名古屋大学 高等教育研究センター

第85回招聘セミナー 教養教育における科学リテラシ− 横山 輝雄 氏 南山大学人文学部教授 2010年5月13日(木) 16:30〜 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

■ 講演要旨

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学部段階の教養教育として、旧設置基準では人文、自然、社会の「3系列」が規定されていた。しかし現実には理系学部ではこれらは必修の基礎科目であり、そのため同じ名称の「物理学」が文系と理系で内容が大きく異なっていた。大綱化以降、さまざまな形に改変がなされたが、従来の形の分野科目をそのまま教養教育として残しているところは少なくなった。それは、高校における理科の選択制との関連もあり、自然科学の体系的教育は理系学部の基礎教育以外では困難になったためである。

「論理学」は、戦前の旧制高校から戦後まで教養科目の定番であったが、大綱化以降消滅しつつある。それは、日常言語による三段論法の「古典論理学」から、記号操作の「現代論理学」への変化が、かえってその教養教育的価値を失わせたためである。そのため、「クリティカル・シンキング」や「論理思考」などの、論理学体系とは別のカリキュラム開発が求められている。

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環境や生命などの現代的テ−マとの関連で自然科学的内容をとりあげる科目が増えているが、そうした「文理融合」型の教養教育には、「科学リテラシ−」や「科学コミュニケ−ション」に関する近年の議論が示唆的である。脳科学の知識を教養教育に導入する「文理融合型」カリキュラムや教科書をつくるプロジェクトに従事したが、そこで明らかになったことの一つは、脳科学の知識を体系的に教授する形ではない、「科学コミュニケ−ション」の観点を組み込んだものが必要なことであった。専門分野の基礎知識の教育(を簡単にしたもの)とは違った独自のカリキュラムの編成が必要である。

こうしたことは、すでに海外では以前から行われており、それを参照する必要がある。また、中学高校における「理科」は「科学教育」なのかどうかという以前からの問題を大学教育でも考えるべきである。

■ 開催案内

第85回招聘セミナー

講演題目
教養教育における科学リテラシ−
講演者
横山 輝雄 氏
(南山大学人文学部教授)
日時
2010年5月13日(木) 16:30〜
場所
東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

講演概要

学部段階教養教育として、旧設置基準「3系列」の一つとしての「自然科学」は、大綱化以降さまざまな形に再編成された。一方では「理科離れ」による自然科学系教養科目の消滅があるが、他方で環境や「安全・安心」など科学技術をめぐる問題の重要性は高まり、「科学リテラシ−」や「科学コミュニケ−ション」考慮した新たな教養教育が大学でも求められている。論理学教育の問題や、脳科学教養教育の実践報告を含め検討する。

お問合せ先
夏目 達也
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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