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学問のススメ、論文へススメ。

学生生活にスパイスは足りていますか?

授業に出る、レポートを書く、試験勉強をする、サークルに入る、友達と遊ぶ、本を読む、アルバイトをする・・・
まだまだもの足りない人へ学問の香りのスパイスを贈ります
――さあ、論文へススメ!


  • 説明会を開催します。ぜひご参加ください。

応募要項

論文内容

応募論文においてとりあげるテーマ/問いを明確に記述したうえで、文献等を活用して論じてください。
内容領域は問いませんが、当該領域を専門としない人にも理解できるよう記述してください。(過去の受賞論文がホームページから閲覧できますので、参考にしてください。)
執筆の際には論文作成のポイントを参考にしてください。

論文作成のポイント(PDF) はこちら

概要
応募締切日 2025年1月9日(木) 正午まで
応募資格 名古屋大学に在学する学部1~3年生
応募規定
  • 応募論文は、単著、未発表かつ日本語で書いたものに限ります
  • 審査対象論文は1人1編のみとします
  • 次項「応募方法」に掲載されている書式に従って作成し、提出してください
応募方法
  1. 書式に従って論文を作成してください
  2. 論文本編ファイルをPDFに変換したうえで、ファイル名を応募者氏名にし(例:「高等太郎.pdf」)、応募フォームから期日内に提出してください

    応募フォーム はこちら
審査 本学教員による
表彰 数名に賞状および協賛機関からの副賞を授与
結果発表
  • 2025年2月を予定
  • 発表に際し、入賞者の所属学科および氏名を公表いたします
  • 入賞作品は名古屋大学学術機関リポジトリに掲載いたします
案内用PDF ポスターはこちら

主催

名古屋大学 高等教育研究センター・教養教育院

共催

名古屋大学 附属図書館

協賛

    名古屋大学消費生活協同組合

問い合わせ先

名古屋大学高等教育研究センター 2024年度名古屋大学学生論文コンテスト事務局

お問い合わせはこちら

その他

  • 「名古屋大学論文コンテスト」説明会
    日時:2024年10月15日(火)12:10-13:00
    場所:中央図書館2会 ディスカバリスクエアB
    内容:高等教育研究センターの教員によるコンテストの紹介、過去の受賞者の論文紹介、論文執筆相談など

  • 「論文の書き方セミナー」 詳細はこちら
    日時:2024年10月30日(水)13:00-14:30 「論文の大枠を定めよう~構成と「問い」の立て方を学ぶ」
       2024年11月06日(水)13:00-14:30 「論文を執筆しよう~学術的な文章の書き方のコツ」
    場所:中央図書館2会 ディスカバリスクエアA
    内容:高等教育研究センターの教員による論文を書き始めるにあたって知っておきたいことがらを、初歩から学ぶ講座

  • 中央図書館2階サポートデスクでは、大学院生スタッフからレポートの書き方の相談を受けられます
  • 過去の入賞論文は名古屋大学学術機関リポジトリに掲載されています
  • 過去の受賞論文タイトル・テーマについては、以下のリンクから確認できます
  • 佳作
    • 総合型地域スポーツクラブの活動の柔軟性と機能についての研究
      文学部
      堀 聡音
      この度はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。本論文は全国の市町村で住民が主体となって運営される総合型地域スポーツクラブに焦点を当てて、そこにおけるスポーツ以外の活動の独自性やそれらが地域の中で果たす機能を考察したものです。 私がこのテーマに出会ったのは、専攻する社会学の調査実習の一環で三重県のクラブにインタビュー調査を行ったのがきっかけです。高校時代から趣味であるサッカー観戦への興味が高じてスポーツに関連した研究をしたいと考えていたため、渡りに船といったばかりにこのテーマに飛びつきました。総合型クラブは地域住民主体で運営されるため、予算や人材の事情から安定した運営を行うこと自体が難しいのが現状です。しかし調査を行なっていく中で、地域の中での最適解を模索してさまざまな工夫を凝らしながら活動をしているクラブの様相を知ることができました。 現在は方向性を少し変えて、部活動の地域移行が推進される中で、総合型クラブが部活動の受け皿となる際にどのような条件が揃えばうまくいくのかという研究を行っていますが、今回の研究によって得た知見や人脈が現在にも生きていることを実感します。調査から生まれた反省やいただいたフィードバックは今後の卒業論文に繋がる研究にも生かしていきたいと思います。 最後になりますが、調査のために1人で各地に足を運んで話を聞いたり参与観察をしたりすることへの不安もあった中で快く受け入れてくださった総合型クラブの方々、論文の添削をしていただいたゼミの先生、このような機会を提供してくださいました名古屋大学高等教育研究センター及び教養教育院の方々に厚く御礼申し上げます。
      名古屋大学での空き時間における低年次学生の居場所の実態と理想
      文学部
      藤井 和奏
      この度はこのような光栄な賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。私自身、大学の自由度の高い空き時間を学内のどこで過ごすのが良いのかについてずっと模索していました。他の学部の友人に話を聞く中で、学部によってニーズが異なるのではないかと思い、本格的に調べたいと考え、今回の論文を書くに至りました。複数の学部の学生に対し、インタビュー調査を行い、空き時間における居心地が良い場所には、学部を超えた共通の特徴があることを明らかにすることができました。この論文をきっかけに大学生が居心地良く過ごせる場が増えると嬉しく思います。また、論文を作成するにあたり、調査や分析の方法などを一から学ばせていただき、先生方のご助言や添削のおかげもありまして、最後まで諦めず論文を書き上げるという貴重な経験をさせていただくことができました。今回の経験は今後の学生生活を送るうえで、大きな自信になると思います。最後になりましたが、丁寧に添削やご指導をしてくださった先生方、ご協力いただいたインタビュー対象者の方々など、たくさんのお力添えをいただいたおかげで、この論文を執筆することができました。本当にありがとうございました。
      社会の繋がりとしての化粧役割 : 働く女性の化粧規範に着目して
      文学部
      山本 隆雅
      この度は、このような賞をいただき、誠にありがとうございます。私はかねてより化粧および化粧行為がもつ社会学的な役割や意義に興味があり、本論文では、働く女性の化粧規範について注目いたしました。今回の論文につきましては、働く女性の化粧選択はどのような社会規範を受けているのかを検討することにより、化粧という観点から職場における女性への社会規範を考察することを目指したものです。化粧は、その心理学的効果について注目されがちですが、私は、規範や社会関係といったものを捉えるうえでの、一種のツールにもなり得ると考えています。また現代において、化粧行為の範囲は拡大し、その役割も多様化してきています。そのような実情を踏まえ、今後は「化粧」というキーワードを通して、社会を理解することを目標に、研究を進めてまいりたいと考えております。まだまだ未熟な部分はありますが、今回の論文執筆の経験を糧として、自身のさらなる成長に繋げていく所存です。この度は本当にありがとうございました。
      日本におけるクマと人間の関わり
      文学部
      日下部 亜虹
      この度はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。本論文ではクマという生物に着目するのではなく、クマと人間の関係性、特に人間のクマへのまなざしをテーマとしました。現代に生きる私たちは自然界とのつながりが希薄になり、動物に対する人間の側の認識が失われているように感じます。しかし歴史を遡ってみれば、確かに人間と動物の多様な関わりが存在していたことが良く分かります。現代における我々の動物観を今一度見直すためにも、歴史の面からアプローチすることが重要ではないかと感じ、本論文を執筆しました。拙い論文ではありますが、とても良い経験をさせていただいたと思っております。この度はありがとうございました。
  • 事務局から
    • 今年度の応募作品4件は、多様な着想によるものでした。大学生活における素朴な疑問から、もしかしたら自分だけでなくすべての学生に有益な示唆につながるかも、と考えて調査を実施した藤井さん。授業で調べた、スポーツクラブが地域の問題解決につながるという事例に触発されて、実地調査を続けた堀さん。昨年度の基礎セミナーで男性の化粧について取り組んだ経緯から、内容を発展させて、女性の化粧、とくにその社会規範の側面に注目した山元さん。現代におけるクマと人間との関係性を論じるために、歴史的なアプローチをとってみたいと考えた日下部さん。さまざまなきっかけが、研究へと発展していく様をみることができました。
      他方、調査設計や論証の緻密さ、論文構成など、各論文にはそれぞれ改善の余地もあるように思われました。
      今後の改善や研究の発展への期待もこめて、すべて佳作という審査結果となりました。とはいえ、論文執筆をするということには時間も労力もかかるものです。忙しい学生生活のなかで執筆に取り組み、最後まで諦めずに仕上げたという事実は揺るぎなく、称賛に値するものです。さらに、表彰式の場では、受賞された4名の皆さんいずれもが、この受賞で終わりと考えず、その先を見据えているコメントを残されました。今回の経験を活かして、皆さんがますます発展してゆかれますよう、心から応援しています。

