名古屋大学 高等教育研究センター

第27回客員教授セミナー 名古屋大学のブランド力」 中津井 泉 氏 リクルート(株)カレッジマネジメント編集長/高等教育研究センター客員教授 2005年3月2日(水) 午後1時 名古屋大学東山キャンパス 教養教育院第一会議室

■ 講演要旨

 講演は 1.「私立大学の募集戦略を手がかりとして、名古屋大学のブランド力の構築を試みる」こと、ならびに 2.「東海地区における募集ブランド力調査結果の報告」の2部構成で行われた。

 まず、1.に関して、学生募集の成功は、広報内容であるといえる。広報内容は、1)学部学科のポテンシャルパワー、2)入試制度ならびに3)高校生の抱くブランドイメージがある。

1) 学部学科のポテンシャルパワーの要素としては以下のものがある。
  • 学部系統の人気度 ・学部学科名称
  • 社会的ニーズ ・魅力的カリキュラム
  • 教育メソッド ・資格
  • 研究,ゼミ ・設備
2) 入試制度の要素としては以下のものがある。
  • 受験のしやすさ(受験日、受験料ならびに試験会場)
  • 話題性(ユニーク入試、ボランティア入試)
3) 高校生の抱くブランドイメージとしては、以下のものが挙げられる。
  • 知名度
  • 入学難易度
  • 興味度
  • 伝統
  • 教育満足度
  • COE
  • 立地条件
  • キャンパス
  • 卒業生の実績

 これら3つの要素の実例を挙げると、 1)に関しては、ユニークな学部学科名称をつけたりしている。 2)に関しては、センタープラス入試、併願割引制度、ならびにAO入試を実施している。 3)に関しては、響きのよい大学名でブランドをつけたりするブランドマネジメントを実施したりしている。

 次に 2. 「リクルート社による東海地区における募集ブランド力調査結果の報告」に関してであるが、同調査は、募集ブランドのイメージに焦点を当て、a)知名度の高さ、b)興味度の高さ、ならびにc)入学難易度(志願度)の高さについて、高校生9,670人を対象に実施されたものである。

高校生の大学に対するイメージが、「知名(大学名を知ること)→大学に対する興味の発生→入学する意志」に変化していく段階に注目している。知名では、「知名度を上げる戦略」が重要であるし、大学に対する興味の発生に関しては、「興味を喚起させる戦略」が重要になってくる。

さらに同調査では、評価因子(名古屋大学に興味をもった理由:たとえば高名な教授がいるなど)ならびに信念因子(学校を選ぶ際に重視する項目)の2要素を取り出した調査も実施している。

同調査の結果として、リクルート社では、知名度、興味度、ならびに志願度のいずれも名古屋大学は極めて高い位置にあった。

中津井講師によれば、名古屋大学のブランド力は「名古屋にある限り揺るぎない」。 けれども、東海地区以外の他地域からの入学者が多くないことはなぜか?も考えていいかもしれない。 そうしたとき、他地域から名古屋大学へ入学した学生にたいして、

「なぜ名古屋大学へ入学してきたの?」
と問うことが、今後の名古屋大学のブランド力を考える鍵になるかもしれない。