コラム

コラム 1 名古屋大学留学生後援会について

名古屋大学留学生後援会は、昭和60(1985)年に発足し、留学生や指導教員等の経済的・精神的負担等の軽減・解消するための取り組みを続けています。名古屋大学留学生会の活動や留学生の不測の事故・疾病への経済的支援のほか、賃貸住宅入居の手続きの際、以前は指導教員等が行っていた連帯保証を留学生後援会が機関保証する等の事業を行っています。その際には、「留学生住宅総合補償」に加入することを機関保証の条件としています。毎年1月頃、留学生後援会から入会依頼が教職員に配付されますので、どうか留学生への経済的支援にご協力くださるようお願いします。

コラム 2 日本留学のための3点セット

外国人が日本に留学するには、(1)入学許可、(2)在留資格、(3)査証(ビザ)の3つが必要です。名古屋大学では入試等によって留学生の受け入れを決定した後、在留資格認定の代理申請を法務省の入国管理局に対して行っています。入国管理局は個別に審査を行い、在留資格を認定します。この手続きには2ヵ月程度を要します。入管から在留資格認定証明書が発行されたら、名古屋大学はこれと合格証明書を留学予定者に郵送します。留学予定者はそれらを最寄りの日本大使館あるいは総領事館に持参し、日本入国査証の発給手続きをとります。法務省が行う在留資格認定と外務省が行う査証の発給は別物です。こうした一連の手続きにはかなりの時間を要しますので、受け入れる際には十分にご注意下さい。

コラム 3 外国語を話すと内容が幼稚になる?

不自由な言語を駆使する時、限られた語彙の中で話そうとするため、意図を十分に伝えられないことがあります。内容が簡略化されたり一貫性が失われて、発話が意図とずれてしまいがちです。ずれた内容につじつまを合わせようとするために悪循環に陥り、極端に幼稚な表現になってしまうという現象が報告されています。積極的に外国語にチャレンジする人ほど、物事の理解が浅く、優柔不断だとみなされがちです。成人期以降に新たな言語習得を経験した人なら、誰もが思い当たる節があるのではないでしょうか。われわれ教員は、留学生の日本語表現が不十分だからといって、彼らの思考能力も未熟であろうと判断しないように注意する必要があります。

参考リンク:Q51. 授業中のディスカッションで留学生の日本語表現力が不十分だと感じる。

コラム 4 日本の安全神話がもたらした悲劇

日本の生活は安全だという話を過剰に信じて油断してしまい、苦い経験をする留学生がときどきいます。自宅を訪問してきた自称「市の職員」に玄関のドアを開けて質問に答えてしまったり、自称「保健所職員」に在宅健康診断をされたという例もあります。安全だと信じる気持ちに加えて、日本語で対応するのに必死で、「何かおかしい」と察知する注意力が低下してしまったのかもしれません。インターネットショッピングで格安の中古車を購入したらそれが盗難車だった、購入したはずの高額物品が届かなかったなどで、何十万円という貯金を一気に失った留学生もいます。

こういう場合、留学生は自分自身にも過失があると感じると、大学や警察に届けず、自力で処理しようとして多くの労力と時間を費やすことがあります。もし留学生が落ち着きをなくしたり、何かに時間やお金を費やしているようだと感じられる場合は、声をかけてみてください。

コラム 5 留学生が周りから誤解されていたら、守ってあげよう

留学生の多くが直面する問題の一つに、ごみの分別があります。実際、名古屋大学では留学生寮の入居オリエンテーション等で説明していますが、複雑な日本のごみ分別システムを完全に理解することは難しく、たまにアパートの管理人と問題になることがあります。

アパートの管理会社から大学に「留学生がごみを放置しているので、何とかしてほしい」と苦情を寄せられることがときどきあります。留学生は、日本での生活知識が不十分なことから、周囲から誤解をされがちです。そのときは、中立的な立場で彼らの話を聞き、できるだけ周囲の誤解をといてあげるように力になってあげてください。また、ゴミを分別することの意味(リサイクルの奨励)や収集日の前夜に出してはいけない理由(カラスに荒らされる、悪臭などの原因になるなど)について、チューターに説明してもらうとよいでしょう。

参考リンク:愛知県内において外国人が生活するのに役立つローカル情報を知りたい

コラム 6 高コンテクスト文化と低コンテクスト文化

日本では、相手にものごとを伝えるときに直接的な言い回しを避け、婉曲的な表現を多用することがあります。また、「空気を読む」と表現されるように、相手の気持ちを察することがコミュニケーション上で重視されると言われています。

