名古屋大学高等教育研究センター
第103回客員教授セミナー
⼤学におけるオンデマンド教材の活用は広がるか
田口 真奈 氏
京都大学高等教育研究開発推進センター 准教授
2021年7月29日(木)14:00-16:00
開催案内
名古屋大学高等教育研究センター
第103回客員教授セミナー
- 講演題目
- ⼤学におけるオンデマンド教材の活用は広がるか
- 講演者
- 田口 真奈 氏
(京都大学高等教育研究開発推進センター 准教授) - 日時
- 2021年7月29日(木)14:00-16:00
- 共催
- 東海国立大学機構アカデミック・セントラル
講演概要
コロナ禍により、これまで日本の大学においてあまりすすんでこなかったオンライン活用が広がった。「オンラインによる学習」について、提供側、受講側双方の経験値が世界規模で大きく上がったことは、「対面による学習」の価値を変えていく可能性がある。対面授業の実施が前提である通学生課程の大学にあっても、オンデマンド教材の活用を無視することはできず、今後はそれをカリキュラムにどのように組み込むのかを検討することが必要となってくるだろう。本セミナーでは MOOC などのオンデマンド教材の発展に関わる歴史的経緯を概観しつつ、大学におけるオンデマンド教材の活用を展望する。
本セミナーは ZOOM によるオンラインで開催します。オンライン参加が可能であることをご確認の上でお申し込みください。
オンライン参加の要件等
・カメラ・マイクが利⽤可能で、⾼速なインターネットに接続されたPC等が⽤意できること。
・発言等ができる静穏な環境で参加できること。
講演要旨
本セミナーでは、まず、eラーニングの歴史を振り返ることから始めた。日本において、eラーニングの研究や、大学におけるIT活用の調査が行われたのは、2000年頃であった。2001年には大学設置基準が改定され、制度面・技術面では大学でも正課としてオンデマンド型の授業が実施可能な土壌が整ったが、日本語という壁、狭い国土、学歴より入学歴を重視する社会の風潮などが相まって、その広がりは限定的であった。
一方、アメリカでは、MITがビジネスベースでeラーニングを実施するのではなく、無償で教材を提供するOCWという画期的な試みを2001年に開始した。OCWは世界に広がり、オープンエデュケーションの流れが加速される。2011年にスタンフォード大学のMOOCが大きな評判を呼び、世界中の有名大学が次々とMOOCを提供し、その数は現在も増え続けている。
しかし、非常に手間暇をかけたMOOCのコースであっても、その修了率は非常に低いことが明らかとなっている。日本ではMOOCの広がりそのものも限定的であった。このことから、オンデマンド型授業によって学習者を獲得し、コース修了にまで至らせることは大変難しいことが想定される。
そこで、正課とひもづけて実施するオンデマンド型授業が考えられる。コロナ禍下において実施されたオンデマンド型授業によって学生がしっかり学んでいたという声は多くみられるが、それはそれらの授業が単位を必要とする正課の授業であった、ということが大きいだろう。コロナ禍下における急ごしらえのオンデマンド型授業では、学生へのきめ細やかなフィードバックが、体制的にも時間的にも十分にはできなかった授業も多く存在したと考えられるが、恒常的に行われるオンデマンド型授業では、質の高い「オンデマンド教材」の開発とともに、学生に学ぶ意欲を持たせる、あるいは、学び方を教える、といった教授者側の働きかけが重要となり、教員の手腕がより問われる時代となることが予想される。
その際に重要な視点は、「オンデマンド教材」は教材であって、授業ではない、ということである。かつて、学校放送番組による放送教育が行われた当初、放送による教育の可能性に関する議論があった。そこから学べるのは、放送番組は教材であって、教室にいる教師の役割とは異なる、ということであるが、それは、オープンコンテンツ、あるいは「オンデマンド教材」であっても同様に考えることができる。
学習者が学ぶための教授者の働きかけを授業と考えるならば、「知識伝達」の前後に、動機付けや学生へのフィードバックなどが必要である。大学の講義では、「雑談」として話されているような「動機付け」の部分がオンデマンド教材からは抜け落ちることが多い。質の高い「オンデマンド教材」を中核としつつも「授業」としてなりたたせるための教授機能をどのように組み込んでいくのかが重要となるであろう。
- 申し込み方法
- 下記セミナー参加申込フォームから必要事項をご記入ください。その際にご入力頂いたメールアドレスの返信をもちまして、申込完了となります。
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/seminar/form/
- 定員
90名(申込締切 7月26日)
- 参加方法
後日参加申込された方にお知らせします。
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-3534
- (セミナー専用)
- 本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。
- 諸連絡
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