第141回招聘セミナー
第2回「アドミッション担当教職員支援セミナー」
高大接続改革に何が欠けているのか
荒井 克弘 氏
東北大学名誉教授・大学入試センター名誉教授
2017年7月21日(金)15:00~17:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール
開催案内
第141回招聘セミナー
第2回「アドミッション担当教職員支援セミナー」
- 講演題目
- 高大接続改革に何が欠けているのか
- 講演者
- 荒井 克弘 氏
(東北大学名誉教授・大学入試センター名誉教授) - 日時
- 2017年7月21日(金)15:00~17:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール
講演概要
大学入試と云わず、敢えて高大接続と表現して関係者が訴えたかったものは何であるのか。「受験競争の緩和による高校教育の空洞化」なのか、「グローバル化する世界で必要とされる資質・能力の育成」なのか。だが、依然として改革の進捗は滞り、迷走を続けている。
本報告では、70年目を迎えた戦後学制のスタートに立ち戻り、その出発点に仕掛けられた高大接続の不連続に焦点をあててみたい。ヒントがそこにあると思われるからである。
講演要旨
学校教育法によれば小学校から中学、高校までの教育課程は「積み上げ」の教育である。他方、大学の目的は「学術の中心として広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し・・」となっており、研究を軸とする教育からなっている。高大接続問題が注目されるのは、高校と大学が異なるタイプの教育であり、両者を接続することが容易ではないからである。
諸外国の事例をみてみよう。英国ではパブリックスクールのような進学型中等教育には「シックスフォーム」という大学進学課程が置かれ、ドイツやフランスでも進学型中等教育の後期には同種の内容をもつ教育課程が存在する。例えばドイツのギムナジュームでは修了までの2年間の成績がアビトューア取得の過半の成績(900点満点の600点)を占める。合格点は300点以上だから試験の負担はけっして重くはない。フランスのバカロレア資格にしても、リセの第2学年から試験がはじまり第3学年まで続く。20点満点の10点以上を取れば合格となる。全国共通試験の体裁だが、筆記試験、口述試験も校内で実施され、期末試験に近い雰囲気がある。中等教育が伝統的に複線型であり、職業教育と普通教育が分かれており、後者が大学進学へのルートとなる。この制度の背景も高大接続にとって重要である。
他方、アメリカは日本と同じ単線型の学校体系であり、高校を卒業すれば誰もが大学へ進学できる。だが、日本と違って地方分権制が強く、学校も修学年限も多様であり、全米に共通するような標準教育課程は存在しない。SATやACTが大学進学の共通試験として通用するのは、これらのテストが適性型のテストであり基礎レベルの学力テストだからである。このために、アメリカでは学士課程が高大接続を担う。それが一般教育であり教養教育である。4年間の学士課程を終えて、大学院で専門教育を学ぶ。これがアメリカ流である。
翻って日本を考えてみよう。戦前・戦時期には旧制高校や大学予備門、大学予科など、中等教育と大学教育(専門教育)を仲介する教育課程が存在した。戦後になると、これらの接続課程が抜け落ち、ただ新制高校と新制大学が直接に接続する仕組みだけに変わった。両者を繋ぐのは入学試験のみである。一発勝負、一点刻みに対する受験者のストレスの根源はここにある。共通試験を複数回実施しようが、試験成績を段階別表示にしようが、この問題は解決されない。記述試験と英語四技能の実施方針が公表されたが、今回の改革が迷走のあげく、羊頭狗肉に陥ったことを関係者は恥じるべきではないか。
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