、この問題が大学改革の核心部分であることを象徴している。
大学は、個々に自立した教員を構成員とする「共同体的組織」として発展し、それを補完する形で「経営体的組織」を発達させてきたという経緯がある。大学の機能が高度化・複雑化し、後者の重要性が増しつつある中で、二つの要素を組み合わせて機関として最適な組織設計を行うための解を見出せていない点に、改革を難しくしてきた根本原因があると考えられる。
特に、大学教育の改革にあたっては、教員個々の興味・関心に基礎を置く研究とそれを背景にした教育というこれまでの考え方を重視しながら、同時に、大学の理念や目標を3つのポリシーに展開し、カリキュラムを構造化した上で、教員個々の教育改善を促すという組織的取り組みを強化していく必要がある。この二つの要請をどう両立させるかに教育改革の成否がかかっている。
つまり、ガバナンス改革を大学の教育機能の高度化につなげるためには、学長のリーダーシップの強化とともに、「組織設計」が極めて重要な課題となる。また、組織を機能させるのは人材であり、教員と職員が様々な場面でリーダーシップを発揮し、組織をより良き方向に変えていくことが重要である。リーダーシップを育む組織文化が根付いてこそ、大学を持続的発展の軌道にのせることができる。そう考えるべきではなかろうか。
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
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