科学を発信するEnglish
講演する
研究者の多くにとって、始めて体験する市民との科学コミュニケーションは、大学の社会連携活動の一環として企画される、各種の講演会でしょう。あるいは、同僚から「サイエンスカフェ」のゲストに招かれる、ということもありそうです。ここでは、市民向けの講演やカフェのゲストスピーカーとして、幅広い市民に科学を語る際に気をつけておくべきことをまとめておきましょう。
1 市民を対象に話すとは
学会発表とは違う
公開講座、講演会、サイエンスカフェなどは、学会発表とは大きく異なります。学会発表のときのようなやりかたでは、まずうまくいきません。両者は次のように違います。
- 前提知識が異なります。
- 学会発表では、話し手も聞き手も専門家であり、その学問分野の前提となる知識や専門用語を共有しています。市民向け講演では、聞き手は科学に関心を持っているものの、その学問分野の前提となる知識を期待することはできません。
- 動機が異なります。
- 学会の場合、聞き手も大学や研究所に所属する場合が多く、その学問分野を発展させていきたいと考えているでしょう。市民は、科学コミュニティーの一員ではありませんから、知的欲求を満たしたい、科学・技術についての懸念を表明したい、科学者と交流したい、といった様々な動機をもっています。
一言で言えば、市民向け講演は、専門家と非専門家のコミュニケーションなのです。手間暇かけて作成した学会発表のスライドを市民向け講演でもそのまま使いたい、こういう気持ちもよくわかりますが、そううまくはいきません。
学会発表は上手にできる人でも、講演上手とは限りません。講演の際には「自分がどう見られているか、どう聞かれているか」にかなりの程度、自覚的になる必要があります。あなたは自分を発表者というより、むしろパフォーマーと位置づけるのがよいでしょう。
大学の授業との類似点と相違点
専門家が非専門家へ知識を伝えるという点に着目すると、あなたがこれまでに受けた、または工夫して行ってきた授業の方法を市民向け講演に応用することがお薦めできます。特に学部段階の教養科目は、その分野の専門家を育成するための授業ではないため、市民向け講演と共通点は多いでしょう。
しかし、市民向け講演と大学の授業との間には次のような相違点もあります。いくつかの相違点は、講演をデザインするときに念頭に置く必要があります。
- 授業のように全15回、計30時間といったまとまりではなく、講演は1回きりのことが多いでしょう。そのため、聞き手のニーズや持っている知識を捉えそこなうと、授業のように後から軌道修正することができません。
- 授業では学生がどれだけ身についたのかをチェックするためにテストなどを実施することができますが、市民向けの講演ではあからさまな評価をしてそれを内容や方法に反映させることができません。聞き手の顔や反応を見ながら進めるなど少し方法を考える必要があるでしょう。
- 授業では、単位を取りたい、専門知識を身につけたいなど、学生の側に学習への強い動機づけがあります。講演会にやってくる市民には、特定の強い動機を期待できません。学びたい、と思っている人々は多いと思われますが、その内容はもっと漠然としていますし、アカデミックな雰囲気を味わいたいなど、別の動機で来る人々も多く見受けられます。
- 大学や科学者の代表としての振る舞いが授業以上に求められます。多くの市民にとって、大学教員や科学者に接する機会は限られています。したがって、講演でのあなたの言動は、大学教員や科学者に対する彼らの見方やイメージに影響を大きく与えるでしょう。
2 講演の構成をつくる
話を「物語」として構成する
一回限りの講演は、学会発表とも授業の一コマとも違います。そこでは論証が望まれているのではありません。科学的な議論を、聞き手が受け入れやすい形に変換することが必要です。このことを指して、講演で科学者は「物語」を語るのだ、とよく言われています。論理的厳密さや論証の緻密さではなく、一貫した筋と意味を与えることがポイントです。
「物語」として講演内容を構成する際の注意点を挙げておきましょう
- 主人公を設定する。自分の私的な研究史の形で語ろうか、科学史上の高名な研究者の発見物語として語ろうか、それとも、(炭素循環の話をするときに)炭素原子を主人公にしてみようか、一人の患者さんがどのようにして回復していくかというストーリーにしようか、と考えます。
