第190回招聘セミナー
第16回「アドミッション担当教職員支援セミナー」
なぜ、アメリカの大学入学選抜は日本の入試改革のモデルになり得ないか
荒井 克弘 氏
東北大学 名誉教授/大学入試センター 名誉教授
2020年11月5日(木)15:00-17:00
開催案内
第190回招聘セミナー
第16回「アドミッション担当教職員支援セミナー」
- 講演題目
- なぜ、アメリカの大学入学選抜は日本の入試改革のモデルになり得ないか
- 講演者
- 荒井 克弘 氏
(東北大学 名誉教授/大学入試センター 名誉教授) - 日時
- 2020年11月5日(木)15:00-17:00
講演概要
高大接続という観点からみれば、アメリカほど実現のむずかしい国はない。高等学校には全米に通用する標準教育課程もなく、教育課程も教育内容も州、学区ごとに異なる。無論、共通学力試験など及ぶべくもない。にもかかわらす、日本はそのアメリカの制度を理想的な制度と崇め、ときに中教審の一節にも紹介した。なぜなのか?日本の比較は“高大接続“考えるきっかけを与え、それはまた、今次の高大接続改革を読み解く鍵にもなるやもしれない。
本セミナーは ZOOM によるオンラインで開催します。オンライン参加が可能であることをご確認の上でお申し込みください。
オンライン参加の要件等
・カメラ・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること。
・発言等ができる静穏な環境で参加できること。
講演要旨
今日の高大接続は「大学進学の機会均等化」と「大学教育の質保証」という両立しにくい2つに課題に直面している。アメリカ大学は19世紀後半に大学院を創設し、学士課程にいわば「高大接続」を持ち込むことによって、完璧ではないにせよ教育機会と質保証の両立を達成させた。日本は入試改革のたびに、アメリカの事例を引き合いに出してくるのだが、議論は断片的な事実に偏るばかりで、高大接続の核心に迫ることはない。
アメリカの初中等教育は地方分権のもとにある。高等学校には全米の標準教育課程など存在せず、共通の到達度試験の実施などは無理な話である。また、大学入学は専門や専攻を決める場でもない。専門教育を本格的に学ぶのは大学院からである。したがって一般教育には、その予備課程、準備課程が含まれることになる。学士課程の学生には途中で退学する者も少なくない。それでも、大学に一般教育という緩衝地帯を設けられていることは、高大接続を実現できる貴重な機会となっている。
日本は戦後、旧制の複線型から単線型へ学校制度が大幅に変わる経験をしてきた。アメリカ型になったのである。だが、高大接続はアメリカに倣うことはなかった。競争選抜試験の大学入試にすべてが委ねられた。学部別入試だから専門・専攻も入学時にきまる。この効率重視の体制が過酷な受験競争をもたらしたのである。高大接続の教育面へ関係者の目が届くようになったのは、1970年代、国大協が共通第1次学力試験に取り組みはじめてからであった。その共通1次試験も、期待とは裏腹に学力偏重、偏差値管理受験の厳しい批判に晒されることになる。
大学入試センター試験では国公立大学だけでなく私立大学も加わり、試験科目の利用もアラカルト式に代った。私立大学の参加は想定以上の速さで達成された。2010年代に入ると、私立大学の8~9割が参加するようになる。センター試験への参加があたかも入試の多様化の進展を保証するかのような勢いである。推薦入試・AO入試の入学者が全体の半数を超えたのは2018年である。この年には大学短大の収容率も9割を超えた。志願者の大学全入化は現実のものとなり、高校と大学のボーダーは消えていきつつある。
今般の高大接続改革において行政がやったのは共通テストに学習指導要領を押し込むことであった。これまでも学習指導要領は尊重されており、教科書は貴重な素材であったはずである。行政が前のめりになれば、社会はその背後の力を警戒するのである。実際、英語民間試験も記述式もことば通りではなかった。学習指導要領の側に強引に共通試験を引き寄せようとすれば、大学との教育接続は二の次になる。大学教育は高校教育の延長ではないのである。高大接続を改革すると声高に宣言した以上、行政はその課題にまっすぐ取り組んで欲しい。
- 申し込み方法
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- 定員
90名(申込締切 10月22日)
- 参加方法
後日参加申込された方にお知らせします。
- お問合せ先
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