名古屋大学高等教育研究センター 第113回客員教授セミナー
FDプログラムとしてのティーチング・ポートフォリオとその派生ツールの意義とこれから
開催日 |
2024.02.29(木) 14:00-16:00
FDプログラムとしてのティーチング・ポートフォリオとその派生ツールの意義とこれから
オンライン
定員:100名
開催レポート
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登壇者 |
栗田 佳代子 氏(東京大学大学総合教育研究センター 副センター長・教授) |
応募締め切り | 2024.02.27(火) 23:59 |
ティーチング・ポートフォリオは、欧米では教育業績評価資料として定着しているが、日本では大学教員自身のリフレクションを導き、自らの気づきによる活動の改善を促すFDプログラムとして普及しつつある。本講演では、ティーチング・ポートフォリオだけでなくティーチング・ステートメントやTPチャートなど派生を含めた統合的な意義づけと整理を行い、FDプログラムとしての活用について展望する。
本セミナーは Zoom によるオンライン開催です。
オンライン参加の要件等
・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること。
・発言等ができる静穏な環境で参加できること。
以上をご確認のうえ、お一人様1アカウントにてお申し込みください。
※申し込みフォームに必要事項を入力し、回答を確認・送信してください。
回答が完了すると、入力したメールアドレスに登録内容が自動返信されます。迷惑メールに振り分けられることがありますので、ご確認ください。
参加方法
参加申し込みされた方にセミナー開催前日までにお知らせします。
主催
名古屋大学高等教育研究センター[質保証を担う中核教職員能力開発拠点]
共催
東海国⽴⼤学機構 アカデミック・セントラル
諸連絡
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開催レポート
本セミナーでは、教育者としての振り返りと成長に焦点を当て、ショーンの省察的実践家モデル(Reflection in ActionとReflection on Action)、コルブの経験学習モデル、そしてコルトハーヘンのALACTモデルをその理論的裏付けとして紹介しました。これらのモデルは、教育者が自身の実践を振り返り、経験から学び、理論と実践を結びつけることを通じて、より効果的な教育を行っていくことを促しますが、これまで、その具体的な方法については不足しているという現状がありました。
ティーチング・ポートフォリオ(TP)は、その点、振り返りを無理なく進められる方法の一つということができます。TPとは、教育者が自らの教育活動について振り返り、記述し、根拠資料によって裏付けた文書で、その構成要素は、教育責任、教育理念、教育方針・方法、成果・評価です。TPの作成目的は、教育改善と教育業績の可視化にあり、欧米ではすでに広く普及しており、日本でも普及の途上にあるといえます。
また、TPチャートは、教育活動の俯瞰と振り返りを行い、授業改善につなげる目的で使用されるA3判のワークシートです。TP作成の体験ツールとして開発され、短時間に作成することが可能です。ティーチング・ステートメント(TS)は、教え方の信念と実践について記述された、目的を持った、省察的な文書であり、ここではTPの要約として位置付けます。これは教育者の個人的な物語を含み、教育と学習のプロセスに関する信念とそれをどのように実践しているかの具体的な例が記載されます。この三者は、組織への導入の目的や規模、振り返りの深さなどで使い分けることが望ましいといえます。
今後、教員の業績評価の整備が進み、多角的な業績評価、特に教育業績の評価が重要視されるようになっていくでしょう。TP、TPチャート、TSは、組織の目的に応じた導入が求められており、形だけの導入は避けるべきです。目的を明確にし、教育の質を向上させることが重要です。また、学習ポートフォリオの概念も重要であり、教育者だけでなく、学習者自身も自己反省を通じて学習プロセスに積極的に関与することが推奨されます。これらの取り組みを通じて、教育活動の質が向上し、教育者と学習者の両方が成長することが期待されます。