第43回招聘セミナー 私立大学の財務の現状 梅田 守彦 氏 岐阜経済大学経営学部教授 2004年 10月19日(火) 午後3時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール
講演要旨
現在、日本の高等教育財政をめぐる状況は厳しいものがある。 例えば1998年に出された 『エコノミストによる教育改革への提言−「教育経済研究会」報告書』では、 高等教育支出を減少させ、市場を通じて大学の活性化を図ることが 一貫して主張されている。 この姿勢は国立大学のみならず、私立大学に対しても向けられ、 私学助成の存在が大学経営の効率改善を阻害する可能性をも指摘している。
18歳人口の減少に加え、大学をめぐるこのような厳しい環境の中、 大学には財務面の強化が求められている。 しかし私立大学の収入構造を見ると、 受験料収入を主体とした手数料や寄付金の減少に伴い、 学生生徒等納付金の帰属収入に占める割合が上昇し続けている。 さらに教員構成は助手→専任講師→助教授→教授の順に多くなるため、 人件費が高い水準で硬直化している。 また教育環境の改善のために大学の建物を建替えるなど、 設備投資も増大しつつある。 このような要因が私大の財務を徐々に圧迫しており、 経費削減の圧力が高まっている。
海外の大学では、経費削減の事例が多数存在する。 カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校では、 経費削減のためBPR(Business Process Reengineering)を導入した。 これは企業内の業務活動を分析して、不必要な作業を削除し、 業務活動をより効率的なかたちに再設計するなどして、 顧客が受け取る価値の増加やコスト削減を図ろうとする経営管理技法である。 これにより大幅な経費削減に成功した。 またアメリカの多くの大学で1970年代にゼロベース予算の導入が図られた。 これは活動予算を過去の実績に基づいて算定するのではなく、 活動の一つ一つにかかる経費を算定し、優先順位をつけ、 重要度の高いものに資源を割り当てるという手法である。
ただし、こういった手法のすべてが大学経営の現場においては 必ずしも成功するとは限らない。 リエンジニアリングをリストラととらえられ、現場に摩擦が生じたり、 教育研究活動にかかる経費を算定し優先順位をつける作業には 多くの時間がかかり、導入が困難となる場合もある。 そのことから大学経営に適した導入を考える必要がある。