文化人類学者のE.T.ホールは、日本のように特定のコンテクスト(文脈や状況)に依存する割合の高い文化を「高コンテクスト文化」と呼び、コンテクストに依存する割合の低い文化を「低コンテクスト文化」と名付けました。日本人からみると、外国人は「わかりきったことを、くどくど説明している」ように感じられるかもしれません。逆に、外国人からみると日本人は「言葉で明確に表現してくれないので、何を考えているのか十分にわからない」と思うかもしれません。

留学生が流暢な日本語を話す時はなおさら、日本人は無意識のうちに彼らに日本人としての言動を期待してしまいがちです。でも彼らに「そんなことは言わなくてもわかるでしょう」という論理はなかなか通じません。互いの誤解を少なくするために、研究室運営上の「暗黙の了解」をできるだけ言語化してみるといいでしょう。

参考リンク:Q53. 留学生から「先生の話し方はわかりにくい」と言われた。

コラム 7 ベジタリアンにもいろいろある

留学生の中にもベジタリアン(菜食主義者)の人がいます。ベジタリアンにも程度があり、動物系の原料から作った調味料やスープすら食さない場合や、肉はダメだが卵や魚は大丈夫という人もいます。ベジタリアンではないが、刺身などの生ものは食べられないというケースもよくあります。食べられないものがあるかどうかを最初に確認しておくといいでしょう。

参考リンク:Q29. 留学生によっては宗教的理由により食べられない食物がある。

コラム 8 留学生と「おみやげ」

私は一時帰国する留学生にお土産を頼むことがあります。ひとつは家族と一緒の写真です。後で見せてもらいます。もう一つは(最近は)こすもす保育園と学内の学童保育所に置くための絵本1冊です。お金を先に払っておいて、その人の「お勧めの一冊」を買ってきてもらいます。自分が小さい時に一番好きだった絵本を持ってきてくれた人もいて、それが日本で子どもたちに読まれていくのを喜んでくれました。名大の保育園ならではの蔵書です。

参考リンク:Q33. 一時帰国から戻った留学生がお土産を持ってきてくれた。受け取ってよいのだろうか。

コラム 9 留学生の人間関係

いつも同国人と一緒にいて、母語で話をしている留学生を見かけることがあります。しかしこういった学生を一概に「日本人とコミュニケーションをとらずに、日本社会に適応しようとしない留学生」とみなす前にもう少し観察してみてください。ある研究報告によれば、留学生をサポートする存在としては、学業に関しては現地人(日本人)学生、一緒に遊ぶのは他国人留学生、出身文化を共有するのは同国人留学生や同文化圏の留学生がその役割を担っているそうです。もしかして、その学生は必要に応じて接する相手を変えているのかもしれません。

参考リンク:Q32. 友人関係について悩んでいる留学生は多い。日本人学生は冷たいと考える留学生もおり,友人関係,学術コミュニティを形成しづらい。

コラム 10 留学生に活躍の機会を与えよう

ゼミ発表や実験室では緊張気味の留学生も、別の場面では水を得た魚のように活き活きとすることがあります。現地に赴くことが困難な国からやってきている留学生は、現地の最新状況を聞くことのできる貴重な存在です。また、学会等で海外からゲストを招聘する際にも、留学生にアテンド役をお願いすると、日本の文化をクリティカルな視点から紹介してもらえるかもしれません。留学生本人にとってもよい勉強の機会になるでしょう。パーティーの場で民族音楽や民謡を披露してもらうのもおもしろいかもしれません(強要してはいけませんが)。受け入れた留学生の長所や得意技を一つでも多く見つけてあげましょう。

参考リンク:Q61. 留学生が研究室のなかで孤立しがちである。どうしたらよいか。

コラム 11 インフルエンザに神経質な日本社会

日本ではインフルエンザが流行すると、テレビ等のマスコミでその症状や対処について過剰なまでに報道されます。受験や論文の締め切りを控えている日本人学生は、インフルエンザに対して神経質になります。しかし、留学生のなかには日本人学生ほど多くの情報を得られず、その症状に対してそれほど大きな注意を払わない人もいるようです。

インフルエンザが流行している時期に、咳と熱のある留学生が2日間だけ休んで、早くも3日目に研究室に出てきたことがありました。それに対し、一部の日本人学生が強い抗議をし、せめてマスクをするように指示をしました。その留学生はそれを聞き入れず、研究室で黙々と研究を進めました。そのことが、日本人学生と留学生の間で大きな衝突を招きました。