- 「物語」を、出来事の経過を時間に沿って叙述する「ヒストリー」として語ろうか、最初に謎を示して、それを解いていく「問題解決」として語ろうか、といったことについて考えます。
講演の構造をしっかりつくる
あなたの講演を、導入、展開、まとめの3つのパートに分けて構成しましょう。これは一般的なプレゼンテーションにおいて推奨されている方法で、教師が授業の指導案を作成する際にも使われている枠組みです。3つの場面に区切ることにより、それぞれのパートにおいて重要なことが明確になります。
- <導入部分のつくりかた>
- 「それでは○○先生、よろしくお願いします」と紹介された瞬間は、話し手と聞き手の双方に不安と期待が交錯し、なんとも言えない緊張感がただようものです。あなたと聞き手が安心して講演に取り組めるように、適切な導入を設計することが求められています。具体的には、以下の5点を導入の時間に含めることを考えましょう。
- 自己紹介
- あなたは何者なのか。なぜあなたがこのテーマを話すのか。このテーマに対してあなたはどのような研究を進めてきたのか。また、あなたが責任もって話すことのできる領域はどの範囲なのか。
- 注意の喚起
- 聴衆の注目をつかみ、おもしろい話が聞けそうだという期待を持たせると同時に、あなたが友好的で親しみやすい人であるという印象を与えるために、以下のような話題から話の口火を切ります。
- 多くの人が関心を持つようなニュースを紹介する
- 疑問を抱かせるような写真や事実・データを提示する
- 聞き手の先入観を指摘する。「ゴリラは凶暴な野獣だと思っていませんか?」
- 聞き手を驚かせる。「実は、恐竜は今でも生きているんです(実は鳥類のことだという種明かしを後でする)」
- 簡単なクイズの実施
- 話題提供の目的の周知
- 今日あなたが話す目的は何なのか。聞き手にどのような変化を期待しているか。話す内容が参加者にとってどのような意味があるのか。市民と語ることによってあなたは何を得たいと思っているのか。
聞き手が一番困るのは、講演者が講演を通してどのようなメッセージを送りたいのか理解できない時です。最も伝えたいメッセージを明確にして伝える必要があります。 - アウトラインの紹介
- 話す内容はいくつのパートに構成されているのか。それぞれのパートはどのような目的を持ち、相互に関連しているのか。
- 聞き手の持つ知識と関心の確認
- 今回の話を理解するために必要な知識はどの程度なのか。聞き手はどのような内容に関心をもっているのかについての確認。
- <展開部分のつくりかた>
- 講演の本体部分であり、最も長い時間に及ぶパートです。展開部を、内容上のまとまりをもったいくつかのユニットに分け、それぞれの要点を明らかにし、つなぎ合わせていく作業が必要となります。そのためには、事前に十分な構想を練っておくことが必要です。具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 内容を絞り込む
- 講演が失敗する一番の要因は、たくさんの内容を詰め込みすぎることです。一回かぎりでの市民との出会いを最大限活かしたい気持ちはよく分かります。しかし、こんな少しでよいのだろうか、と思うくらいに内容を厳選することが重要です。講演が予定時間より早めに終わってしまっても、質疑やディスカッションをすればよいのです。むしろ、そのほうが聞き手が望むところです。あなたには既知のことでも、聞き手にとってははじめてのことです。講演で、聞き手は、あなたの話を理解し、質問に答え、メモをとり、とかなりの知的作業を強いられます。一度に消化できる情報の量について、十分に考慮しなければなりません。
- 話題を順序よく配列する
- 話題があちこちに行ったり来たりしたり、難解で複雑な内容から始めたりすると、聞き手の理解を妨げます。展開順序を考える際には、単純なことから複雑なこと、小さいものから大きいもの、身近なものから身近でないもの、古いことから新しいこと、既知のものから未知のものなど、聞き手が理解しやすい順序を考えましょう。
