2.3 他者の生命、人格、学習を尊重する
キャンパスの倫理の二つ目は、他者の生命、人格、学習行為を尊重することです。大学には知を求めてさまざまな人びとが集ってきます。名古屋大学でも多様な人びとが学習や研究を行っています。その多様性は、年齢、国籍、人種、言語、文化、性、宗教、家族形態、思想、障害の有無や種類など、幅広い概念を含みます。これらの多様性は、大学の活力を生む源です。あなたには、そうした人びとの多様性に気づき、他者の生命、人格、学習を尊重することが求められます。
(1)他者の生命を尊重する
他者の生命を尊重するとは、大げさに聞こえるかもしれませんが、「知の共同体」を維持するために最も基本的なことです。大学には人間の生命を脅かすような可能性のある場面が意外に多いのです。たとえば、劇薬などを使用する化学実験や廃液処理を行う場合は、決められた手順や教員の指示を守ることが求められます。また、キャンパス内の点字ブロックや歩行者専用通路の上に駐輪することは、他者の安全・生命を守るために決して行ってはいけない行為です。
コンパなどの場における飲酒の強要、特に一気飲みを強いることは、殺人につながる犯罪行為です。
(2)他者の人格を尊重する
大学には多様な背景をもった人たちが集まっています。そしてその多様性を大学は重要な価値として尊重しています。だから、授業中での発言やふとした会話の中で、他者の出身地や方言、身体的特徴、人種や性、年齢を差別するような言葉は、慎まなければなりません。そうした言葉を口にした本人に悪意がなかったとしても、言われた側は差別されているように感じることがあります。ふだんの何気ない一言、たとえば「あなたは○○高校出身だから、△△タイプね」というような紋切り型の表現が、もしかすると相手を傷つけているのかもしれません。
もちろん、侮辱やいじめなどのような悪意のある言動は論外です。こうした言動を他者が行っていることを目撃したら、傍観せずに、勇気をもって注意してあげましょう。注意されて初めて、自分が加害者だと気がつくケースも少なくありません。冷静に注意してあげることによって、相手は傷口を拡げずにすみますし、場合によっては周りから感謝されるかもしれません。
「ハラスメント」とは迷惑行為のこと
(3)他者の学習を尊重する
知の共同体では、他者の学習を尊重することが求められます。それは、他者の学習行動を妨げないとともに、他者の学習行動を促進することです。学習行動の妨害には、授業の途中入室や途中退室、教員やその他の学生が発表しているときの私語、自分に割り当てられた発表の無断キャンセル、図書館などの学習スペースでの迷惑行為(私語や飲食、携帯電話の使用など)があてはまります。こうした行為は、他者の学習意欲を阻害するだけでなく、知の共同体としての活力を低下させるものです。
反対に、他者の学習行動を尊重することは、大学に活力を与え、ひいてはあなたの学習を豊かにすることにつながります。たとえば、他の学生の授業中での発表や発言に対して賞賛したり、建設的なコメントを出すこと、授業中に積極的に発言・質問したりディスカッションに参加すること、学生同士で互いに学習をサポートすることなどは、長い目でみれば、あなた自身の学習の糧となるのです。
【先輩からのアドバイス】
・大学で特に気をつけるべきことは、やはり自分の意見を表明する際に、必
ず参考文献等を掲げ、出典に対して敬意を払うことです。私自身も一度、他
人の考えと自分の考えの区別を曖昧にしたレポートを出してしまったことが
あります。100%自分で考えることは難しいので、他者(先駆者)の意見を
参考にすることは許されますが、それをあたかも自作物のように発表するこ
とは決してやってはいけない行為です。自分自身の反省も踏まえて、特に守
るべきルールの一つと考えます。(法)
「学生がつくったキャンパスの倫理基準」
|