名古屋大学 高等教育研究センター

第32回招聘セミナー 立命館大学における教育評価システムの構築 授業評価から教学検証へ 平井 孝治 氏 立命館大学経営学部教授/大学教育開発・支援センター副センター長 2004年 2月2日(月) 午前11時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 セミナーの冒頭でまず指摘された点は、意思決定のためには情報がなければならないが、授業評価は施策立案のために戦略的に情報を収集する活動と考えるべきである、ということである。

 平井研究室で開発している授業評価アンケートは「集計枠」と「解析枠」に分かれており、単純集計やクロス集計については回収から6日で担当者へ情報をフィードバックする体制をとっている。単純集計やクロス集計から得られる情報には限界があるものの、教員個人にとって授業改善の重要な情報となるものは早く返す方が、その後の授業ですぐに改善につなげることが期待できる。一方の解析枠では、重回帰分析、主成分分析などの多変量解析を用い、教学機関ごとに評価を出す。具体的には、学生の満足度や理解度を被説明変数とした線形回帰などにより、学生の満足度や理解度に大きく貢献する要因を取り出す。

 また、各教員の授業改善を支援するために、授業の診断を行う試みもある。これは「授業カルテ」を作成する試みも紹介された。満足度や履修価値に関するレーダーチャートと、授業担当者の優れている点と改善を要する項目のコメントを付してフィードバックする試みである。

 さらに、学生の学習意欲の減退がどのような要因によって起こるかという点に関する分析も紹介された。特に学習意欲が減退しやすいと考えられる要因は、教員の「話下手」や「履修価値の低さ」などであった。学生と教員の間で認識にギャップがあるものもあり、「板書下手」や「レジュメの不適切」など、教員より学生側が問題と感じている部分の改善が難しい。逆にギャップの少ない「私語が多い」などは教員と学生で合意がとりやすく、速やかな授業改善につながる可能性がある。

 講演では、学生による授業評価アンケートの立命館大学方式標準版を開発する方法と、その開発プロセスで得られたさまざまな知見、そして授業診断情報の提供を見通した評価結果のフィードバック構想が紹介された。