コラム:私の名大デビュー

 みなさんも学生時代にさまざまな授業を受けてこられたことでしょう。 かくいう私も、印象に残る授業、ためになった授業、反面教師としてとらえた授業、いろいろありました。 不思議なもので、学生時代に自分がいいと思った授業は記憶に残っているのですが、悪いと思った授業はほとんど記憶にありません。 当時の自分には、悪い授業のどこが悪いのかを見るだけの視点がなかったこと、教員からの働きかけが特になければ冷ややかに見ながらも、盲目的・従属的に取り組み、ちゃっかり単位はいただいていたからかもしれません。

 そんな私も初めて名古屋大学で授業を持つことになり、さまざまな不安がよぎりました。 自分の学生時代を思い出しても、学生は教員をよく見ています。 名古屋大学くらいのところで、変な授業をしたら学生にばかにされるのではないか? 授業で伝えたいことが、学生に的確に伝わるのだろうか? など、あげだすときりがありません。

 自分の体験では、いい授業には適度な負荷があったので、私も学生に時間外で課題を課すことを心がけました。 しかし、多くの学生が、大学に入ってまで宿題があるとは考えてもいなかったようで、なかなか進みませんでした。 『ティップス先生』は読んでいたものの、新米の私はいざ現場に出たらあせるばかり。 ティップスなんて吹っ飛んでいます。 けれど、「一生懸命やってほしい」、「とにかくがんばれ」と励ますことで、最後はなんとか全員に取り組んでもらいました。 テクニックはなくても、学生に勉強してほしい、という気持ちを伝えるだけでもまずはいいのかな、と思ったデビュー戦でした。