      *今回の応募論文は、名古屋大学学術機関リポジトリに登録するにあたり、一部改訂を施しています。そのため、受賞時と異なる論文題目になっているケースがあります。
  • 佳作(教養教育院長賞)
    • 名古屋大学における東海地方以外出身学生の友人関係形成の実態
      理学部
      照屋 智基
      この度は、このような賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。 本論文は、私が沖縄県出身であり、入学前から知っている友人がいなかったという状況と入学後に友人を作るのが難しいと感じたのがきっかけで執筆いたしました。東海地方以外出身の1年生3名へのインタビュー調査を通して、各学生の友人を作る動機や具体的な方法を聞き取り、その共通点を見出すことで、学内で友人を作りやすくする行動を推察することができたという結果には、個人的には達成感を得ました。 しかし、今回の調査ではフィードバックにもありました通り、友人作りがうまくいかなかった学生に対してのインタビュー調査を行うことはできなかったので、今後の課題として検討したいと思います。 また、今回論文執筆を行う中で「報連相」を徹底する、という社会的な常識が私に欠如していたために、先生方やTAならびにインタビュー対象者にご迷惑をおかけした場面がありました。心よりお詫び申し上げるとともに、連絡を怠らないこと、今後論文執筆の際に自分の調査に協力して下さることに対しての敬意を忘れないことをここに誓います。 最後になりますが、基礎セミナーから今回の論文までにインタビューに協力して下さった学生やインタビュー対象者を紹介して下さった同級生やTA、ならびに論文コンテストに応募するきっかけを作り、論文執筆の様々な場面でお世話になった先生方、全ての方に厚く御礼申し上げ、受賞コメントとさせていただきます。本当にありがとうございました。
  • 佳作
    • 名鉄百貨店の現状と将来に関する考察
      情報学部
      津田 航
      この度は昨年度に引き続き、受賞させていただき、誠にありがとうございます。 昨年度の受賞では審査員の先生方に大きな評価をいただき、学外でも、Facebookページ「百貨店訪ね歩き」で拙稿をご紹介いただきました。前回は京都を拠点にした百貨店を取り上げたので、今回は名古屋を舞台に、名鉄名古屋駅の再開発を控える名鉄百貨店をテーマにしました。 私の地元・大阪では地域ナンバーワンで名古屋や広島からも集客する阪急百貨店に対し、イカ焼きや鮮魚売り場が有名で庶民的な阪神百貨店が特色を生かして共存共栄しています。名鉄百貨店も地域ナンバーワンのジェイアール名古屋タカシマヤと違う魅力を発信できるはずです。 名鉄百貨店に対しては様々な欠点があるものの、ナナちゃん人形の存在などから名古屋らしさが感じられるとの声もあるそうです。さらに、都心再開発において、名駅に地域の情報発信拠点が必要であるとの分析もありました。そこで、再開発にあたって、名鉄百貨店が名古屋グルメや特産品の発信場所となればと思い、今回の研究の道筋ができました。実際、執筆中に名鉄グループが地域の魅力を発信する「名鉄商店」が名鉄百貨店にオープンし、論文提出の直後に買い物したのですが、本当に自分が考えている方向性で動いているのを知って驚いたのは忘れられません。 今後は、百貨店業界を含め、地域に貢献できる事業に関わりたいという思いを強くしました。地域発展という未来を切り開く一員になりたいです。いずれは、その経験を元に再び研究を行い、検証をはかる日もあるかもしれません。 最後に、各地の百貨店に連れて行ってくれた両親、拙稿を取り上げてくださった審査員の皆様や「百貨店訪ね歩き」の管理人様、本当にありがとうございました。
      在外邦人国民審査訴訟違憲判決の憲法学的意義
      法学部
      小滝 俊太郎
      この度は拙稿をこのような賞に選んでいただきありがとうございます。今回私がテーマにした最高裁判所裁判官の国民審査制度は比較制度的にみても珍しい制度であるといえ、最高裁判所の裁判官を国民が直接選ぶ制度のない日本では司法の民主化を実現するうえで重要な制度と位置付けることが出来ます。一方で近年、この制度の形骸化が指摘されており罷免投票率の低さが問題視されています。今回最高裁は審査権が選挙権と同等の性質を有する基本権であると判示しましたが、これは同時に国民がこの権利を適切に行使することが求められるということを意味します。最後に拙稿及び本判決が皆さんに国民審査制度の在り方について考えていただく契機となるとなることを願います。
      大学1年生の前期と後期で授業中の眠気の関連要因は変化するのか
      教育学部
      小木曽 元哉
      この度はこのような賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。 私は基礎セミナーの講義で大学生の睡眠不足について調査をする中で、十分に睡眠をとっている人でも授業中に眠気を感じることがあるという声を聞き、授業中の眠気に関係する要因に興味を持ちました。本論文では授業中の眠気に関連する要因間の関係性や前後期での要因の変化を調査しました。調査を行う中で自身の予想に反するデータも出てきて、実際に調査をすることでしかわからない現実があることを実感し、改めてデータを取ることの大切さを知ることができました。また、本文に関わる部分としては、授業中の眠気の要因の複雑性を確認することができ、学生が眠気に妨げられることなく授業を受けられるようにするためにはさらなる詳細な研究が必要であると感じました。  論文執筆にあたり、初めて行うことばかりで苦労した場面も多く、担当してくださった先生方には大変お世話になりました。また、調査にご協力いただいた方々にも非常に感謝しています。関わってくださった皆様方、本当にありがとうございました。
  • 事務局から
    • 本年度の論文コンテストでは、身近な話題に着目したテーマのもと、文献調査やインタビュー調査、アンケート調査等、様々な手法を用いて論証しつつ、学生らしい自由闊達な主張を展開した玉稿が揃いました。
      照屋智基さん(佳作・教養教育院長賞)は、自身の経験に基づいた問題意識からリサーチクエスチョンを設定し、先行研究の検討やインタビュー調査の設計や分析を行い、最後にどのような行動が友人作りに寄与するかという解決策の提案に至るまでの道筋が一貫しており、明確でわかりやすい構成である点が高く評価されました。戸田山和久教養教育院長からも「コロナ下において、友人関係の構築に困難を抱え悩んでいる多くの学生にとって、有益な示唆を与える論文である。みじかな問題を取り上げ、仲間のために役立つ知見を得ようとしており、まさに研究の原点とも云うべき真摯な動機に基づいており、深く共感した。 」とのコメントが寄せらました。
      津田航さん(佳作)は、名鉄百貨店の将来について、様々な文献やデータをもとに考察されている点、また、図書、論文、新聞等、多くの媒体から広く情報を収集することで、より信頼性・論理性を高めていることに加え、考察についても、具体的な根拠とともに独自の意見が示されていた点が評価されました。
      小滝俊太郎さん(佳作)は、在外邦人国民審査訴訟違憲判決について、先行する学説も参照しながら、憲法学的意義についての考察を行った論文でした。特に、目的と結論、これらを結ぶ論証という構成がしっかりしている点や、文章構成に破綻がなく、法学に馴染みがない読者でも、順を追って法解釈の作法を知りつつ理解を進められる点でも評価されました。
      小木曽元哉さん(佳作)は、研究の問い、先行研究の整理、調査、考察が明示されており、論文の書き方が明確であることが評価されました。考察において、前期よりも後期で睡眠時間が短くなり、授業意欲が低下し、夜間趣味日数が増えるなどの変化があり、大学1年生が大学生活に適応していく様子がデータから丁寧に示されており、それに対する筆者独自の解釈も述べられており、納得感が大きい論文になっていました。
      次年度も学生論文コンテストを開催しますので、たくさんの力作を期待しています。附属図書館のライティング関連図書コーナーや高等教育研究センターの学習サポートツールもご活用ください。
  • 優秀賞
    • 喧嘩両成敗といじめ自殺
      法学部
      福島 聡華
      この度は優秀賞を頂きまして誠に有難うございます。
      私はアニメや演劇の影響で中世に興味を持ち、またゼミの延長線上で現代の人間関係について学んでいました。どれほど学問の細分化が進もうと、我々学生が常にそれに付き従う必要はなく、分野を横断することでしか見えない世界もあるでしょう。
      効率化が求められ、単位や進路とは無関係な勉強をすると眉を顰められる昨今、もしも拙稿がそれらに対するアンチテーゼとしての役割を果たすことが出来るとすれば、私としては至上の喜びです。
      丸物百貨店の盛衰に関する一考察
      情報学部
      津田 航
      今回は、優秀賞という評価をいただき、ありがとうございます。
      私は家族で百貨店へ行く機会が多く、なかでも京都駅北側に所在した近鉄百貨店京都店・通称「プラッツ近鉄」がかなり印象に残っています。京都出身の父や祖母が「マルブツ」と呼ぶことが不思議でしたが、のちに、この店を運営していた「丸物」という百貨店が全国展開していたと知ったのがきっかけでいろいろ調べるようになりました。京都で過ごした高校生時代、文化祭で発表してほしいという同級生の依頼を引き受けたものの、ネット上の不正確な情報に基づく発表で終わったことを後悔しています。
      今回は「日経テレコン」、丸物の後身企業「京都近鉄百貨店」の社長を取り上げた書籍「新風 ある百貨店の挑戦」などを活用して、論文執筆に合わせた方法、かつスムーズな情報収集を心掛けました。かつて存在した店の詳細、父の記憶を裏付ける記述なども発見できたものの、さらなる情報のために何時間もかけて京都市の図書館へ通うなど、想定のようにはいきませんでした。論文の執筆自体も体裁がなかなか整わず、募集要項に合わせた形式を満たすのに苦労しました。 また、歴史を踏まえたうえで、「京都近鉄百貨店」が出店した、滋賀県の近鉄百貨店草津店(旧・草津近鉄百貨店)で現在行われている取り組み「タウンセンター化」について触れ、「丸物」各店と対比することで、今後の地方百貨店のあり方を考察しています。特産品の販売、専門店の導入と「丸物」や近鉄百貨店京都店と一見似たアプローチを行いつつも、外来者ではなく地元客への訴え、外部テナントではなく百貨の店員による高い接客など違ったやり方を取り入れ、集客につながっていることに注目しました。
