論理学のどこが自分にとっておもしろいのかと言えば、ひとつには抽象的な対象についてどんどん形式的な理論を作っていくという、数学に似たおもしろさがある。確かに、理学部の学生には、論理学のそうしたところがおもしろくなっちゃったやつもいたけれど、文学部や法学部の学生にはこの路線は通用しにくいだろう。だけど、理論を作っていくおもしろさというものは、ぼくとしては譲れないところだ。
だいたい、学生はほとんど論理学について予備知識をもたずに来ているわけだ。論理学がなにをやっているかのイメージすらもっていないだろう。このへんが心理学とか人類学と違うところだよなあ。おっ、でも、それを逆手に取ることもできるかもしれない。論理学がなんであるかまったく知らないのだったら、この授業の中でゼロから出発して論理学を作ってしまえばいいんだ。学生が共有できる問題意識から始めて、それを厳密に、一般的に扱うにはどのようにしたらよいかを考えながら、論理学を再構成していく。これなら、証明テクニックだけじゃなく、理論構築のおもしろさと大切さも伝わるし、なによりも論理学ってなんのためにあるのかがわかってもらえるんじゃないだろうか。そう考えて講義要綱を作り直した。