データの種類を知る

データにはいくつかの特徴があります。基本的な特徴を知っておきましょう。

  • 一次統計(基礎統計)と二次統計(加工統計):一次統計は、統計調査等で得られたデータのことで、調査対象から直接得たデータで作成されたものです。一方、二次統計は一次統計を利用・加工したデータです。
  • 公的統計と民間統計:公的統計は国や地方自治体が作成する統計で、大規模調査が多く、標本抽出も適切で、信頼性の高さが特徴です。また、経済、外交、教育、環境など幅広い分野をカバーしています。民間統計は業界団体や民間調査会社が作成する統計で、市場調査、利用調査、意識調査など特定のテーマに関する細かいデータが得られます。たとえば、男性の美容意識調査、スマートフォンアプリの利用調査などがあります。
  • 悉皆(しっかい)調査と抽出調査:悉皆調査は、調査対象からもれなくデータを集める調査で、国勢調査など国が行う大規模調査で多く行われます。抽出調査は、調査対象から一定数を抽出して行う調査です。民間調査のほとんどは抽出調査ですが、抽出の方法によって信頼性が下がる場合がある点に注意が必要です。

白書にあたる

データを参照するにあたって、自分が求めるデータがどこにあるのかわからないということがあります。その場合は、まず白書を参照するとよいでしょう。白書は、社会や経済の実態について、政府が行った統計調査の結果を用いながら解説した報告書です。図表やグラフが豊富に掲載されているので、自分の関心のあるテーマについてどのような統計や調査結果があるかを知る手掛かりとして活用できます。白書は、中央図書館にあるほか、各省庁のウェブサイトでも公開されています。

データを探す際は図書館の学習相談カウンターで相談することもできます。また、図書館の「参考図書」では、どの白書のどのページにどのデータが書いてあるかを知ることができます。「参考図書」は通読のためではなく、必要な項目のみを参照する図書です。学習相談カウンターで使い方を相談してみましょう。

提供元 データベース
国内 総務省統計局 「e-Stat」
http://www.e-stat.go.jp/
国外 国連統計局 「UNData」
http://data.un.org/

データベースを利用する

政府が行う公的統計の多くは、データベースから取得することができます。キーワードで検索することもできますが、多数の検索結果が示され、選択に迷うことになります。上に示したように白書等で目的のデータが掲載されている調査名を事前に調べておくと、より効率的に目的のデータを得ることができます。

多くのデータは、表計算ソフトのファイル形式で取得できます。以下は、国内外の代表的なデータベースです。

表やグラフを作ってみる

データの参照に慣れるには、文献に掲載された図表やグラフを自分で作ってみることから始めましょう。文献に示されたデータの出所を参考に、データベースからデータを取得します。それらを表計算ソフトで加工し、文献と同じ図表やグラフを作成します。

この結果、できたグラフが文献と一致しない場合があります。たとえば、「その他」に含まれる項目の定義が異なっている、一部の項目のみをグラフにしているなどです。グラフを注意深く比較しながら、単位や年号にも気をつけながら、同じものとなるようデータを加工します。こうした検証作業は、著者がどのようにデータを扱ったかを理解することができるとともに、不正や不適切な操作がされていないかの確認にもなります。

そのため、レポート等で文献から図表やグラフを引用する際も、文献の図表を貼り付けるのではなく、できるだけ自分で元データから作成するようにしましょう。データを深く理解できると共に、データ参照のスキルを向上させる近道です。

データのウソに気をつける

民間統計には興味深いデータが多くありますが、その多くは抽出調査です。抽出調査には、代理記入を防いだり質問に誤解なく答えてもらうために調査員が訪問して調査するものもあれば、事前に登録したモニターにインターネットで答えてもらうものもあります。そのため、参照するデータの信頼性に気をつけましょう。たとえば、回答者が若者に偏っている、大都市に住む女性に偏っているなどの特徴がある場合は、慎重に使用します。

また、調査の主体にも気をつけます。たとえば、ある食品に健康増進効果があることを示した大学病院の調査は、一見信頼できる調査主体ですが、特定の食品会社からの受託研究費によって行われた調査である場合、慎重に判断することが必要です。

発行|
名古屋大学教養教育院 & 高等教育研究センター
初版|
2018.3.20
作成|
中島 英博