1.4 思考の整理に役立つノートをとろう
高校まで、あなたのノートはクラスメイトの模範だったかもしれません。ノートなんて楽勝だ、と思っているかもしれません。しかし油断しないでください。大学の授業でのノート作成には、高校までとは異なった難しさがあります。それは、次のような前提です。
・授業で扱う内容が格段に難しくなる
・大学教員はていねいに板書してくれるとは限らない。大事なことがしばしば口頭のみで語られる
・教科書を使うかどうか、どのように用いるかも人によって異なる
これは大学だけではなく、実社会においても同じです。もしあなたが新聞
記者になったとしましょう。インタビュー相手は、あなたがきれいにメモを
まとめやすいように順序立てて話してくれるという保証はありません。あな
たがエンジニアだとして、新商品の開発コンセプトについて設計者から説明
される時も同じでしょう。相手がつねに自分の理解度に合わせて、丁寧に説
明してくれるとは限らないのです。自分の理解を促し、深めるためには、よ
いノートをとることが大事です。
大事なことは「自分にとって役に立つノート」であるということです。役に立つということは次のことを意味します。
・ノートをとることが思考の整理になる
・読み返すことで、忘れかけていた記憶を再現・整理できる
・理解できていない箇所を確認することができる
・その後の学習の手がかりになる
ティップス11:どの授業でもノートを用意しよう
最初にやるべきこと、それはノートを買うことです。授業では机の上にノートを出しましょう。他人のノートをあてにせずに、自分でノートをとりましょう。他人のノートをあてにすると、横着になって自分でノートをとる習慣がつかなくなってしまうので、長い目で見ると学習の妨げになります。
ティップス12:まずは正確に書き留めよう
まずは、教員が受講生に伝えたいことを正確に書き留めることが大事です。一般的に、教員が強調したい内容を表現するときには、丁寧に板書する、図示する、大きな声で話す、ゆっくり話す、繰り返し話す、事例を挙げる、重要だと考える理由を挙げる、学生に説明させる、などの方法をとることが多いでしょう。こうした教員のサインを見逃さないことが重要です。
ノートをきちんととらないと、せっかくの貴重な情報を逃すことになります。それは本当にもったいない。教員によってはプリントをたくさん配布する人もいますが、プリントを受け取るだけで満足してしまわないように。自分の頭を使ってノートをとっておかないと、後でプリントを読み返しても、何が重要なのか思い出せなくなってしまいます。
実験の授業において実験記録としてつける実験ノートは、講義のときにと
るノートとは違う意味を持っています。実験ノートには、手順、観察したも
の、測定データなどを、正確に、そしてすべて記録することが求められます。結果がうまく出ない時でも、その内容をきちんと記録に残さなければなりま
せん。実験ノートは発見や発明を裏付ける証拠資料となるものだからです。
試行錯誤の過程をきちんと実験ノートに書く習慣をつけましょう。1 年生のうちにこの習慣を身につけておくと、研究室に配属になってから、また、卒業後に研究や開発の仕事をするようになってから、大いに役に立ちます。
ティップス13:ノートに自分のコメントを添えておこう
教員の説明を書き留めたら、授業内容について、あなたがどのように考え・感じたかもノートに書き留めておきましょう。たとえば下記のようなケースがありえるでしょう。
・教員の意見に賛同する場合(なるほど、さすが、すごい、おもしろい、
など)
・納得できない、疑問を感じる場合(なぜ、どうして、ホントにそうか、
など)
・内容が理解できない場合(意味がわからない、問題が解けない、など)
「何がわからないのかがわからない」という状況にならないように、その時点での感想・理解度を自分の言葉で添えておくと良いでしょう。落書きやイラストでも構いません。ノートをとる上で重要なことは、授業で説明される内容を機械的に暗記することではなく、あなた自身がそれをどう受け止めたのかをメモしておくことです。
ティップス14:復習するための手がかりを記しておこう
最後は、自分で発展的な学習を行うための手がかりを記しておきましょう。これは、理解が十分でない部分を補完する意味でも、興味を抱いた部分を掘り下げて学ぶという意味でも大事です。特に、教員が授業中に紹介した参考文献は貴重な情報です。友人からのコメントも役に立つでしょう。授業で取り組んだ練習問題なども、どこが十分にできなかったのかを記録しておくとよいでしょう。
作成したノートを振り返るのは、試験やレポート作成時など、時間が非常に限られた状況であることが多いと思います。すぐに対策を立てようと思っても、手がかりがないと時間オーバーになってしまいます。ふだんから、こうした手がかりをノートに残しておくとよいでしょう。たとえば、
・あとで○○を調べること!
・プリントをチェック!
・ここはあとで練習問題にトライする!
・よくわからん!友だちに聞くべし!
これらを実践したとき、あなたのノートは単なる授業記録としてだけではなく、より発展的な学習のためのアイデア集になることでしょう。
ティップス15:人のノートを借りても役には立たない
講義ノートは受講した学生の数だけ存在しますし、そこには受講生一人一
人の個性が反映されます。ただの記録ならば、ノートではなくICレコーダ
ーを用いればよいのです。ノート作成はただの記録ではなく、自分の頭の整
理でもあるので、その方法は人それぞれ異なります。友だちのノートをコピ
ーしても、それはあなたにとってわかりやすく整理された内容とは限らない
ので、うまく理解できないのは当然なのです。ノートは自分で工夫しながら
とることが大事です。
【先輩からのアドバイス】
・発言者(教員でも学生でも)が何を訴えたいのかを理解する。(経済)
・落書きしながらノートを取る。その方が覚えていたりすることもある。
(工)
・ノートは因果関係を含めて細かく書く。(経済)
・人の意見(特に教員の意見)を疑うこと。「言説」というものは容易に人を拘束しうる。簡単に人の意見を鵜呑みにすることは自分で考えることを停止し、視野を狭めてしまうのである。人の意見を聞くだけでなく、さらにそれを自分の中で再消化し、自分の意見を形成することが重要だ。(法)
【教員からのアドバイス】
・もしテキストがある場合は、できれば予習して、疑問点をノート(あるいはルーズリーフや情報カード)にメモしておく。講義に出たときに別のノート(私の場合はルーズリーフを使っていた)に教員の言った重要な事柄をメモし、即座に疑問が浮かんだときには自分のコメントを書いておく。講義中に、それについて質問をできればして、できない場合は、その疑問点についてインターネットなどを活用して調べる。ノートには矢印を使いながらリンクをつけて事柄の関連を見えるようにする。ノートの内部やインターネットのリンクをいろいろたどってみることで学問がどんな感じで結びついているのかイメージをつかむ。自分がやっていることが少しでも見えていないと、不安だし、やる気も起きないものね。
・実験の測定値が教科書通りにならないからといって、まちがっていると決めつけないで下さい。実験は生き物ですから、誤差が出るのは自然なことです。なぜ誤差が出たのか、それは許容範囲か、間違えたとしたらどこがいけなかったのか、グループで話し合ってみて下さい。
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