      今後、丸物ほか百貨店などの経営研究をさらに行いたい気持ちもあるものの、「タウンセンター化」のように地域密着型の取り組みを行うビジネスの実践にも気持ちが傾いています。研究だけではなく、実践しないと見えてこないメリットや課題もあると感じたからです。
      最後に、執筆のきっかけを作ってくれた父と、このような研究について発表を行う機会を与えていただいた名古屋大学高等教育センター及び教養教育院の方々に厚く御礼申し上げます。
      居住形態と主観的・客観的困窮が大学生活の悩みに及ぼす影響
      法学部
      平松 莉奈
      このたびは拙稿に優秀賞をいただき誠にありがとうございます。
      大学入学後に一人暮らしをしている学生と話した際に「一人暮らしは大変だ」という人もいれば「一人暮らしは楽しい」という人もいたことから一人暮らしの実態や自宅生と自宅外生の違いに関心をもったことがテーマ設定のきっかけでした。特に最初はわからないことばかりでしたが、興味をもったことを論文にまとめ、さらにこのような賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。慣れない作業ということもありデータ分析には時間がかかってしまいました。しかし、この作業を通して、最終的には論文で取り上げなかったデータも含め、大学生活における自宅生と自宅外生の様々な違いを知ることができました。そのなかには自分の予想と異なる結果になったものもあり、大変面白く感じました。
      この経験やいただいたフィードバックを今後にいかしていきたいと思います。データ分析や論文執筆で大変お世話になった基礎セミナーの先生方、授業内で様々な助言をくださった基礎セミナーの受講生の皆様、このコンテストを開催し、貴重な機会を与えてくださった名古屋大学高等教育研究センター及び教養教育院の皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございました。
  • 佳作
    • 理想の異性像と性役割観の関係性
      法学部
      佐野 彩葉
      この度は、このような賞をいただき、誠にありがとうございます。本格的な論文を書くことは初めてで不安もありましたが、このように評価していただき、大変嬉しく思います。
      本論文では、大学生の持つ理想の異性像と性役割観について調べました。私自身、将来は働きたい気持ちが強いです。同時に、結婚をして家庭を築くことへの憧れもあり、仕事と家族の両立を実現したいと考えています。しかし、実情を見ると、今もなお女性の家事負担が大きく、一体何が原因なのだろうかと関心を持ちました。本調査を通じて、改めて性別役割分業に関する問題の根強さに気づくことができ、今後も改善に努める必要があると感じました。
      最後になりましたが、基礎セミナーの先生方や受講生、調査対象者の方など、たくさんの方々に協力していただき、この論文を書き上げることができました。本当にありがとうございました。
      現在の大学生は就職氷河期世代の大学生からどう変化したのか
      文学部
      高見 玲菜
      この度はこのような賞に選んでいただき、ありがとうございます。大変嬉しく思います。私は大学に入学して、家族や親戚などから聞いていた大学生活より自分の大学生活の方がよほど忙しいのではないかと感じました。そこで大学生の性質の変化というものに目をつけて、今回の論文を書くに至りました。
      基礎セミナーの授業内では先生、TA、同じ受講生から多くの助言をいただくことができ、論文について一から教わりながら進めていく、非常に貴重な機会だったと思います。また、自分の興味のあることについて研究するということは初めての経験で、恵まれた環境であったことにとても感謝しています。いただいたフィードバックをもとに今後もより良い研究をし、論文を作成するということを目指していきたいと思います。この度はありがとうございました。
      大学生における留学のとらえ方の差は何か
      経済学部
      杉本 稜晟
      この度はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。初めての論文作成だったため最初は右も左も分からず不安ばかりでしたが、先生方からのご指導や受講生との意見交換と言った協力を受けて、書き上げることができました。
      私は今回、大学生がどのように留学を捉えているのか、また捉え方の差にはどのような背景があるのかについて研究を行いました。私自身を含め、留学に興味を持ちながらも自分の今後のことなどを考えてしまい、中々一歩を踏み出せない人が意外と多くいると感じたことがこの研究の動機となっています。
      今回の論文作成にあたって、先行研究や調査、分析の方法など様々なスキルを学ぶことができました。この経験は今後の取り組みにも活かしていきたいと思います。この度はありがとうございました。
  • 事務局から
    • 本年度は、応募13作品のいずれもよく練り上げられた論文で、事務局としては嬉しい限りでした。このうちから、厳正な審査により、優秀賞3作品、佳作3作品が選ばれました。
      福島聡華さん(優秀賞)は、喧嘩両成敗という日本的概念の歴史をふまえ、いじめ自殺に影響を与えていることを記述しました。明快な主張、丁寧な概念整理、緻密な論理展開、豊富な先行文献の活用など、論文全般が高く評価されました。
      津田航さん(優秀賞)は、地方百貨店の戦後史研究を、その存続という現代的な問題と結びつけて論じました。テーマや分析の着眼点にオリジナリティがあること、企業史、新聞、雑誌等も用いて多くの事実を整理したこと、スムーズな論理展開などが評価されました。
      平松莉奈さん(優秀賞)は、主観的困窮と客観的困窮という軸をもって自宅生と自宅外生の悩みの違いを描きだしました。膨大な二次データを丁寧に読み解き、説得力をもって記述したことが評価されました。
      佐野彩葉さん(佳作)は、大学生の性役割観について、独自のアンケートにより仔細に検討しました。先行研究を踏まえた新たな視点での問題設定、仮説に基づいた緻密で挑戦的なアンケート設計、丁寧かつ明確な考察、なめらかで一貫した論文展開など、全般に高く評価されました。
      高見玲菜さん(佳作)は、大学生の肯定感の上昇が、大学教育改革の結果ではなく、社会的・経済的な環境の向上にあると指摘しました。本学のデータと全国のデータに基づいた丁寧な検証を行い、先行研究と異なる結果を導いたことが評価されました。
      杉本稜晟さん(佳作)は、大学生の留学に対する意識について仮説を生成し、独自の調査から丁寧な検証を行いました。論文構成、明快な説明、一貫した主張、実証パートの記述方法、考察の深め方などが、全般に評価されました。
      選にもれた作品も、論文として一定のレベルに達していたことは記録として残したいと思います。独自のアンケート調査やインタビュー調査を行ったものが多かったなか、このコンテスト史上初となるオートエスノグラフィーに挑んだ作品もありました。いずれも、主張に沿って適切な研究手法を選び、丁寧に分析考察した痕が読みとれる、良作と評価されました。
      次年度も、学生論文コンテストを開催いたします(応募要項などの一部が変更になる見込みですので、詳細がリリースされるまでしばらくお待ちください)。皆様の意欲作を楽しみにしています。
  • 優秀賞
    • 現代日本社会における「自己」の様相 : 象徴としてのマスクから
      法学部
      天野 大輝
      この度は、昨年に引き続き優秀賞をいただき、誠にありがとうございます。
      受賞論文における研究はコロナ禍における日々の生活から感じた問題意識から始まりました。私たちが日常生活でマスクを着用するのは、もちろん予防効果や感染拡大を阻む効果に期待しているからでもありますが、いわば他人が着けているから、あるいは自分が着けていないと白い目で見られるかもしれないからといったマスクの機能を超えたところに関心があるからではないでしょうか。このように見ればマスクの着用といったひとつの行為も、他人の「まなざし」を吸収し、それに基づいて自身の行為を規定するという、非常に社会的なものになっているのです。
      なぜこんなにも他人の「まなざし」を気にするのか-そのような疑問は日本ではよく「同調圧力」という言葉で片づけられてしまいます。しかしながら重要なことに、なぜ同調圧力が生じるのか、そもそも同調圧力における「圧力」とは誰から誰に対しての何を指しているのか、その「圧力」というある種の関係性を規定する言葉を用いるのは果たして正しいのかといった、もっと大事なことには口を閉ざしがちです。
      受賞論文における研究では、様々な形態があるコミュニケーションの中でも、象徴を通じたコミュニケーションである〈象徴コミュニケーション〉に注目して議論を展開しました。例えば現在のコロナ禍においては、マスクの着用は感染対策それ自体に寄与するだけでなく、「自分自身は感染対策にコミットしているという事実を表明する」という象徴機能を有しています。
      前半では、その象徴コミュニケーションを深掘りすべく、象徴としてのマスクについて考察しました。象徴コミュニケーションは、言葉で直接伝えるよりも、象徴という装置を介在させるため複雑になり不確実になります(象徴コミュニケーションの不透明性)。特に私たち日本人は図らずもその装置から汲み取る意味のチャンネルを相手と共有して(ここではマスクを着用している人は社会的な感染対策にコミットしているということを二者間で相互に理解して)社会生活を営むというように、複雑な事象が生じています。そしてそれは、「行為にどのような意味付けを“されるのか”を意識する主体」が常に存在していることを意味します。この主体を(他者の視点を取り込もうとするという意味で)「分裂した自己」と位置づけ、後半では、このような主体がなぜ生じるのか、その主体が生む行為は自発的なのかといった観点に移っていき、その中で複数の大掛かりな理論装置を互いに接合して議論を展開していきました。ただ、このように理論装置を組み合わせていった意欲的な研究も、最終的には20,000字強にも及ぶ議論へと展開していきましたが、最初の身近な問題意識との整合性を高め続けたからこそ、この研究が地に足ついたものになりました。