全体の中で、それぞれの内容がどのように位置づけられ、相互にどのような関係があるのかを示すことが重要です。あるテーマから次のテーマに移るときは、一つのまとまりを話し終えたことを示してあげましょう。講演の途中と最後で、これまでに話してきた内容を適宜要約して、講演全体の中でいまどこにいるのかを示しましょう。 - ハイライトを演出する
- あなたの講演の中で、最も聞き手の印象に残したい内容の場面を演出しましょう。ここがあなたの講演のハイライトだということを聞き手にわからせるために、たとえば次のような工夫が可能です。
- ここが聞き所ですよ、ということを表情や身振りで表わす
- 「ここが一番大事なところです」、「今日これだけは覚えて帰ってください」と言葉で伝える
- スライドの形式や背景色を他の場面と変えることで際立たせる
- 問題解決型の物語として構成した場合などは、「こうして謎が解けました」と宣言する
- ダレないように仕掛けを工夫する
- 聞き手が集中して聞いていられるのは20分が限度です。それより長時間の講演を行うときには、途中で何カ所か目先の変わったことをして、聞き手の注意力をとりもどす必要があります。
- 小さな発見を要所要所に仕掛ける
- 途中で質問タイムをもうける
- 実物を見せる。映像や写真を見せる。少人数だったら回覧してもよいでしょう。現場の研究者であるあなたの最大の強みは、実物を知っていること、あるいは実物をもっていることでしょう。たとえば、超撥水加工技術について講演をするならば、ぜひ実物による演示を取り入れるべきです。紙皿の上をまん丸になって走り回る水滴や、水を入れても漏らない茶漉しの実物は、インパクト十分です。
- 実演やデモンストレーションをする
- クイズをしたり、聴衆に問いを発する
- 簡単なアンケートをする
- <まとめの部分のつくりかた>
- 「そろそろ時間がなくなってきたので終わりにします」と途中で終わらせる講演もありますが、あなたが講演に対して準備をしてきていないことを示してしまうので、これは避けなくてはなりません。まとめのパートをしっかりとつくることで、聞き手の内容への理解を定着させ、その後のディスカッションを活発にすることができます。また、聞き手が科学への意欲を高めるきっかけにもなります。まとめのパートでは、以下の点に注意しましょう。
- 物語に終止感を与える
- ひとつの話が終わりに達した、という印象を与えることが重要です。たとえば
- 冒頭で掲げた問いに最終的な解決を与える
- 身近な話題からはじまった講演では、また身近なところへ戻ってくる(進化の歴史の話がヒトにまで達して終わる、素粒子の話が、身近な物体が存在している理由の話につながる)
- 過去の話が現在につながる(「こんな風にして、みなさんがお使いになっているコンピュータが開発されたわけです」)
- 将来の予測をする。あなたの研究の今後の夢を語る。
- 内容の定着を図る
- ざっと、講演の内容を振り返って、何が重要なポイントであったかをもう一度確認します。いくつか重要な概念を導入したときには、それらの相互関係をまとめて、聞き手の頭の中に見取り図を描いてあげます。
まとめの最も大事なポイントは一文で述べるようにします。「今日の話のポイントは、第一に、第二に、第三に…」とだらだらやっていると、下手をするともういちど講演を繰り返すことになってしまいます。 - 先に進みたい参加者への手引きを与える
- 進んだ内容の参考文献、参考にできるサイトなどを紹介します。質疑のとき、あるいは講演終了後に必ずと言ってよいほどこれらについての質問がなされます。あらかじめ、ハンドアウトなどに文献表、URLアドレスなどを書き込んでおけばよいでしょう。あなたの次回の講演がある場合にはそのスケジュールを告知します。
- ディスカッションにつなげる
- 話しっぱなしではなく、ぜひディスカッションの時間をもうけましょう。もし、あなたが聴衆と議論したいテーマがあるのならば、「ご静聴ありがとうございました。この後、こういうことについてみなさんのご意見をうかがいたいのですが、よろしいでしょうか」と、ディスカッションのテーマを投げかけます。
- まとめのパートはできるかぎり短くする
3 大勢にたいする話し方
一言で言えば、学会発表や授業よりもさらに「大げさに」、「芝居がかった」やり方をとればよい、ということになるでしょう。
