第171回招聘セミナー
大学職員の専門性をいかに育むか
-図書館業務の経験から-
村西 明日香 氏
名古屋大学東山地区図書課工学図書係 図書系主任
2019年6月25日(火)18:30-20:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第171回招聘セミナー
- 講演題目
- 大学職員の専門性をいかに育むか
-図書館業務の経験から- - 講演者
- 村西 明日香 氏
(名古屋大学東山地区図書課工学図書係 図書系主任) - 日時
- 2019年6月25日(火)18:30-20:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
「図書館で働いてる?貸出と返却の、バーコードぴってやる人でしょ?それ以外の時間は何してるの?本読んでるの?」と聞かれた経験がある図書館職員は、きっと少なくない。このようなイメージのせいなのか、図書館職員不要論はあちこちで聞かれ、不安や焦りを覚える図書館職員も、やはり少なくないだろう。
実際の図書館職員の仕事は実に多岐にわたり、大学の教育・研究を直接的に支えるための重要な役割を担っているし、担うべきである。さらにそのような図書館職員となるために必要な専門性とは?と考えてみると、それは図書館職員としての専門性のみならず、 大学職員としての専門性なのではと感じる。
本セミナーでは、自身が経験した二つの図書館職員としての業務
レーション
講演要旨
一般的に、図書館の職員=貸出と返却をする人という印象、そしてそれ以外の業務がイメージされにくいせいか、図書職員は本当に必要なのかと問われることがある。しかし実際の図書職員の業務は大学の教育・研究を支える重要な役割であるし、さらにここ数年特に、より専門性の高い業務・役割が求められるようになってきている。この傾向は図書職員に限らず、大学職員全般に言えることだろう。
以前の配属先である経済学図書室で、学部3・4年生(ゼミ)に対し職員が講師となって実施する講習会「経済産業情報の探し方」を立ち上げた。文献、統計、企業・業界情報等の探し方について、実習を交えつつ90分の授業を行うものである。ここで身に付けることを目標としている情報リテラシー能力は、国、大学、及び学部から(経済)学部生が身に付けるべき能力として明記されているものであり、教員や学生も身に付けさせたい・身に付けたいと思いつつ、どうすればよいかわからないと困っていたことでもあった。こうしたニーズを把握した上で実施した結果、教員や学生から非常に好意的に受け止められ、図書室の資料や職員が有効活用されるようになり、情報リテラシー能力の向上に貢献することができた。この講習会は「学生の学びを支えるために/教員に研究に専念してもらうために、組織は/自分は何ができるのか」を主体的に考えた結果として生まれたものであり、こうした視点を持って今ある業務を変えていく/新たに創造するといった能力は、大学職員の専門性のひとつと考えられる。
同様の視点で、教育・研究の基盤となる蔵書管理の課題について検討した経験もある。蔵書は増え続けるが保存スペースは有限であり、本学も書架の狭隘化が課題となっている。書庫を増設できればよいがそれは簡単ではないし、また増設できたとしてもそれも一時的な解決策に過ぎない。そこで、北米で既に実例のある「分散型シェアードプリント」(各図書館がそれぞれ担当する資料を決め、それを各図書館で責任をもって保存する。担当しない資料については廃棄することが可能になる。)に注目し、東海北陸地区の国立大学で実施した場合のシミュレーションを行った。その結果、保存責任が割り当てられる資料の量を平等に分散させることはできたが、その資料の質(利用頻度、重要性、歴史的価値など)を考慮しない割り当ては受け入れ難いのではないかという新たな課題が浮き彫りとなった。このように、課題整理、情報収集・分析を行い、業務課題の解決策を模索する能力も、大学職員の専門性のひとつとして求められる。また、シェアードプリントの事例のように、複数の機関での問題解決を目指すような課題も今後増えることが予測されるが、このような課題は関係する機関全体を見渡した俯瞰的な視点で考える必要があり、これは分野の専門家である教員ではなく職員こそが担える部分ではないだろうか。
最後に、職員の専門性を高めるために何が必要なのかを考えてみたい。まず、日常業務+αの業務課題に対応できる余白を持てることが必要だろう。そのためには、日常業務をより合理化する工夫を常に考えたい。また、専門性を高めるような新たなチャレンジを後押しする、ポジティブな空気が職場にあることも欠かせない。さらに、それが組織的にバックアップできるのならもっとよい。そして何よりも、「大学をよくしたい」と思えることこそが専門性を高める原動力となるだろう。そうした思いが持てるような職場を作るのは、職員ひとりひとりである。
- 申し込み方法
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