第83回客員教授セミナー 学生の学びを促進する大学教育の組織的実践 小方 直幸 氏 東京大学大学院教育学研究科・教授 2017年3月9日(木)16:00~18:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第83回客員教授セミナー
- 講演題目
- 学生の学びを促進する大学教育の組織的実践
- 講演者
- 小方 直幸 氏
- (東京大学大学院教育学研究科・教授)
- 日時
- 2017年3月9日(木)16:00~18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
1990年代以降の大学教育を俯瞰すると、大学教育への批判と期待の両面が高まり、大学は否応なく教育改革の渦に巻き込まれることとなった。 その過程で重視されたのは、卒業後のキャリアとそれを支える汎用的スキルという視点で、それを教育の組織的実践に基づいて担保し、かつ学習成果として測定・提示するよう要求されている。 こうした4半世紀の大学教育をめぐる動向を、学生、教員、能力という視点から、批判的に顧みる。
講演要旨
学生の卒業後のキャリアとの関係を視野に入れると、知識とスキルの軸と、文脈依存と転移という軸の2軸から、伝統的な大学教育のモデルと現代的な大学教育のモデルは整理される。後者に特徴的なのは、汎用的スキルを中核に据えた、スキル並びにその転移性を重視する点で、コンピテンスモデルとでもいい得るものである。このモデルは、学生において明確な将来展望や好奇心に基づく自立的な学びが困難となる中で、ある種必然的に登場したものと言え、教員による教育目標や学習成果の共有に基づく実践を要求するものである。ただし、学問的知識とスキルを分離する力学も内包しており、個々の教員の自己責任に基づく教育に揺らぎをもたらし、また学問に基づいた大学教育の本来のあり方からすると課題も少なくない。加えて、教員の授業観を教育の射程と授業の調整という2軸で捉えた場合、授業関連時間に多くを投入し教員間の交流が活発なのは教育の射程が広い教員層、昨今の教育改革に親和的なのは教員間の授業調整を必要と考える教員層だが、必ずしもこれらの層に属する教員は多いとはいえない。 1990年以降の4半世紀を振り返ると、「研究から教育へ」、そして「教育から学習へ」という流れが大学教育をめぐる議論の主流であったといってよい。しかしながら、大学とは何かという大学本来のあり方から、これまでの流れを一旦相対化してみる作業が欠かせない。その際の1つの軸となり得るのは、大学が扱う知とは何かをスキルと分離させずに再考し、かつそれを、学生が欲するものという視点ではなく、職業準備という狭い領域に留まらない学生に本質的に必要なものという視点から省察する、学習を基点とした学問自体の鍛え直し、即ち「学習から研究へ」という志向性である。
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