名古屋大学 高等教育研究センター

第16回客員教授セミナー 国立大学の第三者評価 国際的視点から 喜多村和之氏氏 私立高等教育研究所主幹/名古屋大学高等教育研究センター客員教授 2002年10月24日(木) 午後1時〜3時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 本発表の目的は、日本の国立大学の第三者評価を国際的な視点から見た場合、どのような特質と問題点があるのかを明らかにすることである。

 国立大学の評価活動は、1990年代に入って自己評価が活発になった。そして、1998年の大学審答申に「多元的な評価システムの確立」が明記されたことにより、第三者評価が不可欠な趨勢になってきた。 本来の「第三者」という言葉には、当事者である大学(「第一者」)、大学からサービスを受ける存在としての学生や保護者、雇用者(「第二者」)に加えて、基準認定団体、第三者評価機関、市場、マスメディアなど多様な民間組織が大学を評価するという意味が込められている。  

 一方、現実には中央教育審議会の「大学の質に係わる新たなシステムの構築について」答申(2002年)に基づいた学校教育法の改正が今国会を通過しようとしている。この改正は従来省令レベルで進められてきた規定改正が法律レベルに格上げされて、違反に対する罰則規定が設けられたところに大きな特徴がある。この改正案では、大学評価機関は文部科学大臣の認定を受けなければならず、「認証評価」の結果を文部科学大臣に報告し、しかもこの法律に違反した場合は認証の取り消しが行われることが明記されている。また、すべての大学は第三者評価を受けることを義務づけており、国庫によって賄われている国立大学と授業料収入に大きく依存する私立大学が同一に扱われている点が注目される。

 このような点からも、同業者による自主管理の手段として大学の第三者評価が行われてきた伝統を持つアメリカとは対照的に、日本は政府が主導して第三者評価を始めようとしている。こうした社会的・歴史的な背景の違いが、両国の第三者評価の内容・方法上の相異をもたらしている。

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