名古屋大学 高等教育研究センター

第98回招聘セミナー 動詞で語る「大学職員の専門性とその形成」 井上 真琴 氏 同志社大学企画部企画課長 2011年6月22日(水)18:30〜20:00 東山キャンパス 文系総合館7階カンファレンスホール

■ 講演要旨

大学の職員が専門性を獲得するプロセスについて、自分自身の経歴を踏まえて考えたい。

大学職員が専門性を獲得するためには、どのような環境にあっても教育にコミットする意識を高めておくことが、まず大切である。次に、自身の業務内容の徹底した質的分析が必要である。始めは業務を思うように遂行できなくても、そのプロセスをていねいに省察することにより、次第に適切に遂行できるようになるし、専門性を身につけることに繋がるだろう。例えば、大学図書館界では、研修プログラムが他の領域に類を見ないほど整備されているが、研修会等を通じて知識が増えても、習った知識を実際に使うことができなければ専門性が身についたとは言えない。そこでは、知識を“学びほぐす”能力が求められるだろう。能力開発よりコンピテンシー開発が重要であって、獲得した知識・能力を何らかの成果に結び付けなければ、コンピテンシーがあるとは言えない。

大学職員特有の専門性は、一般の企業人のそれとは異なる、大学というものの組織文化を理解した上で、その中でいかに物事を実現していくか考えることが重要である。大学職員の専門性は、実践面において教員を凌駕できるようなコアの専門性の他に、一般的な「実現マネジメント」能力、つまり、組織の目的と目標のために実際にヒト・モノ・カネを動かす能力がもう一つの要素となる。このマネジメントにおいては、大学教員の組織文化を意識することが不可欠である。そのために、職員は教員と共通の言語を持ってお互いの役割を理解していくことが求められる。ピーター・ドラッカーが「組織の目的は専門知識を共通の課題に向けて統合すること」だと述べているが、教員の専門知識、職員の専門知識を融合させるマネジメントこそが大学職員の専門性であろう。

鷲田清一大阪大学総長は、平成22年度卒業式・学位授与式の式辞の中で「一つのことしかできないというのは、ほんとうのプロフェッショナルではない。たんなるスペシャリストに過ぎない」と述べている。この点は大学職員の専門性のあり方ともかかわる。自分の専門領域の言語のみで他者を抑え込もうとするのではなく、他の専門家に対する理解を深めること、同時に自分の専門的知見について関心を持ってもらえるように、その内容を正しく伝えることが、これからの大学職員には求められている。

■ 開催案内

第98回招聘セミナー

講演題目
動詞で語る「大学職員の専門性とその形成」
講演者
井上 真琴 氏
(同志社大学企画部企画課長)
日時
2011年6月22日(水)18:30〜20:00
場所
東山キャンパス 文系総合館7階カンファレンスホール

講演概要

中教審「学士課程答申」等を機に、大学職員の専門性と能力開発が声高に語られるようになった。しかし、その専門性の正体はいまだ明確な輪郭を持たず、専門性が形成される具体的なプロセスも不透明なままである。

セミナーでは、大規模私立大学職員である自身の業務実践(特に図書系・教学系)を振り返り、また大学コンソーシアム京都のSD事業開発に携わった経験を踏まえ、職能分析と省察的実践の視点から大学職員の専門性について参加者と意見を交わしたい。

お問合せ先
豊田 哲
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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