第19回客員教授セミナー Human Performance Technology 目標と成果を保証するマネジメント手法 高 利明 氏 北京大学教育学院教授/名古屋大学高等教育研究センター客員教授 2003年 7月18日(金) 午後1時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館5階 センター会議室
講演要旨
本報告の目的は、行動心理学、教育システム設計、組織開発や人的資源管理(Human Resource Management)といった広範な領域を背後に持つHuman Performance Technology(HPT)の概略を述べ、高等教育への適用可能性を考察することにある。
HPTとは、組織を構成する諸個人やグループの活動を計測し、その結果をもとに実践的問題を解決するための体系的なアプローチととらえることができる。 HPTのアプローチは6つの段階によって構成される。 まず1.個人や組織の成果に対する期待と実際の結果とのギャップ分析を行い、 2.望ましい成果と実際の結果とのギャップが生じた場合、その原因を情報や資源といった環境と動機や能力に関する人材の二つの視点から、ギャップが生じた原因を明らかにする。 そして3.分析結果から改善のための目標・計画を策定する。4.目標・計画を実行するとともに、それによって引き起こされる変化のプロセスを記録する。5.計画遂行後に、計画・実行そのものの形成的評価と行動主体(個人やグループ)の人材評価を行う。6.最後に成果そのものの多様な評価と計画の成果に対する投資効果の評価の二つの総括的評価を行う。これら6段階のアプローチはギャップ分析→原因分析と計画策定→課題解決→評価→ギャップ分析という様々なプロセスのサイクルあるいはフィードバック・システムとして把握することができる。
HPTはまず成果に着目してパフォーマンスの改善を図ることに主眼があり、それはビジネスの現場で適用されてきたアプローチであるが、これを教育の領域に導入することも可能であろう。それはまず教育と教育マネジメントの研究において、次に授業とトレーニングの研究において、最後にカリキュラム設計と学習成果の研究においてHPTは関連し、その適応可能性が認められるものである。