名古屋大学高等教育研究センター 第111回客員教授セミナー
少子社会日本の高等教育機会 -大学進学・選択行動の地域的差異から考える-
開催日 |
2023.07.20(木) 14:00-16:00
少子社会日本の高等教育機会 -大学進学・選択行動の地域的差異から考える-
オンライン
定員:500名
開催レポート
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登壇者 |
朴澤 泰男 氏(国立教育政策研究所高等教育研究部 総括研究官) |
応募締め切り | 2023.07.18(火) 23:59 |
キーワード:高等教育機会、大学進学・選択行動、地域
大都市圏と地方では、高校生の大学進学・選択行動はどう異なるのか。日本の高等教育機会のあり方を考える上で、そのことが持つ意味とは何か。一見、大きな違いに見える大都市圏と地方に共通した進路選択の構造はあるのか。本セミナーでは、公的統計や、高校生の進路に関する調査データの分析を通して、「進学する側」「大学を選ぶ側」の論理と、その地域ごとの文脈を読み解くことをねらいとします。
本セミナーは Zoom によるオンライン開催です。
オンライン参加の要件等
・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること。
・発言等ができる静穏な環境で参加できること。
以上をご確認のうえ、お一人様1アカウントにてお申し込みください。
申込多数につき、定員を増枠(100名→500名)のうえ、再募集いたします。奮ってお申込みください。
□録画映像のアーカイブ配信について
・当日の内容を録画し、後日、期間を限定して録画映像のアーカイブ配信を予定しております。アーカイブ視聴希望の方も申し込み期限内に申し込み手続きをお願いします。
・参加者の方がご発言等された場合、その映像・音声が録画に含まれることがありますので、あらかじめご了承ください。
使用言語
日本語
参加方法
参加申し込みされた方に後日お知らせします。
主催
名古屋大学高等教育研究センター[質保証を担う中核教職員能力開発拠点]
共催
東海国立大学機構アカデミック・セントラル
諸連絡
いただいた個人情報は、本企画運営の目的のみに使用いたします。
開催レポート
現代日本における高校生の大学進学・選択行動の地域的差異を検討し、少子社会の高等教育機会をめぐる政策課題について、一つの見方を示すための議論を行った。
大学進学率は都道府県間に違いがあるが、その地域分布は近年、3大都市圏で最も高く、より遠方になるほど概ね低くなっている。進学率は、県間差そのもの(だけ)が重要というより、その背後で起きていること、「その地域で顕著に見られる行動選択」の違い(構造)が重要である。大学進学・選択については、日本の中に「3つの世界」があると言えるほど地域的差異が顕著なため、「大都市圏」(1都2府5県)、「地方A」(24県)、「地方B」(北海道、東北、九州・沖縄の15道県)の3つの地域類型を仮に設けて議論を進めた。
県間差の「背後で起きていること」とは端的に、「大学進学希望の有無が両親年収に左右される傾向」が地方Bほど強いことである。高校生の進路を保護者に尋ねた調査を分析すると、子が男子の場合、年収による大学進学希望の差は大都市圏<地方A<地方Bとなっている。一方、年収による差は中3成績の低い方が、また男子より女子の方が大きいが、大都市圏では、低年収・低成績でも進学をせざるを得ない状況もあると見られる。
また、『学校基本調査』の調査票情報の分析結果によれば、大都市圏に偏在する入学難易度の高い私立大学への進学の多さが、大都市圏>地方A>地方Bの順となることが、大学進学率全体の同様の差も生じさせていることが分かる。進学先の地域については、「地元志向」の大都市圏、「大都市圏志向」の地方A、「(自県を含む)近県志向」の地方Bという違いがある。この違いは、進学の費用だけでなく、リターンの構造の相違によっても説明がつく可能性のあることが、大学教育投資の私的内部収益率の県間比較から明らかになる。
18歳人口の中では、大都市圏在住者の比重が増す趨勢がある。大学進学の文脈での「少子社会」の一つの意味は、地方の18歳が「少数者」になっていることだと言えよう。地方在住者は、進学費用だけに着目すれば、大都市圏と非対称な関係に置かれている。「大都市圏なら進学している成績」でも進学しない、「本来の学力」で入学できるより低い難易度へ進学するといった状況があるとすれば、公平性だけでなく効率性の観点からも問題がある。他方、大都市圏在住者にも、(域内進学が主流となる構造に起因する)理科系進学の困難など特有の不自由が存在し、地方振興策への潜在的不満も大きいと見られる。
高校生の大学進学・選択行動は、地域的差異が大きいものの、大都市圏も地方も費用は小さく、利益は大きくなるよう進路選択を行うと解釈できる点では共通の構造を持つ。少子社会日本の高等教育機会のあり方を考える上で、「大都市圏の不自由」、「地方の不利益」をともに踏まえることが重要と考えられる。