科学を発信する
ウェブサイトをつくる
ウェブサイトは、不特定多数の人に科学情報を発信できるという強みがあります。検索エンジンの発展により、現在では、多くの人がウェブサイトを情報源として利用するようになりました。しかし、ウェブ上の情報は信頼性や読みやすさ、理解しやすさ、正確さなどにおいて質が高いとはとても言えない状況にあります。科学者は積極的にウェブを通じた情報発信を実践して、ウェブ上の科学情報の質向上に努めるべきでしょう。
ここではウェブサイトを研究室外部の人々(とりわけ非専門家の市民)への科学コミュニケーションの手段として利用するケースを念頭に置いて、いくつかのティップスを紹介します。
どんな内容を盛り込むか
トップページ
トップページには、あなたの短い経歴、写真、研究テーマ、過去および現在のプロジェクトの概要、研究室のかかわるイベントの告知などをまず掲載します。忘れてはならないのは次のものです。
- メディア向け情報(electronic press room):プレスリリースをダウンロードできるようにしておきます
- 連絡先と連絡方法:連絡方法が書いてない、あるいはずっと奥の階層に書かれているサイトが多いように思われます。サイトを検索する人のかなりの割合が、連絡方法を知りたい人です。たとえば、あなたに講演を依頼したい人や、マスコミ関係者などです。住所、電話番号、ファックス番号、電子メールアドレスなどの連絡方法はトップページに置くべきです。その際、スパムメールを避けるために、電子メールアドレスは画像としておくか、@を(at)とするなどの防御策が必要です。
その他のページ
トップページからリンクしたページには次のような情報を掲載していきます。重要なのは、利用者がサイトを再び訪れようと思えるような、役に立つ素材を提供することです。お楽しみのパートがあればさらによいでしょう。写真や図を多用して、見た目も楽しいものにしましょう。
- 代表的な論文、書評、エッセイ、レビュー、雑誌記事
- 今後の活動予定
- 一般向け講演の要旨
- コラムや研究室生活の逸話
- 科学教師のためのリソース(教材、参考文献案内、リンク集)
また、pdfファイルをダウンロードできるようにしておくことで、さまざまな印刷物の配布媒体としてもサイトを利用することができます。
サイトの構造を設計する際に考慮すべきこと
サイトは一度つくってしまうと、その基本的な構造を後から訂正するのにたいへんな手間と費用がかかります。設計段階で、基本構造をよく練っておく必要があります。その際に次の点に注意しましょう。
- 何のためにサイトをつくるのかを明確にする
- 頻繁にアップデートする部分と、固定しておく部分とを振り分けておく
- 読み手はトップページからたどるというより、検索してたどりつくことが多いので「前のページ」を読んでいるとは限らない。したがって、できるだけ個々のページが独立したモジュールになり、そこだけで、予備知識や背景紹介なしにことが足りるような設計にしておく。
- ページをランダムな順序で読んだとしても、理解に支障がないようにする
- 一枚のページはプリントアウトしたときに数枚程度に収まるようにする。また、多くの人は、本当に重要な情報だと思ったことは、ページを印刷して保存しておきます。このとき、どのページだか分からなくならないように、各ページのどこかじゃまにならないところに小さな文字で、ページタイトル、著者名、執筆年月日、キーワード、URLアドレスなどの情報を表示しておくと親切です。
- さまざまなレベルの読者がサイトを訪れることを考慮して、知識のレベルと、ページの階層を対応させる。つまり、トップページは、誰でも読める内容、そのすぐ下のページには一般的な内容、という具合に、ページの階層が深くなるほど、より専門的で、読者が限定された内容にしていく。ざっと知りたい人は3クリックくらいで一通りのことが分かり、それ以上知りたい人は、もっと深い階層にまで進んでもらうようにする。
- 将来的にコンテンツが増えることを見越した設計にする。例えばバーにアイテムが増えることを想定したデザインにする。
デザインに凝りたいときはプロに任せる
本気でウェブサイトを科学コミュニケーションの媒体としようとするなら、すぐれたデザインのものにすべきです。そうなったらプロのデザイナーの力を借りましょう。その際に、研究室のポスターや、ブローシュアなどとのデザインの統一を図るとよいでしょう。また、科学情報の理解に直接関係しない飾りのアニメーションなどはいらないことを伝え、できるかぎり機能的でスッキリしたデザインをしてもらえるように依頼します。
さまざまな人がアクセスしてくるということを考慮する
あなたのサイトには、さまざまな環境でパソコンを使っている人からのアクセスがあるでしょう。また、アクセスしてくる人も千差万別です。できるかぎり多くの人にアクセス可能なサイトを目指しましょう。
- OSやブラウザによらず同じように表示されるかをチェックする
- ウェブにあまり詳しくない人に、うまくサイト内を行き来できるかをチェックしてもらう
- 眼の弱い人、色盲の人が不自由しない、フォントや色の選択をする
- 手の不自由な人でも使えるように、ボタンなどの大きさや操作性を工夫する
- 科学の専門用語の乱用は避けるべきですが、それだけでなく、ウェブ特有の言い回しも避けるべき
- 重い写真はサムネイルをページに表示して、それをクリックして大きなサイズの写真に飛べるようにしておく。
- アニメーションや音声を置く場合、それを表示、再生するにはプラグインが必要なので、それをダウンロードできるサイトへのリンクを張っておく
- 文章の内容は、アニメーションや音声を読者がスキップしても理解できるようにしておく
つくりっぱなしにならないように
ウェブサイトの利点はたえず更新できることにあります。しかしこの最大の利点が生かされていない「つくりっぱなし」のサイトがいかに多いことでしょう。アップデートされないページはやがて誰からも見てもらえなくなります。2ヶ月に一度はアップデートし、古いデータは削除してアーカイブ化します。サイトをつくろうと決めるときに、そのための体制作りも同時に考えておく必要があります。つまり、誰が、何を、いつ、どれくらい頻繁に更新するかを考えておきましょう。
また、つくったウェブサイトじたいの広報も必要です。積極的に他のサイトにリンクしてもらうとともに、印刷物、名刺などにURLアドレスを必ず印刷して、こまめな広報活動に努めます。