名古屋大学高等教育研究センター 第2回公開セミナー 学生寮における教育的アプローチの開発とその課題 安部 有紀子 氏 名古屋大学教育基盤連携本部/高等教育研究センター 准教授 2022年1月13日(木)15:00-17:00
開催案内
高等教育研究センター 第2回公開セミナー
- 講演題目
- 学生寮における教育的アプローチの開発とその課題
- 講演者
- 安部 有紀子 氏
(名古屋大学教育基盤連携本部/高等教育研究センター 准教授) - 日時
- 2022年1月13日(木)15:00-17:00
- 共催
- 東海国立大学機構 アカデミック・セントラル インストラクショナル・デザインチーム
講演概要
近年、日本をはじめ、米国、東アジア、豪州、ヨーロッパ諸国へと学生寮改革が広がっています。本セミナーでは、各国の学生寮に大きなインパクトを与えてきた米国学生寮を取り上げ、その改革経緯や、教育的な学寮プログラムを構成する要素、課題等について紹介します。特に学生の学習成果については、プログラムの志向性や運営方法が大きく影響することも明らかになっています。後半では、今後日本の学生寮がどこへ向かうのか、フロアの皆さんと一緒にディスカッションしていきたいと思います。
本セミナーは Zoom によるオンライン開催です。
・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること
・発言等ができる静穏な環境で参加できること
以上をご確認のうえ、お一人様1アカウントにてお申し込みください。
講演要旨
本研究は、米国大学の学生寮における教育的な学寮プログラムについて、その理念や特徴について整理したうえで、1990年代以降に急速に拡大したLLC(Living Learning Community:学生寮を拠点にした学習コミュニティ)プログラムの特徴や学生に与える効果について明らかにするものである。
米国の学寮組織の発祥は米国大学の創設期に遡る。当時は「学寮カレッジ(Residential College)」と呼称される英国式の教員と学生が共に居住しながら、公私にわたって家族的な雰囲気の中で学生を育成していく方策が採られていた。また同時に、学生に対する厳格な規律管理のコントロールという特徴も有していた。その後20世紀半ばの学生運動をきっかけに、学寮内のルールは大幅に緩和され、学寮カレッジから近代化された新たな学寮のあり方の模索が始まった。それによって、寮母の代わりに科学的根拠に基づく専門的な訓練を積んだ学寮担当職が雇用されるようになり、RAの数も拡大し、学寮組織は大規模な組織を形成していくこととなった。
その後、1980年代半ばの学習者中心主義への転換の中で、学習コミュニティの一形態として学寮プログラムに注目が集まるようになり、「学寮生活の中心に学生の学習を置く」という理念のもと、教育的な学寮プログラムの開発が始まっていくこととなる。LLCは①授業科目の提供、②コ・カリキュラムの提供、③学生寮の運営から構成されるが、その前提として「明確な目標・目的」「学務組織との協働の調整」「資源の確保」といった準備も重要とされている。特に、①〜③のコンテンツやサービスが「体系的かつ構造的に統合されていること」を学生に明示することが強調されており、何を学生に期待するのか、またプログラムの内容や成果が大学の教育目標とどう関連づけられているのかを明確にすることも求められている。
以上のようなLLCには、学問的認識をはじめ、学生同士、教員と学生の相互作用の促進、良い生活習慣、大学への帰属意識、退寮後の学習意欲の継続性等、様々な面で効果が認められている。注目すべきは、LLCプログラムの学生数、財源等の資源規模はこれらの成果と直結しておらず、「学寮組織と学務組織のパートナーシップの強さ」が最も影響を与えていたことである。一方で、教員の関与や単位を付与する授業科目の提供は部分的な実施に留まっており、協働や連携の難しさも報告されている。
米国における学生寮および学寮プログラムは、現在においても学生生活の中心であることは間違いない。それらは必ずしも、歴史的な経緯や米国大学の固有の性質というだけでなく、長い歴史の中で、学生寮の再定義やプログラム開発等の様々な試行錯誤の結果であるといえる。
- 申し込み方法
- 下記セミナー参加申込フォームから必要事項をご送信ください。その際にご入力頂いたメールアドレスの返信をもちまして、申込完了となります。
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/seminar/form/
- 定員
90名
(申込締切 1月11日)
- 参加方法
参加申込された方に後日お知らせします
- お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-3534
- (セミナー専用)
- 本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。
- 諸連絡
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