      受賞論文は、現代日本社会における「自己」の様相について、ある一定の結論を見出しましたが、この研究は、例えば現代リベラリズムが想起する、主体的に自分自身の意思に従った行為を遂行することができる「強い個人」に関する議論と関連付けるなどして、政治学的な研究に応用することができると思っています。今後はこのような観点にも着目していきながら、卒業論文につなげる研究をしていきたいです。
      最後になりましたが、この論文を作る上での校閲、添削においてお世話になった友人、法学部研究者養成コースEquipMiraiの皆様、所属ゼミの教授、CSHEの職員様などすべての方々に厚く御礼申し上げ、受賞コメントとさせていただきます。
      主体的にさせられる生徒たち
      教育学部
      杉山 和希
      このたびは拙稿に優秀賞をいただき、ありがとうございます。コンテストの存在自体は昨年度から認知していましたが、自分とは無縁のものだと思っておりました。本年度に入って授業のオンライン化に伴い空き時間が増え、また専門的な授業が増えさまざまな文献に触れる機会を得たことが、今回の執筆に繋がったように思います。
      論文の主題であるアクティブラーニングという教授・学習法は、思えば「発表」や「話し合い」という形で私が小学生の頃から授業に組み込まれていました。そしてこうしたアクティブラーニング型の授業が展開される度に、(個人的にではありますが)なにか否定的な感情ばかり抱いていたように思います。この否定的な感情とは何で、それをもたらす要因は何であるか、といった疑問に答えるべく、本稿を執筆しました。
      今回は文献調査に終始しましたが、アクティブラーニングの総体を詳細に検討するために今後は実証的研究にも取り組みたいと考えています。改めて、今回はありがとうございました。
      夫婦同氏制度は憲法上男女不平等か
      法学部
      渋谷 大良
      この度は、拙稿に対し優秀賞という評価をいただき、誠にありがとうございます。今年度になってから、外出がはばかられるようになってしまったわけですが、そうした状況下で、自宅でできるおもしろいものはなにかないかと考えていた時に、本コンクールを思い出して論文を作成した、という次第です。正直にいうと、私の書いた論文がまさか入選するとは思っていなかったため、非常に驚いております。また、同時にとても喜ばしく思います。
      私はどちらかといえば政治学に関心があると思い込んでいて、法律学に関してはなんとなく苦手意識があるのですが、夫婦同氏制度というテーマについて検討していく中で、憲法解釈が問題となっても、諦めずに何とか論じきったことについては、自分で自分を褒めたいです。
      一方で、後悔している点もあります。論文の完成度を高める作業の詰めが甘かったと感じることです。たとえば、論文の作成を自分の時間の都合の中で思いつきで始めたため、もっと早くから行動していれば、より多くの文献やさらに前の判例を読むことができました。また、心のどこかで「自分がやっていて面白ければそれで十分かな」と思いながら論文を作成していたためか、書いてそのまま提出してしまいました。しかしやはり、どなたかに読んでいただいて添削をお願いするなど、客観的に意味が伝わるかを確認する行為もするべきでした。このように、「自己満足」の為に論文作成をした節があり、論文の完成度のためにもう少しできたこともあったかな、と今になると思います。
      加えて、他の受賞者の方が作成された論文を拝見して、とても刺激されました。同年代の学生の方が、非常に多くの資料に当たられたり、インタビューやアンケートをされたりしたこと、緻密な、あるいは明快な文章を書かれていたことに、心が揺さぶられ、感動しました。そして、自らの勉強不足やオリジナリティの希薄さも感じました。
      今回の経験を踏まえて、今後も社会問題についての自分なりの思索を続けていくとともに、それを人に伝えるということも含めて考えていく所存です。ありがとうございました。
  • 佳作
    • 大学受験をする高校生の進学塾に対する評価とその形成要因
      教育学部
      藤井 香帆
      この度はこのような賞に選んでいただき、ありがとうございます。自分の書いた論文を評 価していただき、大変光栄に思っております。本格的な論文を書くことは初めてだったため 最初は不安もありましたが、先生や調査対象者の方などたくさんの方々に協力していただ いてこの論文を書き上げることができました。協力していただいた全ての方々にお礼を申 し上げたいと思います。
      私は今回、大学受験をする高校生が塾に対してどのような評価をしているか、そしてその 評価が何によって形成されているかについて、質的調査を用いて検討しました。私自身大学 受験の際に塾に大変お世話になり、自分にとって塾は合格するために必要不可欠なものだ ったと考えています。しかし、実際大学に入学して他の学生に聞いてみると塾に通わなかっ たという人も多く、この事実に驚いたことが今回の研究の原点になっています。今回は時間 の都合もあり十分な調査を行うことができず、また論理的な論文を書くという点において 反省点も多くありますが、こうした反省点は今後に活かしていきたいと思います。
      また、今年度は同級生にもなかなか会えないというイレギュラーな状況ではありました が、その中で論文を執筆し、こうした賞をいただくという経験ができたことは、私の今後の 人生の糧になるものだと思っています。いただいたフィードバックは今後の参考にさせて いただきたいと思います。この度は本当にありがとうございました。
      部活動の所属と学業成績の関連性についての分析
      経済学部
      守内 優斗
      この度はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。本論文で取り上げた部活動と学業成績の関連性は私が今まで是非調べてみたいと思っていたことであり、本コンテストはその調査を行う大変良い機会となりました。大学入学後論文の書き方など全く分からない状態でしたが基礎セミナーの先生の論文作成における丁寧なご指導や、同じ基礎セミナーの受講生からのアドバイスのおかげでなんとか論文を書き上げることが出来ました。論文作成には規模の大きいアンケート調査やその集計、分析など苦労も多くありましたが今後の学部研究等の糧になる貴重な経験となりました。この経験を無駄にせず自身のさらなる成長に繋げられるようこれからの大学生活もより一層努力していこうと思います。最後になりましたが、この文を執筆する上でアンケート調査に協力してくださった方々、論文の添削等お世話になった友人や先生方、学生論文コンテストという機会を提供してくださった名古屋大学高等教育センター及び教養教育院の方々に厚く御礼申し上げます。
  • 事務局から
    • 本年度の応募総数は15本、そのうち5本が入賞し、過去最高の入賞率となりました。入賞した論文はもちろん、応募論文全体の質がよかったことが、印象に残りました。とくに入賞論文は、いずれも、身近な問いやよく知られた概念を選びながら、それを学問上の問いとして焦点化することに成功していました。そして、それぞれの問いに応じて、質的調査、量的調査、先行文献調査などの手法を選び、最後までよく議論しきったものでした。
      思いもよらない状況下ではじまった2020年度、学生のみなさんにとっては、学習を進めることに苦労した面もあったことと思います。そのようななかで、本コンテストに応募するという目標をもって努力を続けた応募者のみなさんには、頭が下がる思いもしています。応募にいたらずとも、準備を進めていた学生もいたかもしれません。そんな皆さんの努力が、今後のさらなる学びに結びつくことを願っています。
      コロナ禍はまだ収まりそうにありませんが、本コンテストもまた次年度に開催されます。新1、2年生には、学習のビタミン剤に、また学生生活の彩りにと、ご活用いただければと思います。
  • 優秀賞
    • 新幹線ナタ殺傷事件から辿る現代社会の様相
      法学部
      天野 大輝
      私がこれまで思索してきた事柄は、「社会の分断と連帯が如何に起こるのか」というテーマに収斂します。分断/連帯という観点から現代社会に目を向けると、それが多くの社会問題と有機的に結びついていることがわかります。この作品では、まず「新幹線ナタ殺傷事件」という、2018年6月に東海道新幹線内で起きた未曽有の殺人事件から無差別殺人事件というものが一般的にはどのように生じるのかを、社会的要因に注目して解明しました。無期懲役の判決を受けた被告が法廷内で万歳三唱を行ったのは記憶に新しいでしょう。ここでは詳しく書きませんが、この事件は特に、人々のあいだの分断という側面が如実に影響していたものでした。
      ただ報道では、被告の特性であった自閉症と犯行動機を徒に結び付けたり、新幹線内の警備体制に問題の所以を見出したりと、事実と異なるものや対症療法的な議論が目立ちました。特に自閉症の特性を犯行動機と結びつけるのは、総体的な障害そのものにネガティブなステレオタイプを埋めつける非常に危険なものと危惧しました。
      この論文は、現代日本社会の様相を考察し、この社会のどこにその原因があるのか、そしてそれを踏まえてどのような社会的な「受け皿」が必要かを、社会学や生物学、社会心理学、発達心理学などの様々な学問的視点を用いて探っていく、いわば先の見えない試みを実行したものです。そのため、複数の人と対談し多数の文献を読むことで多くの知識を得、その上で考察を行いました。
