第135回招聘セミナー
多文化間共修の挑戦
-多様な文化背景の大学生のいる授業で、
どのようにして学び合いを促進するか?-
堀江 未来 氏
立命館大学国際教育推進機構・准教授
2016年5月25日(水)15:00~17:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第135回招聘セミナー
- 講演題目
- 多文化間共修の挑戦
-多様な文化背景の大学生のいる授業で、どのようにして学び合いを促進するか?- - 講演者
- 堀江 未来 氏
- (立命館大学国際教育推進機構・准教授)
- 日時
- 2016年5月25日(水)15:00~17:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
グローバル化が進み、大学の授業を受講する学生の背景も多様化が進んでいる。留学生をはじめ、多様な文化、言語背景を持つ学生たちが日本の大学を選び、学んでいる。このような状況で、学生たちの学び合いを促進するためにどのような工夫ができるだろうか。立命館大学の堀江氏に、多文化間共修の模擬授業、理論・実践について紹介いただき、セミナー参加者と共に多文化間共修の教授法について検討する。
特に、英語による授業の担当者で、協同学習を取りいれた授業方法に関心のある教員に参加を勧めたい。
講演要旨
本セミナーにおいては、「多文化間共修」を「文化的背景が多様な学生によって構成される学びのコミュニティにおいて、その文化的多様性を学習リソースとして捉えつつ、メンバーが相互交流を通して学び合う仕組み」と定義し、それを促進するいくつかの理論的枠組みを紹介するとともに、参加者間のディスカッションを通して現場への応用方法について検討した。以下、内容を3つに分けて紹介する。
1.模擬授業
堀江が実際に立命館大学で担当している授業「Cross-cultural encounters」(日英併用)を想定し、初回に行うグループ・アクティビティを模擬授業として紹介した。四人組で自己紹介をした上で、お互いに質問を繰り返し、メンバー間で共通する3つの特徴を見つけることを目指す。協働学習を通じて、相手の文化的背景、とりわけ「目に見えない部分」を掘り起こすコミュニケーションの基本は「(適切な)質問をすること」であり、このアクティビティはそのスキル獲得の第一歩である。
2.多文化間共修に関する政策動向
古くは、アメリカにおいては1970年代、「外国人留学生は教室の宝」とする指摘があった。ヨーロッパにおいては1990年代以降、国際教育関係者の間では、留学しない学生に対して国際教育機会を与える課題が強く意識され、Internationalization at Homeというキーワードのもと、議論が積み重ねられてきた。オーストラリアにおいても、学生全体の約25%を占める外国人留学生が国内学生と十分交流できておらず、また教育現場において活用されていないという問題意識から、「Finding Common Grounds」プロジェクトが立ち上がった。日本の大学の国際化政策においては、これまでは外国人留学生の受け入れや派遣留学生の送り出しが中心となってきたが、現行のスーパーグローバル大学構想においては、あらゆる学生に対する国際教育機会の提供が推奨されており、多文化間共修はその一つの手法として重要性が認められつつある。
3.多文化間共修を促す仕組み:理論的枠組みの紹介
多文化間共修を通しての学びについては様々な目的の設定が可能であるが、今回は、学習者が自文化中心主義を超え、文化的相対主義の姿勢を獲得することを目標とおき、その獲得プロセスを発達段階として説明する理論的枠組みIntercultural Development Continuum (Hammer 2012)を紹介し、現場での適用可能性について検討した。また、そのプロセスを効果的に促進する学習環境を考える上で、接触仮説理論(Allport 1954)と経験学習理論(Kolb 1984)を紹介した。最後に、小グループでこれら理論枠組みを実践する上での疑問点を指摘しあい、グループ内で解決しなかった疑問点について全体で話し合った。
国内外の高等教育機関において、多文化間共修を促進するための取り組みがなされている。現在の課題は、実践から得られた知見を広く収集しながら、様々な授業の文脈(分野・言語環境・専門性など)に応用可能ないくつかの方法論を確立していくことである。
- 申し込み方法
- 本セミナーへのご参加を希望される方はセミナー参加申込フォームから必要事項をご入力下さい。その際にご入力頂いたメールアドレスへの返信をもちまして、申込完了となります。
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-5696
- 本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。