- 声の出し方、大きさ、テンポについては、いつもより大きめの声で、ゆっくりめに語りかける、というのが鉄則なのですが、無理は禁物です。「いつもよりちょっとだけ」を心がければよいでしょう。
- あることがらを強調したいとき、ふつうは声を張り上げることが多いでしょう。しかし、講演の際は、ただでも大きめの声で明瞭に話しているので、これはあまり効果がありません。むしろ、沈黙をうまく利用することがかえって効果的です。強調したい語や文の前後に休止を置くことによって、聞き手の注意を惹き、その語を際だたせることができます。「これが、みなさんもどこかでお聞きになったことがあるはずの、(休止、聴衆を見回して)CP対称性の破れ(休止)というものです」
- あるいは、逆にそこだけ声を潜めることによって、強調することすらできます。
- 文章は、論文のときのような複雑な構文は避けましょう。一つ一つの文を短く簡潔にすることが重要です。できれば単文をブロックのように積み上げて話すのが理想です。
- また、つねに聴衆に語りかけるタイプの言い回しを使いましょう。「この図のここのところが、海馬です」ではなく「この図を見てください。ここに小指ほどの細長いものがありますね。これが海馬です」。「ダーウィンが、自然選択で進化が説明できると考えた理由は、…です」ではなく、「では、なぜダーウィンは自然選択で進化が説明できると思ったんでしょうか。ちょっと不思議ですね。答えを言っちゃいましょう。実は…」
- 適宜、聞き手に問いかけながら話を進め、できるかぎり講演を双方向的なものにしましょう。「みなさんも宇宙はビッグバンで始まったということはご存じだと思いますが…」ではなく、「宇宙がビッグバンで始まった、ということを聞いたことのある方はいますか(手を挙げる動作)、ああ、やっぱりたくさんの方が手を挙げてくれましたね。じゃ、ビッグバンって何でしょうか?」という具合です。
- 話し言葉では同音異義語の区別や漢字でどう書くかが伝わりません。まぎらわしいときには「試案、こころみの案の方です」あるいは「これを海馬っていうんです。海の馬と書きます」といった具合に説明する必要があります。
4 非言語コミュニケーション
聞き手は講演者の声だけを聞いているわけではありません。講演者の服装、目の動き、表情、動作などにも注目しています。講演で伝わるメッセージには、こうした非言語的なものが含まれています。これらをすべて意識的にコントロールすることは、私たちにはできない相談なのですが、それでもいくつか注意すべきことがあります。
- あなたの体、顔、視線を聴衆に向けましょう。これは基本中の基本です。スクリーンの方をずっと向いていたり、原稿に目を落としたままで話してはいけません。自信なさそうに見えます。話と話の合間に、聴衆を見渡して「わかっていますか?」というメッセージを送りましょう。
- 講演の達人になると、会場をぐるぐると歩きまわり、聞き手と会話しながら講演を進めていく方もいます。いきなりここまでは無理かもしれませんが、自己紹介のとき、講演中に聴衆に直接語りかけるとき、質疑のときなどに、聴衆側に歩み出たり、壇上から客席側に降りたりすることによって、相手との距離を縮めることが効果的です。
- 表情豊かに、動作を伴って語りかけましょう。驚くべき事実を話すときに驚いた表情をしてみせる、「なぜ、このような現象が起こるのでしょうか」と言いながら、考えるふりをする、といったことならすぐにできるでしょう。
- 相手の目を見て話せ、とよく言われますが、実際に目をじかにのぞき込むと威圧感を与えてしまいます。よく言われるのは、相手の髪の毛のあたりを見るとよい、というものです。
5 ツールの使い方
相当の達人でないかぎり、話術だけで1時間の講演をもたせることはできません。また、図やグラフが不可欠のテーマもあるでしょう。あなたの撮ったすばらしい写真を見せたい、ということもあるでしょう。そこで、ハンドアウト、黒板、プレゼンテーションソフト、VTRなどの助けを借りることになります。いくつかの注意点を指摘しましょう。
- ハンドアウト
- もし準備に余裕があるなら、ハンドアウトをつくって配布すると喜ばれます。ハンドアウトにはすべてを書いておく必要はありません。図、グラフ、引用、年表、参考文献などはハンドアウトの形で配るのが最もよいでしょう。