      その中で、「知らない」という事実から生じる傲慢さを身に染みて感じることになりました。人は、任意の事実を知らない限り「知っている」とも「知らなかった」とも言うことが本来はできません。
      自閉症の方はよく「環境の変化」へのストレス耐性がないと言われています。ですので、1つの空間が多様な使い方をされたり、1つの行事を日ごとに異なる場や時間で行ったりすると、たちまち疲れてしまうのです。これは自閉症の方に顕著なものとして捉えられるのが世の常です。ですが、自閉症を有さない人間にとっても環境の変化というのは多少のストレスがあるはずです。私自身も昨年4月から一人暮らしを始めるようになったのですが、その当初は、環境の変化に慣れず窮したのを覚えています。このように、「健常者」よりもストレスを感じる感度が高いが故に、自閉症は逆に「障害」と呼ばれるようになってしまうのです。
      本来、この事実を「知らない」限り、人によっては自閉症を単なる障害として見過ごし劣視するでしょう。ですが、これを「知る」ことによって自閉症の特性を垣間見ることができると思います。その集積によって、自閉症をはじめとする障害の性質や特徴を知るようになり、それら障害を有する人々の暮らしやすい社会がはじめて築かれるようになるはずです。
      私は、この論文で提起した問いに完全に答えられたとは思っていません。犯行までの心理的過程に関する記述の部分においても然りです。この論文を読んだ人々が、新しく知識を取り入れたり、論文の内容における批判点を提起して事実が「更新」されたりするツールとなれば、それ以上のことはありません。自分の行き着いた答えが正しいかを「知れない」からです。
      最後になりましたが、この論文を作る上での校閲、添削においてお世話になった友人、教授、CSHEの職員様などすべての方々に心より感謝致しますことを追記し、受賞コメントとさせていただきます。
  • 優秀賞(教養教育院長賞)
    • 定年70歳時代の所得における浪人効果
      経済学部
      李 宗桓
      この度は、拙稿へ優秀賞という評価をいただき誠にありがとうございます。
      昨年もコンテストへ応募しようとしましたが、テーマ決めや資料収集に手間取り、残念ながら未提出に終わってしまいました。今回はそのリベンジを果たすことができたので大変嬉しく思っております。
      テーマを決めるきっかけとなったのは、受験勉強の合間に読んでいた小説の「シグナリング理論」という言葉でした。そこから発展して CiNii や J-STAGE、Google Scholar、各種学会のホームページ等から今まで延べ 100 本以上の論文を読んできたことは、今回の執筆に大変役立ちました。
      しかし、論文をどれだけ読んでいても、「書く」ことは想像以上に困難で、本コンテストは今まで読んでいた論文の重みを知る大変良い機会となりました。私のテーマである浪人生の費用便益分析は基幹となる専攻研究が英語のものしかなく、本文を翻訳することには大変手間取りましたが、テーマ決めから執筆まで何とか一人で成し遂げたことはこれからのゼミや研究活動の糧となる貴重な経験となりました。
      今後の大学生活では、論理と知性の牙城へと成長すべく、経済学のみならず社会学や教育学などの様々な分野からアプローチを試み、更に理解を深化させて参ります。
      最後になりましたが、学生論文コンテストという素晴らしい機会を提供して下さいました名古屋大学高等教育センター及び教養教育院の方々に厚く御礼申し上げます。
  • 佳作
    • 「律子と貞子」再考-その意義をめぐって
      文学部
      岩田 海莉
      この度はこのような賞をいただき、ありがとうございます。
      本論文で取り上げた太宰治は、私が最も好きな作家で、この『律子と貞子』は、おとなしい姉の律子と、快活な妹の貞子、という対照的な二人の女性がいきいきと描かれているところが魅力的な作品です。本論文では、この『律子と貞子』が、当時の社会にとって、どのような意義があったのかを考察しました。
      この1年間の学部の講義で、先行論文をはじめとした資料を集め、それらを踏まえて自身の論を展開していく過程を学んできましたが、今回はその経験を活かす良い機会になったと思います。頂いたフィードバックを基に、今後、より質の高い論文を書くことができるよう努力していきます。
  • 事務局から
    • 本年度の応募総数は13本となり、そのうちの3本が入選しました。
      優秀賞を受賞した天野さんの論文は、現代の社会問題に真っ向から挑み、さまざまな要因を1つひとつ丁寧に解説したものでした。込みいった話題が続くにも関わらず一息に読ませる文章であったことにより、様々な学問分野から集まった審査員にも受け入れられたように思います。大きな問題に取り組んだゆえに、新しい結論をみたわけではありませんでしたが、先行文献をもとに複雑な状況を解きほぐして表現できていたことが評価されました。
      優秀賞(教養教育院長賞)を受賞した李さんの論文は、着眼の新しさや、破綻のない論理構成などが評価されました。モデルをたてて分析するという手法は、十数年にわたる本コンテストのなかでも珍しく、今後同様の手法を用いた論文を応募する人の参考になるものと思います。
      作を受賞した岩田さんの論文は、文学作品における先行研究に疑問をもち、論理を組み立てて、反証するに至ったものでした。当該作品を読んだことのない人にも理解できるような文章に仕上がっており、また、爽やかな読後感が印象に残りました。
      次年度も学生論文コンテストを開催します。どうぞ奮ってご応募ください。
  • 優秀賞
    • 「大矢田ひんここ」と喪山信仰
      文学部
      山中 海瑠
      この度は、このような賞を頂き、光栄に思います。
      本論文は、岐阜県美濃市大矢田で斎行される「ひんここ」という神事芸能に注目した一年間のフィールドワークをもとに、古文書や関連する古典文学の記述を踏まえ、「ひんここ」を巡った大矢田地区の信仰の在り方を考察したものです。
      一年間の研究成果をこのような形で認めて頂くことができ、大変嬉しく思います。また、本論文の執筆にあたって、大矢田神社禰宜・眞清様をはじめ、大矢田地区の皆様に多大なご協力を賜りましたことを、この場をお借りしてお礼申し上げます。
      本論文では、大矢田における信仰の在り方について「喪山信仰」にフォーカスした考察を行うに留まっていますが、大矢田にはこの他にも「修験道」や「牛頭天王信仰」など、様々な信仰が息づいています。今後は、卒論を念頭により多角的な考察に努めていきたいと思います。この度はありがとうございました。
  • 佳作
    • 学校教育は若者の投票率向上に貢献しうるか
      法学部
      各務 耀
      このたびはこのような賞をいただき、ありがとうございます。最初にこの論文コンテ ストのポスターを見たときは自分とは無縁のものだと思っていましたが、基礎セミナー の授業で論文を書くことになり、せっかくだから上を目指そうと努力した結果この賞を いただくことができ、大変嬉しく思います。
      執筆の過程は決して楽なものではありませんでした。授業の合間や授業が終わってか ら図書館にこもって文献を読みあさり、明け方まで資料のまとめをすることもありまし た。また起きている間はいつも論文のテーマのことばかり考えていて、テーマが決まっ てからも調査方法や内容の検討をするなど、この一年間私の頭の片隅には常に論文のこ とが浮かんでいました。
      大学に入学したばかりの 4 月、右も左も分からない状態から始め、基礎セミナーの先 生や TA、他の受講生からアドバイスをいただきながら何とか自分なりに満足のできる 論文を書くことができました。苦労は多かったものの、物事を論理的に考えたり表現し たりする力など、その苦労に勝る多くの経験を得ることができました。この経験は今後 の学生生活に役立てていきたいと思います。
      デザイン系専門学校生の進路選択過程における他者との関わり
      文学部
      西山 祐平
      高校3年生の時、地元の新聞社が主催する短編小説のコンクールで入賞したことがあって、それが自分を苦しめたことをよく覚えている。入賞した小説を読み返すたびに、小説家養成の専門学校に進学してもっと技術を磨けば、憧れの文筆業で生活していけるのではないかと妄想を膨らませていた。しかし、文筆業で成功できる人間はほんの一握りだと自覚していた私は、一瞬の淡い希望を押し殺して、大学受験勉強に励むことにした。そして現在、私は名古屋大学の文学部で日本近現代文学の研究をしている。
      このように、自分の興味・関心にうまく折り合いをつけてきたつもりだが、どこか晴れない気持ちが残るのも事実であった。近年、なることが極めて困難な漫画家や声優、ミュージシャンなどの養成を目指す「文化・教養」分野の専門学校は、一定の人気を保っている。私が当然のように選択肢から排除した、そうした専門学校に進学を決意する人たちは、どのような進路選択を経験しているのであろうか。やや乾燥気味な大学生活を送る私は、専門学校で開催される学園祭のカラフルなポスターを前に首を傾げていた。
      そういう経緯があって、今回執筆した論文は、私の人生に対する暫定的な答え合わせだと考えている。先行研究では、就職率が低い「文化・教養」分野の専門学校は、ちょうど看過されている領域であった。そのうちデザイン系専門学校生4名にインタビュー調査を実施し、彼らの高校在学時における進路選択過程の解明を試みた。たくさんの人に読んでいただき、フィードバックをいただけるとこの上なく嬉しい。
  • 事務局から
    • 本年度の応募総数は10本と、昨年に引き続き多くはありませんでしたが、テーマも、手法も、多岐にわたるものが寄せられました。
      先行文献をふまえて問いの焦点を絞り、それにふさわしい手法を選んでいることを前提条件として、新たな知見を提示できていたものが高い評価を受けました。
