第39回招聘セミナー 産学官連携で大学は変われるか? マヌエル・クレスポ 氏 モントリオール大学教育学部教授 2004年 5月26日(水) 午前10時30分 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール
講演要旨
歴史的に大学が社会に対して主に産出してきたものは卒業生などの人材であり、研究成果は学会などで独占的に蓄積されてきた。しかし現在は、医療、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなどの分野に見られるように、大学の研究成果が産業界へ貢献している。
先進国において、経済が知識集約型経済(Knowledge Economy)へ移行していく際に、その原動力となるのが技術革新である。その際、産業界は単なる果実の受けてではなく大学のパートナーとなっていくことが求められるだろう。
その事例として、カナダにおけるNetworks of Centers of Excellenceをとりあげてみよう。90年代から現在にかけて、カナダでは大学が民間部門と協力して知的財産の商業化を積極的に進めてきた。このネットワークには、政府や地方自治体の研究機関と、大学、民間企業の研究機関が参加しており、その多くが技術革新の成果を商業化するために起業している。この中には起業家大学(Entrepreneurial University)も含まれている。
このような新しい産学官の関係が生まれてくると、それは大学のミッションに大きな変革を迫るものとなるかもしれない。将来的に、大学は科学技術の分野で最高水準の知識の提供者となっていくべきであり、基礎研究に没頭し社会サービスへ積極的に参加してこなかった、伝統的な大学や人文・社会科学分野の学問領域に対する異論も大きくなってくるだろう。さまざまな学問領域で産業界とのパートナーシップを進めるためには、例えば大学が教育をほとんど行わずに研究する教員と教育に大きくコミットする教員という二つのキャリアトラックを用意するように、大規模な発想転換が必要であろう。