- プロジェクター
- PowerPointやKeynoteなどのプレゼンテーションソフトを使って講演をする人がほとんどです。次に何をしゃべるかのメモ代わりに使っている人が多いようです。しかし、これは使えば効果的、というものではありません。
- まず、そもそも使うべきかを考えて下さい。少人数のサイエンスカフェで、議論することがたいせつな場合は、むしろない方がよいくらいです。
- 言葉では伝えられない情報を伝えるために使いましょう。グラフや、ダイヤグラムや、図表、写真、動画を見てもらうために使うべきです。字を読ませるためだけに使うべきではありません。
- やむをえず、字だけのスライドをつくる場合、一枚のスライドに書き込む文は6から7行にとどめるようにします。ときどき、「後ろの人は見えないと思いますが」と言い訳しながら話をしている人がいますが、まったくナンセンスです。
- パソコン上できれいに見えるレイアウトは、投射すると字が小さく薄くて読みにくいことが多いです。暗い背景色に白、薄い黄色、薄いブルーなどの明るい文字を太く、大きなフォントで使うと、どのような会場でも比較的見やすいスライドがつくれます。文字に赤や緑を使うのは望ましくありません。
- 一つのスライドには一つのアイディアを記すようにします。
- 図もシンプルに作成します。1つの図に4色以上使わない方がよいでしょう。
- アニメーションは極力使わない。字が回転しながら出てきたり、次のページが徐々に現れてきたり、といった視覚効果は、本人が考えているほどに効果的ではありません。多用すると、船酔いのように気分が悪くなる人もいます。
- レーザーポインターも極力使わない。とりわけ、文を読みながら、その文をポインターでなぞるのは無意味です。目がちらちらするばかりで聴衆をいらいらさせます。指さすことができるならそれがベストです。図や写真などで注目して欲しいところを指すためだけに用いるべきでしょう。それすら、指示棒の方がまだましです。
- 機器の調整を前もって行っておきましょう。講演時間が始まっているのに、パソコンをつないでいるのは、聴衆に失礼です。
- 会場によっては、部屋を暗くしないとプロジェクターが見えにくい、ということがあるでしょう。このようなときは、講演が終わり次第、会場の照明を明るくしてもらって、質疑の時間はお互いの顔がよく見える状態で対話をするようにしましょう。
6 質疑応答
講演の際の質疑応答は何が飛び出すかわかりません。講演者にとって最も気がかりな時間です。でも、聴衆の方々は科学者に直接疑問をぶつけることのできる機会を楽しみにしています。また、あなたにとっても、市民が科学に対してどのような思いを抱いているかを知る、またとない機会です。ぜひ質疑・ディスカッションの時間を大切にしてください。講演がのびて、「時間がありませんので、質問はまたの機会に」となってしまうのは避けねばなりません。
質問への答え方
- 質問に対しては、まずお礼を述べる。「よい質問ですね。ありがとうございます」
- フロアからの質問は、往々にして他の聴衆には聞き取れません。また、聞き取れたとしても、質問に専門用語が使われていたりすれば、他の聴衆にはその内容が分かりません。あなたが、もういちど簡単に質問をまとめ、くりかえす必要があります。「…という趣旨のご質問ですね。」
- 質問が明確でない場合、解釈して質問者に確認してから答えましょう。「いまお尋ねになったのは、…ということでしょうか?」「…という趣旨のご質問だと理解してよろしいでしょうか?」
- 質問には、まず明確、簡潔、直接的な答えをしてしまい、あとから補足説明をします。「お答えは、ノーです。というのも、」「私はちょっと違った意見です。つまり、」「それは、心的外傷後ストレス障害、と呼ばれています。これはですね、」
- 質問に答えたら、その答えで適切だったかを質問者に確認します。「いまの答えで納得して頂けましたか?」「まだ、分からない点が残っていますか?」
- 権威による論証や相手の知識不足をあからさまに指摘するような答え方は慎むべきです。「科学者はだれもそんな風に思っていませんよ」「もう少し勉強して頂ければ分かると思います」などです。