      優秀賞を受賞した山中さんの論文は、「大矢田ひんここ」という民俗行事の由来について、これまでの言説を覆す知見を得たものでした。1年間にわたるフィールドワークと文献調査があってこその成果であり、地道な努力と、それをまとめ上げた筆の力が際立ちました。 佳作を受賞した西山さんの論文と各務さんの論文は、いずれも、先行文献調査をふまえて調査すべきことがらを絞り込めていたこと、聞き取りから新たな知見を見出だしたことが評価されました。西山さんが学外に4名ものインタビュー対象者を求め、各務さんが身近な話題を学問上の問いへと巧みに転換させたという、それぞれの努力が基礎となっていることを指摘しておきたいと思います。
      表彰式では、受賞者3名から、応募のきっかけや論文提出までの日々の様子について、お話を伺うことができました。審査にあたった先生方も、事務局も、このコンテストの意義を再確認させていただく機会となりました。
      皆さんの努力が今後の糧になることを期待して、次年度も学生論文コンテストを開催します。どうぞ奮ってご応募ください。附属図書館のライティング関連図書コーナー(2階)や各種学習ガイドもご活用いただけます。
  • 優秀賞
    • 「周囲の友人に着目した着席位置と学習意欲の関係性」
      経済学部
      安藤 蒼亮
      この度はこのような賞を頂きありがとうございます。
      論文を書くということは大学1年生の私にとって中々難しいことではありましたが、基礎セミナーの先生やTA、同じ受講生のアドバイスによって、よりよい論文を作成することができました。
      今回の論文作成にあたって、アンケート用紙を使った量的調査の方法を学び、実際に学生にアンケートを取り、結果を分析しました。ここで身につけたスキルは、今後の学部研究への取り組みに活かされると思います。
      「全脳シミュレーションは可能か」
      理学部
      中野 覚矢
      この度は優秀賞を頂き、大変光栄に思うとともに、自分が書いた文章を評価していただけたことを大変嬉しく思います。
      今回とりあげたテーマである「全脳シミュレーション」は私が高校生の頃に耳にし、興味を持っていた内容でした。このような形で深く調査し、文章にする機会を与えてくださったことに厚くお礼申し上げます。
      しかし、提出した論文は様々な面で悔いが残されるものとなってしまい、限られた時間と文字数の中で万人に分かりやすい文章を書くことの難しさ・そして自分の文章力の低さを痛感いたしました。今後も、論理的思考力や文章構成能力を養うため、より一層の努力と研鑽を重ねて参ります。
  • 事務局から
    • 本年度の応募総数は9本と多くはありませんでしたが、身近な現象や時事問題に着目し、先行文献をふまえて興味深いテーマ設定につなげた論文が多くありました。また、手法としては量的ないし質的調査を企画実施したものが多くを占めました。審査の結果、量的調査手法を用いた安藤さん、調査ではなく論証を展開した中野さんの2名が優秀賞に選ばれました。
      安藤さんの論文は、読者の共感をよぶ着眼をもとに、先行研究をふまえて問いに発展させたこと、適切な質問紙調査を企画実施し、新たな知見を見出したことが評価されました。
      中野さんの論文は、応募論文において唯一、英文を含めた多様な文献を引き、論証を試みるものでした。専門外の読者にも理解しやすい構成や、数値の見積もりを適切に挿入していることなど、総説論文としての質が評価されました。
      今年度の大きな特徴として、質的調査(インタビュー調査)に挑んだ論文が複数見られました。考察の深さを追求するのは難しいものですが、聞き取った内容を再構成して新たな知見を導くことができていた論文もありました。学部1、2年生が実施する調査ということで対象選定に限界はあったかと思いますが、「なぜこの人を対象にするのか」を論理的に説明できていれば、3つめの優秀賞もあり得たのではないかと思います。
      残念だったこととしては、応募論文数が過去最低となった点が挙げられます。次年度も学生論文コンテストを開催しますので、たくさんの力作を期待しています。附属図書館のライティング関連図書コーナー(2階)や各種学習ガイドもご活用ください。
  • 最優秀賞
    • 「日本におけるオオカミ(Canis lupus)野生復活の可能性」
      農学部 生物環境科
      鈴木 華実
      この度はこのような賞をいただき、有難うございます。大学生になり、初めて書いた論文がこの様な結果となったことを嬉しく思います。
      この学生論文コンテストは昨年度に知り、今回と同じテーマでの執筆を試みましたが、材料不足であったり、論文そのものの書き方が分からなかったりなどの理由から諦めてしまっていました。2 年生になり時間に余裕ができたことで様々な論文や文献、関連書籍を読む時間が取れ、自身の中で論文がどのようなものであるかが大まかにでも掴むことができたことが今年度の執筆に繋がりました。
      この論文の主題である日本におけるオオカミの野生復活は、自分自身が大学入学以前から気になっていた問題です。広く知られているテーマでは無いものの、オオカミという動物自体の生態を含めよく知られていないからこそ、問いかけると大きく賛否の分かれる問題です。だからこそ書くにあたってはより多くの、国内外の、信頼のおける具体例や根拠を丁寧に示すことが重要だと思い、資料収集には注意を払いました。このテーマを論文という形でまとめることで、これまで自身が得た情報や考えていたことの整理をすることができたことも良かったと思っています。
      このテーマに関してこれから自身が何をできるかまだ分かりませんが、今回論文を書いた経験はこの先の自身の卒業論文やその先にも繋がっていくと思います。これからも多くの論文や文献を読むことで先行研究を知り情報を蓄えると共に、常に様々なことにアンテナを伸ばし、関心の持ったことや疑問に感じたことについて自分の考えをまとめていくことが大切だと考えています。
  • 優秀賞
    • 「LGBTs支援は企業にどのような影響を及ぼすか」
      経済学部
      安藤 静花
      私は以前から人権問題について興味を持っており、特に大学入学後は、様々な人が長年にわたって人権問題に熱心に取り組みを行っていることを知りました。しかし一方で、日本社会の中には人権擁護の空気があまりなく、人権問題に取り組む人のことをよく思わない空気が多くあるように感じています。私は、そういった日本の空気は「人権問題に取り組むと経済的に不利益を被る」「人権に配慮していると非効率的になり経営に悪影響を及ぼす」と考える経営者が多いことが根底にあるのではないか、と考えました。そこで私は、いま日本のみならず国際的にも注目されている人権問題であるLGBTsと企業との関係性に注目して調査を行い、論文としてまとめることにしました。
      論文の書き方が全く分からない状態からのスタートで手探り状態の連続ではありましたが、論文を無事に書き終えることができ、また、このように高く評価していただきとても嬉しく思います。お正月返上で書いていたので初詣には行けなくなってしましたが、自分が納得いくまで取り組めたことでとても良い経験になったと感じています。
      このコンテストを通して、論文の書き方が学べたと同時に、今後もっと学びたいと思える分野について深く考えるきっかけを得ることができました。これらの経験を今後の大学生活での学びに活かしていきたいと思います。
      「SNSといじめ~現代のネットいじめとは~」
      法学部
      石川 武利
      本日はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。コンテストに応募することどころか、論文を書くこと自体私にとって初めての経験でした。アンケート調査や資料集めなど、苦労した点も多く、その分嬉しさもひとしおです。
      また、SNSという、我々学生にとって身近なトピックについて、このコンテストを通して、改めて見直すことができたのもいい経験になったと思います。
      「若者言葉から見る若者の特徴-名古屋大学生への調査を通じて-」
      文学部 人文学科
      楠元 莉加
      この度はこのような賞に選んでいただき大変うれしく思います。ありがとうございます。
      基礎セミナーの授業を通じて、論文の組み立て方を学び、丁寧な助言をいただきながら完成させることができました。この論文を書くにあたって一番力を入れたのはアンケート調査です。初めてアンケート調査を行い、結果をまとめ、集計をしたりと大変なことも多かったのですが、今後の自分の研究などに大いに役立つ経験ができました。
      「若者言葉」というテーマは自分や自分の周りの人にとって身近な題材でした。しかし、アンケート結果からは思いのほか様々な事柄を得ることができ、自らの視野を広げる良いきっかけともなりました。
      今後も多様な視点から物事を考察し、このような経験を学生生活に活かしていきたいと思います。
  • 事務局から
    • 2016年度の応募論文は全体として質が高く、それだけに選考に苦労したという事実をまずお伝えいたします。最優秀論文が選出されたことからも、質の高さがうかがい知れるかと思います。最終的に、応募16名の中から1名に最優秀賞、3名に優秀賞が贈られることになりました。
      複数の受賞論文はいずれも、問いの明確さと論理構成が評価されました。
      とくに最優秀論文については、論証型の論文において必要な要素のそれぞれについて高いレベルの評価を受けました。論題のわかりやすさ、課題の設定、論文構成と文章における論理性、国内外の幅広い文献の渉猟と適切な引用、筆者自身の明確な主張とその妥当性に関する反対意見も含めた検討などです。論理性の高い文章ながら、その行間にニホンオオカミ(=テーマ)に対する「愛を感じる」と評した審査委員もいました。
      優秀論文としては、先行研究の課題を自分なりに整理したうえで、その課題に即して自分で調査を設計し実施した実証型論文が3件選ばれました。本コンテストでは、学部生が独自に行う調査である以上、母集団の選び方や数に一定の限界があることは仕方のないことと捉えています。その中で少しでも質の良いデータを取得しようとした努力や、その成果を分析して議論を深めていたことが評価されました。優秀論文の中には、学術的にもオリジナリティのある考察が示されていたものもありました。
