名古屋大学 高等教育研究センター

第25回客員教授セミナー 大規模大学でFDを組織化するための方法論 阿部 和厚 氏 北海道医療大学教授・高等教育研究センター客員教授 2004年 10月1日(金) 午後2時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール

■ 講演要旨

 大学はその理念・目的のもとに教育、研究、管理運営、社会貢献の役割を担っている。大学教授職は大学の社会的存在理由を支える人的資源であり、上記の諸要素の資質向上に大きな責務を負っている。FD(ファカルティ・ディベロプメント)とはそのための組織的取組のことを指す。

 FD の方法論として、私はこれまでの経験からワークショップ型FDこそが最も効果的であると考えている。北海道大学医学部では平成4年の8月に2泊3日で学生教育ワークショップを開催した(参加者42名)。このワークショップを企画・準備する上で、学部長にリーダーとなってもらい、実際の指揮を執るディレクターには私(阿部)がなり、若手助教授6名によるタスクフォースを編成した。結果的には、日常話したことのない他分野の人と接することにより、教員相互の連帯感が生まれ、その後の教育・研究面での共同プロジェクトを生むきっかけとなった。

 こうした経験が北海道大学全体の教育改革に生かされることになった。平成8年に高等教育機能開発総合センターの高等教育開発研究部長に就任し、平成10年 11月に合宿ワークショップを開催した。これは総長-副総長-学部長を通して各学部から数名ずつ参加を募り、総長自身も参加して、小グループ別に学生参加型授業の設計を行った。つまり、参加者は研修を進めていくうちに、自分自身も学生参加型の授業づくりを意識するようなしかけになっている。研修のパターンは、(1)ミニレクチャー、(2)グループ作業、(3)全体発表討論を単位とするサイクルになっており、この単位と教育の要素を学ぶテーマ順に繰り返す。

 北海道大学ではこの合宿ワークショップのほか、大学の特色や教育に関するワークショップを行う新任教員研修(1日)、教育の基本について学ぶTA研修(1日)などを制度化している。さらに、全学教育のコアカリキュラム化を図り、FDの成果を柔軟にカリキュラムづくりに反映させる仕組みを作っている。また、新たに赴任した北海道医療大学では、全学FD委員長として教育改革を進めている。

 結論としては次のことが言えるだろう。

  1. 教育は大学の第一の存在理由であり、学長が率先してリーダーシップを発揮すべきであること。
  2. ワークショップ型のFDを推進することによって、学生参加型授業がどういうものか体で覚えることが重要。
  3. 委員会などを通して、学内にやる気と能力のある人材を発掘し、仲間になってもらう働きかけを惜しまないこと(研究員制度)。
  4. 実践を重視すること。
  5. 自立性、柔軟性、弾力性を備えたシステムをつくり、リーダーシップで直に動くように設計すること。
  6. 情報公開などによって、教員への周到な刺激を与えること。