名古屋大学高等教育研究センター
第105回客員教授セミナー
内部質保証のアクターをめぐる日英比較
-学生の役割に着目して-
田中 正弘 氏
筑波大学大学研究センター 准教授
2022年3月17日(木) 14:00-16:00
開催案内
名古屋大学高等教育研究センター
第105回客員教授セミナー
- 講演題目
- 内部質保証のアクターをめぐる日英比較
-学生の役割に着目して- - 講演者
- 田中 正弘 氏
(筑波大学大学研究センター 准教授) - 日時
- 2022年3月17日(木) 14:00-16:00
- 共催
- 東海国立大学機構 アカデミック・セントラル インストラクショナル・デザインチーム
- 申し込み方法
- 下記セミナー参加申込フォームから必要事項をご送信下さい。その際にご入力頂いたメールアドレスへの返信をもちまして、申込完了となります。
https://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/seminar/form/ - 定員
100名(申込締切 3月14日) - 参加方法
参加申し込みされた方に後日お知らせします。 - お問合せ先
- info@cshe.nagoya-u.ac.jp
- Tel:052-789-3534
- (セミナー専用)
- 本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。
- 諸連絡
- ※いただいた個人情報は、本企画運営の目的にのみ使用いたします。
講演概要
日本やイギリスでは、質保証プロセスにおいて、内部質保証の重要性が強調されている。さらに、イギリスだけでなく、日本においても、内部質保証に教職員以外の多様なステークホルダーを参画させるべき、という議論が活発になってきた。
そこで、本セミナーでは、内部質保証の主要なアクターとして、学生がどのような役割を果たしているかについて、イギリスの大学の事例を紹介する。また、日本での試みとして、筑波大学の事例も紹介したい。
本セミナーは Zoom によるオンライン開催です。
・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること
・発言等ができる静穏な環境で参加できること
以上をご確認のうえ、お一人様1アカウントにてお申し込みください。
講演要旨
日本やイギリスでは、大学の質保証プロセスにおいて、内部質保証の重要性が強調されている。イギリスを含めた欧州で内部質保証の重要性が域内全体で公的に提唱されたのは、2003年のベルリン・コミュニケ「欧州高等教育圏の実現を目指して」の場である。その後、「大学自治の原則に基づき、高等教育の質保証の責任は各機関自身にある」(Communiqué of the Conference of Ministers Responsible for Higher Education, 2003: 3)という信念の下で、欧州各国の質保証制度が整備された。同様に日本でも、中央教育審議会大学分科会(2016: 3)が、「認証評価制度の充実に向けて(審議まとめ)」(平成28年3月18日)において、「各大学の自律的な改革サイクルとしての内部質保証機能を重視した評価制度に転換する」ことを提唱した。そして実際に、その評価制度が認証評価の第三サイクルから運用されている。
内部質保証を重視する評価制度が整備され始めた頃の欧州(北欧などの国は除く)では、内部質保証のアクターは、ベルリン・コミュニケでも暗示されたように、大学の教職員だと見なされていた。ところが、教職員以外のステークホルダーも内部質保証のアクターとして参画すべきだという指摘(2010年の「欧州高等教育圏に関するブダペスト・ウィーン宣言」など)がなされるようになり、そして、ついに、「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン」(2015年改訂版)において、学生の参画が明記されたのである。この流れに少し先んじる形で、イギリスでは、学生が内部質保証に正式に参画するようになった。
欧州と同様に日本でも、内部質保証に教職員以外のステークホルダーを参画させるべき、という議論が活発になりつつある。例えば、大学改革支援・学位授与機構(2017: 11)は、「教育の内部質保証に関するガイドライン」において、「学生や外部のステークホルダーの参画」の必要性を表明し、具体的な対応方法として、「点検・評価への学生代表の参加や、学生と教員との意見交換の場の形成、学生に対するアンケート調査や意見聴取、学生との協働によるFDの実施など」を明示している。しかし、内部質保証に学生がいかに参画すべきなのかの経験則に乏しい日本の大学にとって、その実施は容易ではなかろう。
そこで、本セミナーでは、内部質保証の主要なアクターとして、学生がどのような役割を果たしているかについて、イギリスの大学の事例をいくつか紹介し、さらに、日本での先駆的な試みとして、筑波大学の事例も紹介した。
【参考文献】
Communiqué of the Conference of Ministers Responsible for Higher Education (2003) Realising the European Higher Education Area
Communiqué of the Conference of Ministers Responsible for Higher Education (2010) Budapest-Vienna Declaration on the European Higher Education Area
European Association for Quality Assurance in Higher Education (ENQA), European Students’ Union (ESU), European University Association (EUA) and European Association of Institutions in Higher Education (EURASHE) (2015) Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG)
大学改革支援・学位授与機構(2017)「教育の内部質保証に関するガイドライン」(平成29年3月31日)