名古屋大学 高等教育研究センター

第1回インターナショナルセミナー 「日本の大学におけるメディア利用による授業開発の現状と課題」 池田 輝政 氏 メディア教育開発センター・メディア経営研究部門 1999年 3月2日(火) 名古屋大学 グリーンサロン東山ミーティングルーム


■ 講演要旨

◎メディア教育開発センターの「授業における新しいメディアの活用に関する'97年調査」
The Year1997 Survey on College Teaching utilizing Communication Information Technology by NIME

●対象Target Gruop:
全国の国公立大学・短期大学・高専・大学共同利用機関で新しい情報テクノロジーを利用した授業開発を行っている教員870名
Teachers who work for universities/junior colleges/technical colleges in Japan and take interests in developing media-based teaching practices

●回答数Respondents=371名

●調査結果Results
(1)通信衛星テレビ会議システムTelevised Conference System through Satellite
※【経営情報学部】情報科学ーインターネットを利用した授業交流
 「実験的な授業として半年間実施。ハワイ大学コミュニケーション学科のクラスと電子メール・コミュニケーションを補うものとして、1グループあたり6分×15グループを2回実施」

(2)インターネットによるテレビ会議システムTelevised Conference System through Internet
※【工学部】大学院環境計画第一
 「夏に京都工芸繊維大とMITと設計演習の課題に取り組む授業を試行した」

(3)電子メールの活用Utilizing E-Mail
※【理学部】宇宙物理学特論
 「セミナー予定の伝達、質問の受付、他機関の研究者への質問や議論」

(4)電子掲示板の活用Utilizing Electronic-Bulletin-Board
※【教育学部】言語表現
 「システムで作品の掲示とコメントつけ」

(5)WWWの活用Using Web Pages
※【文学部】社会情報学演習
 「個人のホームページ作り、ゼミレポートの公開、インターネットの情報収集法」

(6)マルチメディアCAIの活用 Using Computer Assisted Instruction
※【工学部】プログラミング序論
 「ハイビジョンTV上に位置検出のできるマーカーでプログラミングを板書し、学生の目の前で実行する(プロトタイプを作成済み)。電子博物館や美術館のコンテンツが充実してくれば、黒板を操作するような感覚で、教師が学生の注意を集めて授業できる。」

(7)ビデオ教材の利用Using Videocassette Materials
※【情報科学部】多くの授業で利用
 「実験場面等の実物提示、CSCW等海外研究成果の紹介ビデオ分析のデータとしてなど」

(8)市販のメディア教材の利用Using Commecial Multimedia Software Materials
※【芸術学部】教材名『マイ物理レッスン』
 「力学の教育に実験を見せるかわりに使用」

●いくつかの課題Problems
(1)施設・設備の問題Infrastructure
  大学全体の、教官、学生用の情報機器の不足

(2)教育用に特化された情報ツール開発の問題Educationally Customazed Information Tools
  情報機器活用の可能性の幅の急速な拡がりにより、有効活用にいたるまでの敷居が高くなりすぎた

(3)情報活用リテラシーの教育・研修問題Trainning of Information Literacy for Teachers & Students
  教員、学生にとってリテラシー獲得が容易でない

(4)情報教育に割くべき授業時間の配分問題Trade-off of Teaching Hours caused by using Information Technology
  体験を伴う実験・実習に時間をかけることと、情報教育に時間を確保すること、とのバランスの取り方が難しい

(5)マルチメディア教材の開発コスト問題Cost-Effectiveness on Development of Multimedia Courseware
  マルチメディア対応のパソコンを用いたビジュアルな教材の必要性に対して予算、時間、人員の面での制約がある