      次年度も学生論文コンテストの開催を継続します。たくさんの応募をおまちしております。
  • 佳作
    • 「なぜセンター試験は廃止されるのか 大学入試改革について」
      経済学部
      牧野 恵美
      このたびは貴重な賞に選ばれたことに非常に驚くとともに大変うれしく思います。ありがとうございます。
      基礎セミナーの授業で論文を書くことになり、初めは右も左もわからない状態でした。ですが、授業の中で先生が論文作成のヒントを熱心にご指導くださり、書き終えることができました。また同じ基礎セミナーの受講生と意見を交換し合うことで自分の視野を広げることもできました。
      今回の論文作成で1番重要視したのは、文献をより多く読むことです。そうすることで自分の知識はさらに深まり、また様々な考え方があるということを学ぶことができました。  センター試験を論文のテーマにしたのは、私自身が必死に勉強し、受験したセンター試験が廃止されるということで以前から強く興味を抱いていたからです。センター試験が廃止されることについての自分なりの意見は以前から持っていましたが、実際に論文を書いてみることで、より考えが深まったように思います。
      わたしが思うに論文というのは、ふと抱いた疑問に着目し、視点を広げつつ帰結としてまとめていくものです。答えのない問いをたて先行研究を学びながらも自分自身で物事を考える、というスキルはなかなか身につくものではなくとても勉強になりました。
      今ではこのように、論文を書く経験は自分にとってとても価値のある経験になったと感じています。自分で取り組んでみることによって得られるものは大きく自らの成長を実感しました。また充実した大学生活、そして大学生活のスパイスになったと感じています。この先も様々なことに関心を持ち、自分のスキルアップにつなげていきたいと思っています。
  • 優秀賞
    • 「私の日本政治再生プロジェクト 不安定雇用に見る日本政治の行方」
      法学部
      井ノ尾 徳哉
      まず、雇用を論文のテーマに選んだ理由は2つあります。第1に、私自身が、将来就職することもあり、元々雇用分野に強い関心をもっていたからです。第2に、医療や年金、雇用などに関するサービスを提供する国家である福祉国家を法学部の講義で学んだ際、強い興味を持ち、その一分野である雇用分野を研究することは、今後福祉国家全般の研究をする際の一里塚になると考えたからです。
      次に、論文完成までのプロセスですが、最初は、批評等を読みながら論文を作成しました。その後、ゼミで他の学生や先生方からコメントをもらい、推敲・修正をしたうえで、最終提出をしました。コメントを頂く過程で、先生からは「専門書を読み、学術的な議論を踏まえるべきである」という旨のアドバイスを頂きました。また、先輩方からは「扱うテーマが広すぎて、なかなか焦点が合っていない」という指摘を受け、研究における個別事例と抽象論の往復の仕方について指導して頂きました。そして、先生や先輩方から頂いた上述のような指摘は、私の研究の質を高める上で、非常に参考になるものであり、今回論文の形にできたのも、悪戦苦闘する私に助言下さった皆さんの御陰と言っても過言ではないと思います。
      ただし、この論文には、まだまだ課題もあります。雇用情勢・雇用政策は日々、変わっているので、今後も動向を注視しながら、自分なりに問題関心を深めていきたいと思います。
      最後になりましたが、今回は貴重な賞を頂き、誠に有難うございました。
      「音響・調音音声学でのフォルマントによる多言語の母音比較分析」
      理学部
      森 崇人
      このたびこのような賞をいただき、嬉しく思います。このコンテストへの応募は、もちろん今回が初めてですが、高校2年生の頃にこのコンテストの存在は知り、応募してみたいと思っていたので、今回の受賞はなかなか感慨深いものがあります。ありがとうございます。
      このように論文を書いて、それをレポジトリに載せてもらえるというので、より多くの人に読んでもらえたらよいと思っています。僕のほうでもSNSなどでシェアしようと思います。
      Webサイトで過去の受賞者をみていると、医学部とか文系学部が多く、理系の学部の学生があまりいないと感じていました。その中で理学部の僕が一つ論文をここに出すことができたので、これを見て周りのみんなを刺激して巻き込むことができたらよいと思っています。
      論文を書く過程で、一番大変だったのは、バックグラウンドの調査でした。学部1年生の段階では、授業では学習していないことが多くあり、前提知識をしっかり勉強しなければいけませんでした。しかしそれを全部は書けないので、なかなか目に見えない苦労が大きかったです。
      この論文を書いて、私自身勉強になりました。また挑戦できたらと思っております。ありがとうございました。
  • 優秀賞
    • 「なぜ若者は「ヒトカラ」に行くのか」
      法学部
      石川 純
      僕の論文はヒトカラついてなんですけど、自分でもヒトカラに行くことがあって、それで自分の身の周りの疑問や興味から論文を書くことをスタートできました。論文としては、自分でデータを出して、自分の疑問を解決するための論文だったので、その論文が受賞できたことはうれしかったです。
      「島崎藤村「初恋」をめぐって―背景・表現・解釈―」
      文学部
      河合 さやか
      今回このコンテストに参加して感じたのは、論文を書くということには、高校時代の勉強とは全く違う大学ならではの「学問」が詰まっているということです。自分で問いをたてるということ。文学作品の解釈という正解のない問題に向き合うということ。先行研究から過去の研究者たちの足跡をたどるということ。自分が発見したと思っていたことが実は既に語られていた、という状況にがっかりしたりもしましたが、そういったことも含め研究の場って本当に奥が深いなと思いました。この論文は基礎セミナーでの発表をもとに書いたものです。的確な助言と深い知識・広い視点をくださった先生方、先輩、友人たちに感謝いたします。
  • 優秀賞・附属図書館長賞
    • 「大学生が考える女子力とは?―男女間の認識の相違―」
      法学部
      柘植 結月
      私がこの論文を書こうと思ったのは、最近自分の周りやメディアでも「女子力」ということばがよく使われているなかで、「女子力」って何なのかなという純粋な疑問を抱いたからです。この論文を書いたのは私だけれども、この論文を書くにあたっては基礎セミナーの先生や同じ受講生のみなさんが、こうしたらいいんじゃないかなとか建設的なアドバイスをしてくださったり、いろんな学生さんにアンケートをお願いして協力していただいたりして、たくさんの方の協力を得て、書くことができた論文だったので、それが受賞できたのはとてもうれしかったです。自分の納得いく論文を書けてよかったと思います。
  • 優秀賞・名大生協理事長賞
    • 「教育の市場化は学びからの逃走を食い止めうるか」
      法学部
      藤本 広大
      僕がこの論文を書こうと思ったのは、高校の時の単純な疑問からです。僕は学期末に書かされる授業評価が嫌でした。生徒が先生の授業をどう評価すれば良いのか分からなかったからです。大学に入って、このような自分の興味関心で論文を書いてみたらこうした賞をいただけて、本当によかったと思います。
  • 優秀賞
  • 優秀賞・名古屋大学消費生活協同組合理事長賞
  • 事務局から
    • 2012年度は史上最多40名の応募があり、そのなかから上記の6名に優秀賞が贈られました。審査委員からは、例年に比べて格段に力作が多く、問いの設定や先行文献の読書量、論理構成などにおいて、全体的な水準が高くなっていることが評価されました。
      吉川千尋さんの論文は、調査対象者の年齢層と立場を大学生に絞り、独自のアンケートを行っています。その結果をふまえて、「ひとり」という概念にも積極的なものと消極的なものとがあることを見出し、「ひとり」の意識の変化と認識のあるべき形についてまとめています。対象者の人数も多く、努力のほどがうかがえるものとなっています。アンケート結果をもとに図を作成し、わかりやすい論文にするための工夫が随所に見られます。先行研究も多く参照しています。
      川浦翔太さんの論文は、設定した問題について、いくつかのフェーズに分けて現状を分析・考察し、分かりやすく説得力のある構成で論を展開しています。分析・考察を加えた各段階に、それぞれ冤罪を生む背景・原因がある、という独自性のある見解が高い評価を受けました。無駄の少ない文章で論述されているため、問題意識や主張がはっきりと伝わります。
      新藤さえさんの論文は、「ケア」とは何か、を自分なりによく考え、高い文章力で書かれていたので、筆者の思いがよく伝わってきました。多くの人がケアの大切さを知り、実践するにはどのように取り組んでいったらよいか、など具体的な提案や考えが示すところまで論を進めることができれば、研究の意義はさらに大きくなるでしょう。
      金山知弘さんの論文は、『トロイメライ』を起点に、和声の問題や音楽療法にまで論を展開し、ユニークで読み応えのある内容です。『トロイメライ』の和声について、楽譜を示しながら独自の考察を詳しく行っている点が高く評価できます。楽譜、文献など引用・参照元もしっかりと記されています。序論・結論・タイトルを効果的に使い、全体の論展開を明示する構成づくりに留意すると、さらによくなるでしょう。
      山田悠至さんの論文は、日清戦争の必然性を、西洋と東洋の「国際秩序観」の違いと衝突に求め、日清戦争への考察を通して「世界の多元性への視点」を提唱する論文でした。最も目を引く点は、先行研究の多さです。多くの文献に目を通し、そこから得た知識を一つの論文のなかに取り込んでおり、勉強の成果がうかがわれます。さらに研究対象や問題点をしぼり、取捨選択するとよいでしょう。
      土屋遼准さんの論文は、書籍再販制の歴史および問題点と解決策について、具体的かつ丁寧に論じています。海外の事例など、豊富な資料をもとに説得力のある論拠が提示されている点が評価されました。「現実に書店がつぶれるという状況がある」という訴えには説得力があります。再販制を見直す意義を強調して論を組み立て直すと、いっそう良くなるでしょう。
