第88回客員教授セミナー
アクティブラーニングの質の向上
-認知学習論の視点から-
森 朋子 氏
関西大学教育推進部・教授
2017年12月7日(木)16:00~18:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第88回客員教授セミナー
- 講演題目
- アクティブラーニングの質の向上
-認知学習論の視点から- - 講演者
- 森 朋子 氏
(関西大学教育推進部・教授) - 日時
- 2017年12月7日(木)16:00~18:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
日本の教育政策は、質転換答申(2012)、高大接続答申(2014)、学習指導要領改訂(2017)をもって、一体化改革を推し進めている。「新しい能力」(松下 2013)を獲得し、予測不可能な社会で生徒や学生が生き抜くためには、アクティブラーニングの導入にとどまらず、その質の向上が必須である。本セミナーでは、認知学習論の観点から学生・生徒の学びの構造とプロセスを解明することの意義と、その知見を活かした授業デザイン原則について報告する。
講演要旨
質転換答申以降、大学教育改革の柱であったアクティブラーニングは、2017年3月に改訂された新学習指導要領で示された「主体的・対話的で深い学び」によって、「学力の3要素」とともに、小学校から大学までの一体的な改革の背骨となっている。その波は、これまで高校と大学における知識や資質・能力の接続を分断してきた大学入試改革にもようやく向かっている。
このように教育政策によってアクティブラーニングが推奨される中、すでに導入した教育現場では課題も浮き彫りになっている。森(2017)では、例として、グループワークの不活性化、内化(知識のインプット)の不足などが挙げられる。改革を形骸化させないためにも、導入の初期段階から、アクティブラーニングの質向上を目指す次のステップにステージを進めなくてはならないだろう。
そのために本セミナーでは、第1に認知学習論の観点からアクティブラーニングをとらえ、学習の質向上を目指すデザインについて報告した。報告者はアクティブラーニング型の授業を研究・参観する中で、その活動の要素を以下の3点で考えている。1つの授業の中にこの3点がいろいろな割合で交じり合っており、多くは不可分である。特に③は、①と②の多くの実践の共通要素が③として原則化されることを前提にしている。
① 教え合い・学び合い要素
② 教師による発問要素
③ 認知学習論的デザイン要素
本セミナーは特に③についてすでに原則化している4つの特徴を挙げる。原則に基づくデザインは、教師の資質や環境にあまり影響を受けず、多くの教育現場で同様の効果を期待できる可能性がある知見である。
a) 「わかったつもり」を「わかった」に導く内化-外化-内化の往還
b) 学習から理解が始まる事前学習
c) 個人の「わかった」に導く個人-グループ-個人の活動
d) ラベリングを乗り越えるクラスづくり(*特に高校)
また第2に、中等教育では大学と違う社会文化的背景において、独自の課題も見え隠れしている。ラベリング問題である。アクティブラーニングが「主体的・対話的」であるからこそ、そこに〈学習の社会化〉が高まるとも言える(溝上 2017)。このような効果の影で、〈学習の社会化〉は、これまで教師が統制し、効率化された授業に、授業外で生じた社会の諸問題を持ち込んでいる。
授業が社会されるに伴う諸問題を、高大にかかわらず明らかにし、それらを認知学習論を基盤としたデザインで緩和していくことで、アクティブラーニングの質向上を今後も果たしていく必要性を強く感じている。
- 申し込み方法
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- お問合せ先
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