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名古屋大学高等教育研究センター第115回客員教授セミナー

研究コミュニティの価値とは-学部ゼミナールと大学院研究室の調査データをひもとく-

開催日
2024.07.25(木) 15:00-17:00 研究コミュニティの価値とは-学部ゼミナールと大学院研究室の調査データをひもとく- オンライン
定員:100名
開催レポート
登壇者 伏木田 稚子 氏(東京都立大学大学教育センター 准教授)
応募締め切り 2024.07.23(火) 23:59

 本邦では100年以上もの間、学生がコミュニケーションを取りながら研究活動に励む場として、学部ゼミナールや大学院研究室が大切に引き継がれてきました。こうした研究コミュニティにはどのような価値があり、それは何によって支えられているのでしょうか。本セミナーでは、講演者がこれまでに行った複数の調査データを基点に、参加者の皆様とアイディアを共有し、問いへの答えを共創していけたらと考えています。

 

 本セミナーは Zoom によるオンライン開催です。

オンライン参加の要件等

・マイクが利用可能で、高速なインターネットに接続されたPC等が用意できること。

・発言等ができる静穏な環境で参加できること。

以上をご確認のうえ、お一人様1アカウントにてお申し込みください。

※申し込みフォームに必要事項を入力し、回答を確認・送信してください。

 回答が完了すると、入力したメールアドレスに登録内容が自動返信されます。迷惑メールに振り分けられることがありますので、ご確認ください。

 

参加方法

参加申し込みされた方にセミナー開催前日までにお知らせします。

 

主催

名古屋大学高等教育研究センター[質保証を担う中核教職員能力開発拠点]

 

諸連絡

   いただいた個人情報は、本企画運営の目的のみに使用いたします。

 

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開催レポート

 本セミナーでは、「研究コミュニティにはどのような価値があり、それは何によって支えられているのか?」という問いを掲げ、参加者の皆様とテキストベースでやり取りをしながら、答えを一緒に創っていくことを試みました。ここでの研究コミュニティとは、学部ゼミナールと大学院研究室を例に、「学生がコミュニケーションを取りながら研究活動に励む場」を指しています。 

 はじめに、問いに関するアイスブレイクとして、研究コミュニティの実践および参加経験、研究コミュニティの魅力についての考えを、オンラインフォームに書き込んでいただきました。あえて魅力という言葉を用いたのは、価値を主観的なよさとする見方に立ち、参加者が自身の経験に引きつけて思いを巡らす機会を設けたかったからです。例えば、「立場などに関係なく、研究内容について自由に議論できる」「科学的な知見と思考や生きる態度を身につけることができる」「相互扶助的に励まし合う環境に救われる」「好きを突き詰められる」などの声が集まりました。 

 続いて、学部ゼミナール、大学院研究室の順に、調査を通じて得られた知見を紹介しました。学部ゼミナールは、「少人数での探究に基づく共同体な学習環境」であり、研究を通じた教育という理念の下、知の創造を目指すドイツの大学で18世紀に誕生しました。19世紀後半に日本へ導入された後、専門分野における探究と教員・学生間の情緒的つながりを大切にしながら、汎用的技能(基礎的で転用可能な技能)が成長する場へ成熟したと考えられます。10年ほど前の質問紙調査では、教員がゼミ生の心理・状況面を理解して探究心の醸成を図ること、ゼミ内で結束性と互恵性の意識が育まれること、積極的な議論や課題遂行の支援を行うこと等の重要性を示しました。 

 大学院研究室については、文献レビューを基に「有機的で多義性のある、アジールのようなコミュニティ」という仮定を置き、今年2月にオンライン調査を実施しました。分析途中にはなりますが、大学院生は専攻や研究タイプにかかわらず、研究室での報告・議論・指導やインフォーマルなやり取りを通して、自身の研究に役立つ知識を得たり、研究の方向性を検討・調整したりできると推測されます。また、研究室が作業場のほかに書庫や憩いのスペースを有する場合、居場所としての機能が高まる可能性も見えつつあります。 

 以上を踏まえたセミナーの最後では、参加者が自身の経験をふり返り、学生にとっての研究コミュニティの価値に対する考えを、ウェビナーのQ&Aに寄せてくださいました。「自分としてこうありたいという形が、この数年実現していない」という教員の方々のお悩みに、少しでも具体的な知見をお返しできるよう、研究成果の可視化に励んでいきたいと思います。ご参加くださった皆様、ほんとうにありがとうございました。