第96回客員教授セミナー
フランスにおける大学教員向け
教授能力向上の研修の現状と課題
Nathalie Younès 氏
フランス クレルモン・オーベルニュ大学教育高等学院 准教授
2019年7月18日(木)15:00-17:00
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
開催案内
第96回客員教授セミナー
- 講演題目
- フランスにおける大学教員向け教授能力向上の研修の現状と課題
- 講演者
- Nathalie Younès 氏
(フランス クレルモン・オーベルニュ大学教育高等学院 准教授) - 日時
- 2019年7月18日(木)15:00-17:00
- 場所
- 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ
講演概要
フランスでは、2017年5月の政令により、新任の大学教員に対して教授能力形成のための研修が義務化された。背景には、大学は入学者選抜なしで入学できるため学生の学力が多様化していること、とくに低学年で留年・退学をする学生が多いこと等の事情がある。教員の教授能力向上で事態打開を企図している。教育省はMOOCによる研修プログラムの提供を予定しており、現在その作業が進行中である。本セミナーでは、2017-18年にMOOCユーザーを対象とする調査結果をもとに、プログラム作成の過程を明らかにする。
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使用言語:英語
講演要旨
本セミナーでは、フランスの大学において新任大学教員に対して教授能力形成のための研修が義務化された問題を取り上げた。
フランスでは、大学教員の採用は二段階で行われる。第一段階は全国大学審議会と呼ばれる政府機関による大学教員としての適格審査である。これは、同審議会内に専攻領域ごとに設置される専門委員会が行う審査である。これに合格すると適格者名簿に記載される。第二段階は、各大学が行う募集と審査であり、適格者名簿記載者が応募できる。この二段階とも、従来は研究能力に重点が置かれてきた。そのため、大学教員養成を視野に入れた大学院教育でも、研究能力形成の教育が大部分を占め、教授能力形成のための時間はきわめて短い。
しかし、とくに2000年代以降、状況は大きく変化している。その背景には、大学で学生数が増加していることがある。大学は他機関と異なり入学者選抜なしで入学できる。そのため学生数の増加とともに学生の学力多様化が進んでおり、とくに低学年では留年・退学をする学生が多い。国は高等教育修了証取得者を同一年齢層の50%にする目標を掲げているため、学生の学習を支援し修了まで導くことが大学教員に要請されている。
そのため、研究能力だけでなく、教育能力も重視されるようになっている。今回の教授能力研修の義務化(FD義務化)は、2018年度から、新任の准教授に対して適用される。大学教員の年間の担当授業時間数は192時間であるが、そのうち32時間を免除して、研修に当てることになった。研修はMOOCと各大学が提供する支援で構成される。前者は「学生を活動的にする」「学生の動機を高める」等5テーマのコンテンツがある。
MOOC受講者を対象のアンケートでは、ほとんどが「大変満足」「満足」と回答しているが、受講が教員の教授能力の形成やひいては授業改善に結びつくかどうかについては、聞き取り調査等の質的な調査が必要であろう。大学の教員の勤務条件や教育環境の整備が未整備であるにもかかわらず、教員への要求水準が高すぎることを指摘する意見もある。教員個人の教授能力の形成と大学の教育条件・勤務条件の整備を、調和的に進めることが必要になっている。
- 申し込み方法
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