経済学教育研究会セミナー
アメリカの大学における学問の自由の変容
開催日 |
2024.09.13(金) 13:00-15:00
アメリカの大学における学問の自由の変容
対面
定員:15名
開催レポート
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開催場所 | 名古屋大学東山キャンパス文系総合館5階 509会議室 |
登壇者 |
宮田 由紀夫 氏(関西学院大学国際学部国際学科 教授) |
応募締め切り | 2024.09.12(木) 23:59 |
講演概要
アメリカにおける大学の学問の自由は、テニュア制度と密接に結びついて発展してきた。大学が政府(国防省)や企業(産学連携)との関係を強化すると、学問の自由が脅かされることになる。さらに、保守派政治家や大口寄付者の干渉も顕著になり、テニュア制度も脅かされている。一方、キャンパスでもポリティカルコレクトネスの行き過ぎなど、学生自身が学問の自由を狭めるケースも見られる。アメリカの大学が直面する学問の自由の問題から、日本の大学が学ぶことは何か議論したい。
対象者
経済学関連教員
主催
名古屋大学高等教育研究センター[質保証を担う中核教職員能力開発拠点]
諸情報
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開催レポート
アメリカの大学における研究成果発表の自由は、国家安全保障のために制限を受けることがあった。大学側は軍事機密研究を行うことを否定してはいないが、初めから機密指定をして特定の施設で行い、キャンパスでの研究は国防省からの資金であっても成果の公開できる研究と区別することを望んであり、それが実行されている。
産学連携においても、スポンサー企業の圧力から不都合な結果の公表の制限を受けることがあった。大学はここでも成果を公表できない研究資金は受け取らない方針であるが、学科を丸抱えする包括的連携では、企業が研究テーマにまで影響を及ばす可能性があるので注意が必要である。
一方、産業界と政治家は、環境規制の基になる研究を行っている大学の研究者に対して、ハラスメントを行っている。研究者がそのようなテーマに取り組まなくなれば、学問の自由の侵害である。さらに、保守派政治家が大学はリベラル派の巣窟だとして社会的に批判を行っている。州立大学におけるテニュア制度を否定する動きもある。また、州立大学への予算を減らすことで、テニュア対象になる教員を減少せざるを得なくなっている。テニュア制度は学問の自由を支えるために重要な役割を果たすが、危機に瀕している。
ガザ紛争において反イスラエルのデモを行った学生に対する、大学側の対応が甘いとして、連邦議会(下院)が大学を批判している。本来、切迫した危険を生じさせないならば、過激な発言であっても発言の内容だけで違法と判断することはできないはずなのだが、議会が圧力をかけ。学長が辞任に追い込まれる事態がおきている。一方、学生の側でも自分が不愉快に思う講演会は物理的に開催不能にして良いと思う意見をもち、他人の言論の自由を奪おうとしている。キャンパス全体で寛容の精神が欠けてしまっている。
質疑応答では、国家安全保障や産学連携のメリットと、それによって学問の自由が侵害されるデメリットを比較すべきなど、活発な議論が行われた。