      今後も高等教育研究センター・教養教育院・附属図書館では、みなさんの学術論文執筆を支援するセミナー等を提供しつつ、本コンテストを継続していきたいと考えています。「論理的に書く力」は大学で身につけるべき最も重要なスキルの一つです。次回もみなさんの力作に出会えるのを楽しみにしています。
  • 優秀賞
  • 優秀賞(附属図書館長賞)
  • 事務局から
    • 2011年度は21名の応募があり、そのなかから上記の4名に優秀賞が贈られました。審査委員からは、例年に比べて力作が多く、なかなか甲乙つけがたいという総評がありました。
      田中健一さんの論文は主張が明確であり、表題のつけ方も読者の関心をひきつける点で優れていました。日本の医療に対する国民の満足度が低い理由を3点挙げ、これらを改善するために何をするべきかを論じています。一方で、対策の限界についても指摘しています。全体として議論の進め方が慎重で、バランスのとれたものになっています。なぜこの3点を導出したのかについての理由を提示できればさらに優れた論文となりうるでしょう。
      朴鎮洙さんの論文は、職場内の共同体意識を高めることによって、ハラスメントの克服や改善を訴える内容となっています。論文としての形式、参考文献などがきちんと用意されており、資料を読み込んで理解を深めていることは高く評価できます。どのようにしたら共同体意識を育むことができるかをさまざまな角度から論じることができれば、より魅力的な論文になるでしょう。
      山田悠至さんの論文は、画家松井冬子の作品を素材として、一種の情念論を展開しています。文献リストが非常に充実しており、著者が熱心に思索していることがうかがえます。美術評論というジャンルに意欲的にチャレンジしたことも異色であり、一定の評価ができます。ただし、松井冬子自身の解説と筆者の意見が混在しているので、読者には判別しづらく、この点の改善が望まれます。議論をもう少しわかりやすい表現に言い換えて読者に伝える工夫をすれば、さらによくなるでしょう。
      高井崇佑さんの論文は、日本にしかファンのいないJ-POPという音楽ジャンルについて、頻繁に使われる「逢いたい」という言葉の分析を通して、若者の恋愛心理に迫っています。本論文の優れているところは、ポップカルチャー論の素材としてJ-POPの歌詞に注目したユニークさにあります。ただし、サンプリングの根拠が不明なので、提示した問題に断片的な回答しか得られていないという不十分さが残りました。サンプリング上の工夫や、外国のポップスとの比較の視点などを取り入れれば、さらに充実した論文になるでしょう。
      本コンテストでは、昨年度から論文の内容領域と分量を問わない募集形式としました。その影響かどうかわかりませんが、さまざまなテーマについてユニークな問いや仮説を立てて、その論証に果敢にチャレンジする論文が増えたことは喜ばしいことです。また、先行研究をていねいに読み込んだ論文が多かったことも評価できます。論文の出来は、自分が立てた問いをどのようにして論証し、読み手をいかに合理的に説得するかによります。こうした観点から、学部生のみなさんがクリティカル・シンキングやロジカル・シンキングのスキルを高めることを期待します。
      今後も高等教育研究センター・教養教育院・附属図書館では、みなさんの学術論文執筆を支援するセミナー等を提供しつつ、本コンテストを継続していきたいと考えています。次回もみなさんの力作に出会えるのを楽しみにしています。
  • 優秀賞
  • 優秀賞(附属図書館長賞)
  • 事務局から
    • 本年度は16名の応募があり、そのなかから上記の2名に優秀賞が贈られました。
      山田悠至さんの論文は、完成度の高さが評価されました。とくに、数多くの先行論文を丁寧に読みこなしていることと論を組み立てる力量や文章力は群を抜いていました。いっぽう、結論の突き抜けるようなオリジナリティの点では今後の発展が期待されます。
      田中駿さんの論文は、誕生月の影響測定をスポーツ界にもとめた着眼のユニークさが受賞の決め手となりました。だれもがWebサイト上で見ることのできる資料をもとに丁寧に分類集計し、オリジナルなデータを作成した点も高く評価されました。学年暦の異なる米国のデータと比較するなどデータの説得力を高める工夫がなされると、さらに論文の質が上がるものと思われます。
      本年度のコンテストは論文の内容領域を問わない募集形式としました。昨年度までは現代の社会問題をテーマとしていましたが、より多くの分野の学生が応募できるようにとの配慮からです。それにも関わらず、応募論文全般にテーマが型にはまっている印象があったことはやや残念でした。また、問いが大きすぎたり粗すぎたりするものが目立ったようにも感じられました。関心のあるテーマから問いを絞り込み明快に論旨をつくるという基本に立ち返り、さらに鋭い視点や切り口を見つけていただけたらと思っています。
      皆さんの学術論文執筆を支援するセミナー等を積み重ねつつ、次年度も本コンテストを継続していきたいと考えています。力作に出会えるのを楽しみにしています。
2010  
  • 優秀賞(附属図書館長賞)
  • 優秀賞(三省堂名古屋テルミナ店賞)
  • 事務局から
    • 本年度は16本の応募があり、そのなかから上記2名に優秀賞が贈られました。 受賞の決め手となったのは、問いを明確に設定し、その問いに応じた答えを導いていることと、 学術論文の形式に則っていることでした。論文の基本をしっかり踏まえていることが評価されたのです。
      これまで複数名の受賞者を選考してきた本コンテストにおいて、 受賞者全員が1年生となったのは開催3年目にして初のことです。 学年があがるとともに、より難しい問い、大きい問いに挑もうとするあまり、 問いに対する答えに到達できないままに終わってしまう論文が見られたのは惜しまれることでした。 応募要項には「文献を十分に活用して」という条件があるなか、 数多くの文献に触れつつも「活用」までには至らなかった感の残る論文もありました。 また、自ら実施した質問紙調査などを用いて検証を試みた意欲的な論文もありましたが、 先行研究のなかに位置づけて論ずることがなく調査報告の様態から抜け出せなかったり、 問いを解明するためには調査設計が不十分だったりと、学術論文として最後まで詰めきれなかったものが見受けられました。 応募論文全般に意欲の高さには目を見張るものがあり、それに見合う執筆技量を磨いていくことが今後の課題といえそうです。
      皆さんの学術論文執筆を支援するセミナー等を積み重ねつつ、 本コンテストを継続していきたいと考えています。次年度も力作の応募をお待ちしています。
2009  
  • 優秀賞
  • 優秀賞(附属図書館長賞)
  • 優秀賞(三省堂名古屋テルミナ店賞)
  • 事務局から
    • 第2回となる今年度は応募数こそ増えませんでしたが、前回に比べて全体に論文の質が向上していたことは、関係者一同にとって喜ばしいことでした。理系学部生からの応募の増加や、アンケート調査の信頼性担保といった課題をふまえ、今後の開催方法や「論文書き方講座」の内容をさらに検討していきたいと考えています。来年度も意欲ある作品が寄せられることを楽しみにしています。
      本年度のコンテストには計15本の応募があり、厳正な審査により上記の3本が入選となりました。以下に、審査に加わった教員のコメントをご紹介します。
      奥田ゆかりさんの論文は、身の回りに題材を求め、独自のアンケート調査によりオリジナリティのある答えを導いていることが高く評価されました。いきおい先行文献の数が少なめとなり、結論の説得力を強めきれなかった部分もありましたが、アンケート調査において、分析に耐えうる最低限のサンプル数を確保した努力に注目が集まりました。
      王昊凡さんの論文は、大きなテーマに真っ向から取り組んでいること、多くの先行文献を踏まえておりレビューとして水準が高いことが評価されました。結論のオリジナリティを表現しきれていないようにも見受けられましたが、全編を通じて、力みのない、すっきりした文体で伝えたいことがらを表現している点に好感が持たれました。
      山田悠至さんの論文は、濃密さ・緻密さと読者をひきこむ勢いとを兼ね備えた文章であることに称賛が贈られました。最後に登場する独自モデルの妥当性の主張にもうひとつの緻密さがあればさらに格調高い論文になったのでは、と惜しむ声があったほどです。さらに、先行文献を十分に踏まえたうえで独自のモデルを提案することによって論を進め、将来展望を提示しようとした姿勢が高く評価されました。
  • 優秀賞
  • 事務局から
    • 2007年度名古屋大学学生論文コンテストには、1年生から4年生まで延べ14本の応募がありました。学内教員による厳正な審査の結果、最優秀賞は該当がありませんでしたが、優秀賞に上記2本が選ばれました。
      石井信伍さんの論文は、日常的に抱いている問題意識が十分に伝わってくること、多様な先行研究を総動員して書いている姿勢が高く評価されました。田中香里さんの論文は、分析枠組みがユニークであること、論文の展開にストーリー性があること、調査の結果から新しい発見が得られたことなどが評価されました。
      応募作品全体に関する講評としては、身近で切実な社会問題を扱っていること、単なるエッセイや感想文ではなく「論文」を書こうとする意欲が伝わってきたこと、一定の調査に基づいて結論を導き出そうとする姿勢が窺えることなどが挙げられました。反面、先行文献の読み込みが不足している論文が多かったこと、調査方法が不十分であること、理系学生からの応募が少なかったことなどが今後の検討課題として残りました。
      この学生論文コンテストは2008年度も実施予定です。詳細はあらためてウェブやポスター・チラシ等でご案内します。数多くの応募をお待ちしています。
      (文責:近田政博)
問い合せ先
名古屋大学高等教育研究センター
052-789-5696
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