戦略を練る
市民の声を受け止める
1 大人数向けの講演をできるだけ双方向的にするための工夫
講演はどうしても一方通行になりがちですが、うまく工夫すれば、フロアの参加者から意見を引き出して、より双方向性を高めることもできます。
- 簡単なクイズをだして手を挙げてもらう
- 休憩時間をつかって質問カードに記入してもらう
- となりの人と何がしかの作業をしてもらう
2 場をしつらえる
- 講演終了後や休憩時間にも会場にいる
- 懇親会を設けて「今日のイベントはどうでしたか?」と尋ねる
- 権威的でない会場設営をする
(例 ディナーショー形式、床に車座)
- 【コラム】
- 『珍問・難問 宇宙100の謎』
3 市民からの問いかけに戸惑ったとき
あなたの専門領域外の話題
- 基本的にはできるかぎり答える
(例 「これが私のお答えできるすべてです」) - 質問者が自分で答えを探すための情報を提供する
(例 「ご質問になった問題は、○○学という分野が扱っています。たとえば××さんの書いた本をお読みになるとよいと思います」)
科学のみによっては答えることのできない問題
例「日本の農業に遺伝子組み換え作物を導入するべきか」、「薬剤を用いた脳のエンハンスメント(機能増強)をしてよいか」
- 科学的研究ではどこまで分かっていて、どこからがまだわかっていないのかを答える
- 質問には、科学によっては答えることのできない社会的・政治的・倫理的・文化的要素が含まれていることを指摘する
- そのような問いには、市民による合意形成を目指すしかないと伝える
- そうした合意形成において、科学者は何ができる(とあなたが思っている)のかを伝える
そのうえで、あなたが一市民として、その問題にどういう立場をとりたいと思っているのかを、答えてもよいでしょう。このような質問は、市民の方々と、科学と社会の関係について議論できるまたとないチャンスです。
明らかに文脈をはずした話題
例 「相対性理論は間違っていると思うのですが」、「血液型が性格に影響するという確かなデータがあるのですが、どう思いますか」
- まず「なるほど、そういう考え方もあるのですね」と受け止め、言下に否定しない
- 自分の立場をはっきりさせる
(例 「私はそうは思いません」、「相対性理論は、十分に証拠が積み重ねられており、非常によく検証された理論であると、私は思います」) - やりとりに長時間を費やさず適切なところで切り上げる
(例 「申し訳ありませんが、他の方も質問がおありのようですので」) - 議論したり正しく科学知識を伝えたりしたいなら、「講演終了後、お話を伺いましょう」と言う