最終的には関係者による話し合いの場を持ち、お互いの落ち度と不理解を反省し、謝罪しあうことで一件落着しました。学生たちは、教員の見えないところで異文化衝突をしていることがあります。

参考リンク:外国語で対応が可能な医療機関を見つけたい

コラム 12 留学生の郷土料理に舌つづみ

私の知っている研究室では、年末になると留学生たちがそれぞれの郷土料理を手づくりで持ってきて大学内でパーティーを開きます。ふだん見たこともない料理が並び、壮観です。ふだんは緊張してゼミ発表している留学生も、この日ばかりはリラックスした雰囲気でお国自慢を聞かせてくれます。日本人学生も負けじと知恵を絞って、いろいろなものを持参してきます。教員の私も、ごちそうを食べているばかりではなくて、そろそろ何か一芸をやらなければと思案しているところです。

参考リンク:Q61. 留学生が研究室のなかで孤立しがちである。どうしたらよいか。

参考リンク:Q65. 受験時や入学時の意気込みとその後の差が大きく,なかなか研究がスムーズに進まない留学生がいる。

コラム 13 研究成果を悪用されないように注意しよう

国際社会の安全を脅かすテロリストなどに研究者の科学技術が悪用される恐れがあります。このため、理科系の学部・研究科(あるいは理科系の専門分野)の教員が特定国・地域から留学生や研究者を受け入れる場合は、万が一、そうした可能性がないかどうかを受け入れ教員が事前に確認する必要があります。ここで言う特定国・地域とは、イスラエル、イラン、イラク、インド、北朝鮮、シリア、台湾、中国、パキスタン、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、コートジボワール、エリトリア、レバノン、リベリア、シエラレオネ、ソマリア、スーダンが該当します(2011年6月現在)。

具体的には、イスラエル、イラン、インド、北朝鮮、シリア、台湾、中国、パキスタン、アフガニスタンの9カ国については、経済産業省安全保障貿易管理のホームページ「外国ユーザーリスト」を開き、受け入れ予定の留学生の所属大学名や所属企業名が掲載されていないかどうかを確認してください。もし掲載されている場合は、学内の産学官連携推進本部の輸出管理スーパーバイザー寺内氏(電話747-6702)までご一報ください。受け入れに際しての安全保障輸出管理上の注意事項や「安全保障輸出管理の電子申請システム」による申請方法についてご説明します。

外国ユーザーリストの対象外であっても、輸出令上の懸念国(イラン、イラク、北朝鮮)および国連武器禁輸国(アフガニスタン、コンゴ民主共和国、コートジボワール、エリトリア、イラク、レバノン、リベリア、北朝鮮、シエラレオネ、ソマリア、スーダン)からの留学生受け入れを検討している場合も、念のため上記のスーパーバイザーに相談して下さい。安全保障輸出管理上のリスクが高いと考えられる場合には、受け入れの辞退をお願いすることがあります。また、確認の記録を残すため、原則として「安全保障輸出管理の電子申請システム」による申請が必要です。

コラム 14 留学生は学生定員に含まれるか?

グローバル30プログラムが発足する以前から、日本の大学における外国人留学生は学生の入学定員に含まれるのか、それとも定員外として扱われるのかについて議論がありました。国立大学では国費留学生の学生経費を積算する上で、彼らを定員外として扱ってきた経緯があるので、よけいに紛らわしくなっています。しかしながら本来的には、大学生の入学定員を定める大学設置基準(文部省令)においては、留学生であれ、社会人学生であれ、正規の学生として入学する者はすべて「定員内」として扱われます。つまり、留学生数が増えればその分だけ日本人学生数は減ることになります。

【参考文献】名古屋SD研究会編『教務のQ&A』名古屋大学高等教育研究センター、2011年

コラム 15 留学生と外国人学生は同一か?

留学生と外国人学生は入管法(「出入国管理及び難民認定法」)において同義ではありません。留学生とは法的には日本における在留資格で「留学」を有する学生を指します。これに対して、外国人学生とは「留学」以外の在留資格で日本に滞在している外国籍の学生を言います。外国人学生とは、たとえば「家族滞在」や「永住者」「日本人の配偶者等」のうち学生身分の者などが考えられます。

また、2010(平成22)年7月から入管法が改正され、在留資格「留学」と在留資格「就学」が一本化されました。以前は日本語学校や専修学校などに在籍する学生は就学生とみなされましたが、現在では大学や短大の学生と同様に留学生として扱われます。

【参考文献】名古屋SD研究会編『教務のQ&A』名古屋大学高等教育研究センター、2011年